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第27話:近未来の駄菓子屋さん、のお客さん。

久し振りの単発話し、しかし1つの話しで起承転結まで持ってくのはやっぱり大変だわと実感する今日この頃。

おもに文字数が増える増える(笑)

「えっと…、たぶんここら辺…だよな」


俺の名前は城島 裕司、どこにでも居るような平凡を絵に描いたような男だ。


…と、いうのは昨日までの俺であって、今日から俺は生まれ変わるのだ。


俺には目的がある、それも…人には言えないような、恐ろしいとも思える目的が。


そして、その目的の為に必要な物がある、武器だ。


…もっと手っ取り早く、簡潔に答えてしまうのならば、銃だ。


引き金を引けば、ただそれだけで人の命を奪う事が出来る武器、俺にはそれが必要なのだ。


ただ、今の世の中、銃なんぞ簡単に手に入る訳が無い、一昔前と比べて更に厳しくなった銃刀法により、一般人が銃なんて物を手に入れるのはほぼ不可能だ。


「…だが」


だが、俺は辿り着いたのだ、銃を手に入れる、その方法について。


今の時代に、危険を犯してまで重火器の販売を行う、武器商人が居るらしい。


もちろん、そんな物を商品として堂々と売る訳にはいかない、普段、彼等は別の商売をしつつ、求める者に、武器を売る。


まさに闇の世界であり、俺はこれからその闇へと向かい合わねばならない。


俺には、目的があるのだから、銃はその為に必要不可欠だ。


「…くそ、それらしい店なんて無いじゃないか、あの情報屋、偽情報掴ませたのか?」


その武器商人の居る店の場所を詳しく教えて貰う事は出来なかった、なんでも店側がNGなんだそうで。


ただわかっているのはおおまかな場所…、つまりここら辺にあるという事と、その店の雰囲気は周りに比べて異質なものらしいという事。


だけどさっきからそれっぽい店なんて全然見つからなーーー。


「…ん?」


…あった、周りの建物に比べてあまりに異質で、一際妙な雰囲気を漂わせる建物が。


「【高屋敷商店】…間違いない、ここだ」


一目でわかった、その建物は今ではまったく見なくなった木造の建築物、店先にはよくわからん機械、ボロボロな看板には【高屋敷商店】の文字。


ようやく武器商人の店を見つけた事に俺の心臓は大きく高鳴ったが…気を付けねばなるまい。


なんてったって武器を商品として扱う武器商人だ、下手な行動をとってしまえば俺なんてあっという間に闇に葬られてしまうだろう。


しかしここでナメられては銃を売って貰う事が出来なくなるかもしれんので、慎重に…、かつ大胆に、スマートに行くべきだろう。


恐らく、店員も歴戦の強者揃いのはずだ、筋肉モリモリの身体にスキンヘッドで、下手すれば眼帯とかしてそう…、やべぇ、マジ怖ぇよ。


俺は一度唾を飲み込んで緊張を和らげるとゆっくりと店に入っていく。


「あ!いらっしゃいませ!!」


店に入るなり、高校生くらいの年頃の可愛らしい女の子が元気良く挨拶してくれる。


…あれ?想像してたのと違って随分可愛らしい娘が出てきたぞ?


この娘が…武器商人の店の店員?なんだかイメージが全然違う気が。


…いや、待て、考えてみればこの方がずっとらしいでは無いか。


筋肉モリモリのマッチョマンなんかが近くに居ればそりゃあ誰だって警戒するだろう、銃とか持ってても不自然では無いし。


だが、この少女が銃を隠し持ってるとなるとどうだ?誰もが警戒心を解き油断する、その相手をこの少女は簡単に殺せるだろう。


可愛い顔して…、いや、可愛い顔してからこそか、きっと何人もの男を罠にかけて殺してきたに違いない。


危ない危ない…、危うく油断する所だった。


「…店長は居ますか?」


だが、さすがにこの少女が店主という事は無いだろう、話しをスムーズに進める為にも銃の話しは店主にした方がよさそうだ。


「えと…、すみません、店長は今ちょっと出掛けてまして」


だが少女の話しでは店主は今留守にしているらしい、仕方ない、ならばこの少女に武器の販売を頼むとしよう。


…当然ながら、ここで堂々と銃を下さい、なんて言うはずが無い、表向きには彼等は武器商人でもなんでもなく、ここはただのお店なのだから。


なのでここでストレートに武器を求めた所で適当に話しをはぐらかされ、下手すれば秘密を知った事で帰り道に殺される可能性だってあるだろう。


だが、俺は事前に情報屋からそこら辺の話しは聞いてある、武器を購入するには秘密の合い言葉が必要なのだと。


その合い言葉とはズバリ、店に無い商品を注文する事である。


「…あの、店長に何かご用でも?」


俺がずっと黙っていたせいか、少女がそう声をかけてくる、おっと…怪しまれる訳にはいかねぇぜ。


「いや、それより、欲しい商品があるんだが…」


「はい?何でしょうか?」


俺は緊張しながらも慎重に…、なるべく普段と変わらない声で、【武器】の注文をする。


「ラーメンを一つ、頼みたい」


ここが普通の店ならば…、は?ラーメン食いたいならラーメン屋行けよ、となるが、武器商人としての合い言葉ならこれで充分伝わるはずだ。


「!?、なるほど…、ラーメン、ですか」


ほら見ろ、少女の顔付きが先ほどからがらりと変わり、その表情に笑みが見える。


少女は立ち上がり、スッと商品棚に手を伸ばした、え?そんな所に武器が隠してあるのか!?


