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第28話:近未来のMー1G

「…へっ?」


俺は思わず自分の耳を疑ってそう聞き返してしまった。


「どうしましたか?あなたが言い出した事でしょう」


それを受けるのは西園寺コンツェルンの社長令嬢、西園寺 翠である。


「いや、まぁ…、そんなんだけど、なんかあっさりというか…、本当に良いのか?」


「構いませんよ、この店の人形、全て西園寺コンツェルンが買い取りましょう」


そう言うや西園寺は海燕さんとアルファに指示を飛ばし、店にあった蜂須賀のフィギュアはあっさりと全て売却となった。


事の発端は日和のデート事件にて蜂須賀に借りを作ってしまい、再び奴のフィギュアを大量に店に仕入れる羽目になってしまったのだ。


その処分をさて、どうしたものかと考えていると今日も今日とて店にやって来た西園寺にダメ元で聞いてみた所、なんとあっさりと全てのフィギュアの購入を決めてくれた。


…前回のはアルファの暴走事件があったのでまだわかる、しかし、これは一体どういう事だろうか?


「まさか…、お前、目覚めたのか」


「はぁ…?目覚めたとは、何に、ですか?」


「いや…、だから、その、人形遊びに?」


今ここに琴音が居たら間違いなく顔を真っ赤にさせて「人形遊び…」とか呟いてそうだ、変な妄想でもして。


「私、もうそんな人形で遊ぶような年では無いんですが」


たぶん、西園寺の言う人形遊びと俺の言う人形遊びでは言葉の意味が天と地ほどの差があるだろう、付け加えるならば琴音の想像してそうな人形遊びは更に宇宙くらいの差がありそうだ、本当にあの娘は…、まったく。


「人形で遊ぶのを子供だけとか思うなよ、いや、むしろ今じゃ大人の方が多いまでありそうだ」


「…なんだか前にも同じ事を言ってた気がしますが、別に遊ぶ為にこのフィギュアを買った訳じゃありませんので」


…ふむ?だったら今西園寺が、いや、前回のもそうだが、こいつは何のためにフィギュアを買ってるんだ?


「…と、言いますか、あなた、まだなんですか?」


ハテナとマークを浮かべるように首を捻って思案していると西園寺がますます訳のわからん事を言い出してきた。


「まだ?何がだ?」


訳のわからん事なので、そりゃ俺だってそう答えるしかない。


「…おかしいですね、渡した時期を考えるならもうとっくにーーー」


だが西園寺はそんな俺の答えが納得いっていないのか、腕を組んでぶつぶつと何事か呟いている。


まぁ…俺としてはフィギュアを買い取ってくれりゃなんでもいいか、店の売上が上がってラッキー、とそう考えていると。


「て、てて、店長!大変です!大変なんですよ!!」


と、店の奥から慌てた様子で琴音が飛び出してきた。


「そ、その、漬物の様子を、光がぴかぴかって、漬物が…」


慌てたまんまの琴音が口早しに喋るがこちらとしては何一つ理解できん。


「とりあえず落ち着け…、で、えっと…、漬物が何?光った?」


とりあえず先ほど琴音が話していた事を繋ぎ合わせてみると…、ふむ、さっぱりわからん。


「ち、違います!光ってたのは箱です、ほら、漬物石に使っていた翠ちゃんから貰った黒い箱のーーー」


「あ、馬鹿ッ!!」


「…え?」


と、そこでようやく琴音は西園寺が居ることに気付いたのか、ギギギ…と、ゆっくりと西園寺の方を向いた。


「す、翠ちゃん!?あ、あの…」


「…漬物石?」


西園寺は最初こそいまいちピンときていなかったのか、はて、と首を傾げて。


「漬物石、ですってぇぇえ!?」


そしてすぐに爆発した。




























ーーー


ーー



「はぁ?ロボットの核?」


「えぇ、そうですよ…」


琴音の言った通り、漬物石として使われていた西園寺から貰った黒いキューブはぴかぴかと眩しく光っていた。


そいつを店のテーブルに置いて、俺と琴音と西園寺が囲む、そんな中、西園寺が溜め息混じりに話しを始めた。


「このキューブには学習し、成長する人工知能が埋め込まれています、要するに…ロボットの赤ん坊と言いましょうか」


「はー…、これが、ですか」


琴音は信じられないのか感心してるのか、よくわからん声を上げる。


「このキューブはあなた達の普段の生活、行動、その全てを解析して学習する事で成長し、既存の物とは違う、オリジナルの知能を持ったロボットが出来上がる、…はず、だったんですが」


