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第六話:近未来のオモチャの宝箱、そのに

「作るって言っても…、店長、作れるんですか?オモチャの宝箱」


琴音が不安そうな顔をして聞いてくる。


「作れない、つーか俺は今までオモチャの宝箱の事事態知らなかったんだぞ」


「…ダメじゃないですか」


ガクリと肩を落とす琴音だったが諦めるのはまだ早い。


「俺に良い考えがある、まぁ見とけ」


そう言って俺は適当なオモチャの箱を見繕うと机の上に置いた。


「これに…」


紙を張り付けて…と。


「こう書いておけば…、いいんだよ」


キュポッとマジックのキャップを取るとキュキュッと紙に字を書いていく。


「まさか…それにオモチャの宝箱って書くつもりですか?」


琴音がジトーッとした目で俺を見てくるがなめて貰っては困る。


「まさか」


俺がそんなバレバレな偽装工作をする訳が無いだろ。


よし…と、書き終わり、キャップをマジックに戻す。


【大人のオモチャの宝箱※二十歳未満の開封厳禁】


「これで問題は解決だな」


一仕事終えたぜ…と汗を拭く。


「いやいや店長!問題しかありませんよ!!」


即効で琴音が食らい付いて来た。


「大人のオモチャって…、宝箱って、無いです!無い無い、酷すぎます!!」


「はぁ?これであのお嬢さんは二十歳までこの箱を開けない、んで二十歳になる頃にはこんな箱の事なんて忘れてるだろうし、完璧だろ」


「…え?」


「あん?」


「………」


「………」


何故か顔を真っ赤にしてうつ向いて黙り混む琴音と状況がよくわからん俺。


「…あぁ、琴音の考えた大人のオモチャってそういうーーー」


「なな!何も考えてませんからね!店長の考えているいやらしい事は何一つ考えませんから!!」


「わかった、わかったからそこまで力説するな」


琴音の奴…、どうにも耳年増な傾向があるよな。


「私が言いたかったのは翠ちゃんが二十歳までこの箱の事を覚えてたり、我慢出来なくてこの箱を開けてしまった場合です!!」


ふてくされ気味に話しを強引に元に戻してくる。


「きっと凄く怒りますよ」


「あの様子じゃ銀の女神5枚集めるのに相当の量のチョコ玉を食べたみたいだしなぁ…」


つーかそんなに欲しいのか?オモチャの宝箱。


「そうだ琴音、お前ならわかるだろ?オモチャの宝箱の中身、そいつをそのまま再現しよう」


「それが…、残念ですけど、私も当たった事無いんですよ、オモチャの宝箱」


「マジか…」


頼みの綱のレトロマニアな琴音でもその中身を知らないとは…、これは困った。


「オモチャの宝箱って言うくらいだし、最新ゲーム機の詰め合わせか?そんなの揃える金なんて無いぞ」


「…あ!!」


「何か思い出したのか?」


琴音が急に声をあげたので期待して聞いてみる。


「そういえばですけど…小学校の時のクラスメイトがオモチャの宝箱が当たったって自慢してたのを思い出しました」


「おっ!じゃあ中身がどんなのだったかわかったんだな」


「いえ…それがその向井君、あっ…クラスメイトの名前なんですけどーーー」


琴音の話しはこうだ。


チョコ玉でオモチャの宝箱が当たった向井君はクラス中に大々的に自慢をし、注目を浴びた。


当時からその中身について謎だったオモチャの宝箱を手に入れた向井君はクラスメイトからヒーロー扱い。


「スゲーよ向井!3組の吉田だってまだ手に入れて無いって話しなのに」


「なぁなぁ、明日学校に持ってきてくれよ?」


「あぁ!いいぜ!!今日家に帰る頃には届いてるだろうし明日持ってきてやるよ」


「さすがだ向井…、いや、チョコ玉向井!!」


「チョコ玉向井!!」


「チョコ玉向井!!」


そのヒーローっぷりはチョコ玉向井と称号が与えられるレベルだった。


しかし次の日…。


「おはよう…」


学校に来た向井君のテンションはメチャクチャ低かったらしい。


「おはようチョコ玉向井、オモチャの宝箱持って来たんだろ?見せてくれよ」


「お、おう…、また今度な」


どういう訳かチョコ玉向井君はオモチャの宝箱を持って来なかったようだ。


