帰り道のあとと彼
そんなこんなで俺は家路に着いた。
梅田は最後まで挙動不審だったが、俺を家の前まで見送ると、「また明日」とだけ告げて、帰って行った。
まあ、やっぱりイケメンはイケメンで、途中ちょっと変だったけど、爽やかであることには間違いなかったな。ちょっと変だったけど…
風呂に入って、何の気なしにスマホを見れば、新着メッセージの通知を知らせていた。誰だ、こんな時間に。
そこには俺の親友、隼人様からのメッセージがしたためられていた。
『あいつとはどうなった』
なんだこれ。
俺はメッセージを見るなり、眉をひそめた。
メッセージが既読になったことをいいことに、隼人は連投してくる。
『なあ、あいつまさか柊に手出してないよね』
あいつって誰だよ。
まあ、おそらくは梅田のことだろうが。
というかこいつ打つの速すぎだろう。
とりあえず返事を打たないとこわい気がしたので、メッセージは打つだけ打っておく。
「あいつって誰だよ、と…」
至極普通の返しをしてみる。てか、隼人は俺が梅田と帰ることになったということはすでに知っているのだろうか?だとしたらこいつの情報網流石すぎると感心せざるをえない。まあ…ぶっちゃけいつものことなんだけど。
『梅田真』
うわ、固有名詞だけで帰ってきた。
名前を打つのすら嫌、というような主張さえ感じることに、なんだか寒気すら覚える。
てか…やっぱ俺が梅田と下校したこと知ってるんだな。隼人さすがすぎます。
「ていうか、さっきの手出すとかどういうこと。喧嘩はしてないぞ、と…」
確かに一緒に下校だなんていう間柄ではないけれど、隼人が心配しているような険悪な関係ではない。隼人と梅田の関係性は知ったこっちゃないのだが。
『もう、柊は天然なんだから。でもそこがカワイイ』
「はぁ?」
隼人から来たメッセージに思わずスマホに向かって突っ込みを入れてしまった。天然でカワイイ…?何言ってんだこいつは…俺のどこにそんな要素があるというのだ。たまに隼人はよくわからない。
「意味がわからん、と…」
とりあえずお前の勘違いだ、という主張を込めてメッセージを送信する。目を覚ませ、隼人。
『その様子だと何にもなかったみたいで安心した。じゃね、おやすみ』
隼人は自分は納得したらしく、さっさと会話を切り上げてしまった。
俺も一応「おやすみ」と返すあたり、律儀じゃないかなと思う。
隼人が何を気にしていたのか、微妙に腑に落ちなかったが、今日はいろいろと神経を遣ったので、どっと疲れてしまった。
俺はベッドに吸い込まれるように倒れ込むと、そのまま眠ってしまったのだった。