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番外編【近未来のさくら大根付け】

「名前っていってもなぁ…、そもそも状況わかってんの?」


『そうですよ、私は今日の大会に優勝しなければ売りに出されるのです、キューブの状態の時からその話しは聞いてます』


「そ、それでも…名前は大切じゃないですか!!」


まぁ…確かに、例え今日の大会限定であったとしても名前が無ければ不便というものだ。


「だから漬け物って言ってんじゃんか」


「ですから…、それは」


『漬け物…、良いじゃありますせんか』


え?マジ?気に入ったの、漬け物。


『今後私を呼ぶ時は何処に居ようと誰が居ようと漬け物と呼んで下さい、でなければ私は一切反応しないので』


…うん、流石にそれは恥ずかしいな、つーか遠回しに拒否してるだろ、こいつ。


しかし名前か…、犬や猫に名付けるのとは訳が違うからなぁ、大会で登録する事を考えるとセンスが取られるな。


「アルファさん…みたいな感じの名前、はこの格好だと変ですよね」


見た目も日本人形みたいなこの琴音プレゼンツの和風メイドロボに確かにその名前は似合わない。


「そもそも何で和風メイドなんだ?」


「嫌ですね店長、これは女中さんと言うものですよ、私なりに、お店の雰囲気にも合わせたつもりです!!」


自信満々にえっへんとする琴音、いや、女中だかなんだか知らんが、確かに店の雰囲気にはこの方が合っている気はする。


古臭い駄菓子屋に西洋のメイドさんとかミスマッチだしな。


『だとするとお店の雰囲気に合う名前が必要ですますね、この漬け物屋の』


「ちょっと待て、今とんでもない事さらりと言ったがうちは駄菓子屋だ、漬け物屋じゃない無いからな」


第一、今のご時世に漬け物だけでやっていけるものか、あ…、駄菓子屋もそうですよねー。


『はて…駄菓子屋、ですか、どうにもデータが薄いのですが駄菓子とは何でありますですか?』


「えっと…、駄菓子っていうのは、こういうのだよ」


指を頭につけて馬鹿っぽく考えているメイドロボに琴音が実際に駄菓子というものを見せてやる。


しかし漬け物屋とは…、ずっと漬け物石にしていたとはいえ、とんでもない勘違いをしているものだ。


『…これは、何というものでありますです?』


「さくら大根漬けっていう、漬け物の駄菓子です」


…ん?あれ、あれれ?


『…やっぱり漬け物屋じゃないですか?』


メイドロボがジトーとした目で俺達を見てくる。


「おい…、何故それをチョイスした?」


琴音が駄菓子として渡したそれはピンク色のインパクトある見た目をした丸い、大根の漬け物である。


「い、いえ…、たまたまそこにあったのでつい」


…そりゃそれが今日の昼飯のおかずの1つでしたからね、普通に漬け物として食ってたわ。


「つーか、よくよく冷静に考えたらこれは駄菓子なのか?ご飯のおかずだろ、なんなら酒に合うまでもある」


見た目まっピンクでインパクトこそあるが食べてみると酸っぱく、そして甘い、ご飯が欲しくなる、んで酒も欲しくなる。


『どう見ても漬け物…としか思えませんです』


「はい!何故ならそれは漬け物ですから!!」


あ、言い切りおった、はっきり漬け物って言いやがったよ、こいつ。


「ですがこれ、れっきとした駄菓子でもあるんですよね~、いわゆる、すもも次郎と同じく漬け物系駄菓子、というやつです」


「いや、というやつですとか言われても…、漬け物系駄菓子なんて言葉すら初耳なんだが」


何?駄菓子ってそこまでバリエーション豊かなの?子供達のおやつから今晩のおかずまで補えちゃうのか?


「酢やみりんで味付けした駄菓子なんて他にもいろいろありますよ、…確かにこのさくら大根付けは駄菓子の中でも異質なのは間違いありませんが、地域によっては全く売ってない所もありますし」


「でも駄菓子…なのか、食ってみた感じ、普通に漬け物を食ってるのと変わらん気はしたが」


「ふっふ~ん♪それもそのはずです、何故ならそのさくら大根付け、製造元が漬け物のメーカーですから」


何をそんなに得意気に語るかは知らんが、俺と横のメイドロボはお互いに顔を見合わせた。


「つまり、漬け物なんだよなぁ…」


『漬け物ですよね、アスター』


「違います!漬け物系駄菓子、です!!」


あ、そこは譲らないのね…。


ふむ…漬け物系駄菓子、さくら大根付け、ね。


俺はさくら大根付けのパッケージを手に取りながら横にいるメイドロボを見る。


残念ながら俺の中でこいつのイメージが固まってしまった、漬け物系メイドロボとして。


「さくら…だな」


ならばこれ、これがどう考えても一番しっくりくる。


「えっと…、さくらってもしかして」


「いや、こいつの名前、なんかスーって出てきた」


「…それ、どう考えてもさくら大根付けからつけてませんか?」


ジトーと呆れた顔をして俺を見る琴音だったが、俺はといえばもう、これがしっくり来すぎている。


「ま、まぁ名前の由来なんてこの際なんだっていいだろ、お前もそれでいいか?」


『了承しましたです、アスター、私の本体ネームをこれよりさくらに登録しましたです』


「う、うーん…、良かったの、かなぁ?」


今だ納得のいってない様子の琴音だが、決まってしまったものは仕方ない。


「よし、名前も決まった事だ、行くか…大会、Mー1Gに」


我が家に来たメイドロボ…、改め、さくら。


こいつの我が駄菓子屋残留は結局はこの大会によって決まるのだから。


しかし、駄菓子である漬け物がご飯のおかずの1品として普通に出ているって冷静に考えればうちの食生活って悲しくないか、マジで…。

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