次の日も…、その次の日もチョコ玉向井君はオモチャの宝箱を持って来なかった。


「おい!向井の奴、じつはオモチャの宝箱なんて当たってなかったんじゃねーのか?」


待てども待てどもオモチャの宝箱を持ってくる気配の無い向井にクラスメイトは痺れを切らし、彼を嘘つき呼ばわりした…。


「って…話しがありました」


「おい…長々と話してた割に結局肝心の中身については何一つわからないじゃないか」


「でもほら…、向井君の反応的にそこまで高価な物とか入ってなかったんじゃないでしょうか?」


「いや…、嘘だったんじゃねーの?他人の持って無いもんを自慢したいとかガキの頃ならよくあるだろ」


小学校のクラスなんて目立ったもん勝ちみたいな所があるし。


「ん~…、でも本当に嘘だったら学校に持ってくるなんて言いますかね?」


「単に引っ込みがつかなくなったんじゃないのか?」


「う~ん…、そうなんですかね」


いまだ納得していないのか、う~んと唸る琴音。


「つーか待て…、普通にスルーしそうになったけどお前、昔の事思い出したのか?」


「…はい?」


いや、はい?じゃなくて、何そのキョトンとした顔。


「記憶喪失が直ったのか?小学校の事の記憶が戻ったんだろ?」


「えっ!あー!その…、なんか断片的に思い浮かんだと言いますか」


あたふたと挙動不審になる琴音、断片的…とか言ってる割にやけに鮮明に思い出してた気がしたが。


「まぁ…、思い出した所で手がかりは0か…」


結局向井とかいう奴はオモチャの宝箱を持って来なかったわけだし。


…つーか、なんで俺達が必死になってオモチャの宝箱を作らなにゃらんのだ?


「そもそも…だ」


冷静に考えると…、今回の件、俺達に責任は無いはずだ。


俺達はただ単に仕入れたチョコ玉を売ってただけで女神様を集めてオモチャの宝箱が当たる…というもうすでに終了したキャンペーンを続けていたのはチョコ玉を作った工場側だ。


ならば本来責任を取らなければならないのは工場側であり、俺達は無罪放免のはず。


そう考えたらだんだんと腹がたってきたぞ。


「琴音、悪いがちょっと出掛けてくる」


「えっ?どうしたんですか急に」


困惑している琴音に俺は自身の考えた結論を伝えた。


「てな訳で一度そいつの工場に言って一言文句でも言ってやらんと割にあわん」


「そういえば…、お店の商品って店長の知り合いの人が作ってるんですよね?」


「あぁ、うちの店の商品は全部そうだな」


「へ~、全部…、えっ!?全部ですか?」


何故か琴音がびっくりしている。


「…なんだ?」


「あの…、このお菓子もそっちのお菓子もメーカーさんが違いますけど?」


「いや、だからどうした?」


「こっちの爆竹とかプラモデルとかも…?」


「全部そいつの工場で作ってるけど」


「???、なんの工場なんですか?店長の知り合いの人の工場」


訳がわからない…と言いたげに琴音が首を傾げる。


「なんのって…、何言ってんの、お前」


「いや、だって…、メーカーさんがバラバラのお菓子も玩具も全部同じ所で作ってるなんて…」


「製造権は持ってたはずだし…、なんの問題も無いだろ」


「…せいぞーけん?」


おいおい…、この娘、製造権も知らないのかよ。


「良い機会だし、社会見学も兼ねて一緒に来るか?」


「良いんですか!?」


「お前もちっとは常識ってもんを知る必要がありそうだしな」


「あはは…」


いや、笑い事じゃないからな、これ。


「よし…、行くならさっさと支度しとけ、あぁ…そういえばまだ質問に答えてなかったな」


「…はい?」


「何の工場って話し、えーと…確か、今メインで作ってんのは…、美少女キャラのフィギュア、だったか」


「駄菓子作ってて玩具作ってて、メインはフィギュアって、ますますわかんなくなって来たんですが…」


よりいっそう混乱しだした琴音だがここで事細かに説明するより実際に見せた方が話しが早そうだ。


「駄菓子とか玩具の製造ラインは小さいけどな…、まぁ行けばわかる」




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