そこで西園寺が俺の事をジロッと見る、な、何?そんなに見つめて俺の事好きなの?絶対違う。


「まさかそれを…、漬物石代わりに使うなんて」


「いや、だってお前、何も説明してなかっただろ」


だが、俺にだって言い分がある、当然だ、事前にこのキューブが最終的にそんな物になるなら、流石に漬物石にはしない。


「あなた達の普段生活を見て学習する人工知能ですよ、それを事前に説明してしまっては意味が無いでしょう」


はー…とそしてまた深く溜め息、どうやら漬物石に使われていたのが完全に想定の範囲外だったようだ。


「色々な企業や名家にも同じ物を配って成長の違いをデータを取ってるんですよ、もちろん、あなた達と同じようにキューブの詳細は秘密で」


「はぁ…、しかしメンドクサイ事考えるよな、ロボットの性格なんてプログラムで決めれるのに」


ロボットに性格と言ってしまうのもアレだが、その行動や立ち振舞いなんてプログラムでそう決めれば良い話しだ。


それをわざわざ一から成長させていこうなんて、人間じゃあるまいし…。


人間は生まれてから生まれつきの性格なんてものは存在しないだろう、と、俺は考えている。


赤ん坊なんて、それこそ本当、真っ白なノートのような物だ、人の性格を決めるのはその後から今に至るまでの環境、生活で決まるはずだ。


…俺だってもう少しマシに子供時代を過ごしてたらもう少しマシな性格になってたかもしれない。


「何?人間でも作ろうっていうの?あんたら」


西園寺がこのキューブをロボットの赤ん坊と言っていた理由もそこにあるのかもしれない、俺は冗談混じりに笑いながら聞いてみる。


「………」


だが西園寺の方は驚いた様子でそんな俺を見ていたので、俺は何だか居心地が悪くなった。


「…何だよ?」


「いえ…」


西園寺は目線を俺から反らし、それきり何も言わなかった。


「て、事はこのキューブもこれからロボットになるんですか?」


琴音が話しを元に戻してくれる、空気を察したのか察してないのかわからんが、まぁ助かる。


「えぇ、これからこのキューブの核をボディに組み込む、そのつもり…でしたけど、漬物石代わりに使われてたんですよね」


ここでまた西園寺が深く溜め息をつく、いや、すいませんね、本当。


「正直、どんなロボットが出来上がるか、まったく想像出来ませんね」


「良かったじゃねーか、元々データ取るのが目的だったんだろ?ある意味貴重なデータだぞ、うん」


俺の言う事は間違ってはいないはずだ、西園寺はこのキューブを色んな奴に配っていたと言ってたが流石に漬物石代わりに使っていたのはうちくらいだろう。


そう考えればとても貴重なデータじゃないか、役に立つ、立たないは知らんが。


「…言っときますけど、他人事じゃないですよ」


「…ん?」


西園寺が何言ってんだこいつ…、とでも言いたげに俺の事を見てくる。


いや、だってデータ収集が目的ならば西園寺はとっくにその目的を果たしたはずだ。


「だって…、これからあなた達が一緒に過ごすメイドロボになるのですよ、この子」


「え?翠ちゃん、それって…」


琴音が目をキラキラとさせて反応する。


「改めて…、アルファの暴走の件ではお世話になりました、そのお詫びとお礼をかねて、あなた方にわが社の最新鋭のメイドロボをプレゼントします、高屋敷さん」


…これは驚いた。


いかにロボット技術が発達した昨今でも、メイドロボといえばまだまだ一般家庭では手を出す事の出来ない高級品である。


それも西園寺が言うならばこのキューブはまだまだこれからも学習し、成長する、詳しい技術は知らんが、現代科学技術の結晶とも言える人工知能だ。


それをあっさりとプレゼントしてくるとは…、流石西園寺コンツェルンである。


そりゃあ…、俺の答えなんて決まってる。


貰える物は何でも貰っとくのが俺の主義だ。


俺はニッと笑うとすぐに西園寺に返事をした。


「売って良いのか?これ」



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