「どうぞ、ラーメンです」


「!?」


机の上に置かれたそれは…、えと…、なにこれ?


牛のイラストのかかれたウシメンとかいう、フォークもついたカップだった。


ウシメン…とかいうくらいだし、ラーメン…なんだろうか?


ラーメン…あるんだ。


「お湯入れてきますかー?」


「え?あ!いや…、お湯?」


更に店員の少女はよくわからん事を言ってくる、お湯?もしかして俺、熱湯で拷問とかされるの?


「いや…、お湯はちょっと…、あの、俺の欲しいのはそれじゃなくて…」


「?、じゃあこのラーメン婆さんですか?」


次に少女が取り出したのはババァがラーメンめっちゃすすってるパッケージのお菓子だった。


「えと…、それでも無くて」


「ならこれですね!ラーメン爺さん!!」


だから違う!どんだけラーメンの種類あるんだ!?


てかなんでラーメンが爺さん婆さんなんだよ!?


「いや…、その、ラーメンじゃ、なくて」


「…違うんですか?」


はっ!?いかんいかん…、これ以上この少女を怒らせてはそれこそ俺が殺される、とりあえず仕切り直しだ。


「えと…、頂きます、お湯、入れて貰っていいですか?」


「はい♪少々お持ちください!!」


良かった…、機嫌が治ったのか少々は上機嫌で店の奥へと引っ込んでいった。


くそ…、ラーメンは失敗だったか、考えてみればラーメンっぽい食べ物なんて沢山あるじゃないか。


俺は先ほどの少女が戻ってくるまでの間に店内を物色する、思えば銃の事しか頭に無かったのでろくに店内を見ていない。


こうして見ると店自体は狭いのだが、その狭い店内によくわからん様々な商品がごちゃごちゃに置いてある、武器商人のカモフラージュにしても気合い入りすぎだろ…。


この中から店で売ってなさそうな商品を注文するのか…、なら、もっと有り得ない物を注文するべきだろう。


「お待たせしました~、熱いうちにどうぞ」


「あ、ど、どうも…」


そうこう考えていると店員の少女再びウシメンを持ってくる。


カップに入ったそれは…、ラーメンだった、と同時に少女の言っていたお湯の意味を理解する。


あぁ…そういや一昔前はあったなぁ、確かカップラーメンとかいうやつだったか?


わざわざお湯を用意する必要があるとか不便なもんだ、今はヒモを引っ張れば即席ラーメンが出来るのに。


ウシメンに付いているフォークでラーメンをズズズ…とすする、なんというか、不思議な味だ。


お菓子のような…、でもキチンとしたラーメンのそれは本体の大きさもあって小腹がすいた時に丁度良いかも知れない。


「ズズズ…」


…って、何を呑気にラーメンなんぞすすってるんだ、俺は。


今日ここに何しに来た?銃を手に入れる為だろうが。


「ズズ…、あの、実はもう1つ欲しいものがあって」


「はい、何でしょうか?」


ラーメンをすすりながらも俺は本来の目的を果たす為に行動に移す、これならここの店にも置いて無いだろう。


「ステーキ…、ステーキが欲しいんだが」


俺は大物っぽく薄ら笑いを浮かべながら、それを注文する、武器商人の店員である彼女にはそれだけで充分伝わるだろう。


「はぁ…、ステーキ、ですか?」


あれ?あれれ?なんか予想と違って、困惑しているぞ…、もしかして、違ったのか?


「…!、あ!なるほど、ステーキですね」


だがそんな俺の考えも杞憂だったようで、彼女は何かに気付くとハッと顔を上げる、良かった、やっと銃が買える。


「えへへ♪でもお客さんも通ですね、私も好きなんですよ、これ」


しかもにっこにっこな表情は一目で上機嫌だとわかる、可愛い、でも銃が好きとかやっぱり恐ろしい少女である。


「はい、スナックポテトのステーキ味です」


「!?」


違う、そうじゃない。


「あの…どうしました?」


「え!?いや…その、い、頂きます!!」


先ほどのウシメンのお金も同時に支払い、俺は少女からスナックポテト(ステーキ味)なる物を受け取った。


袋を開けると中には煎餅のような物が4枚入っていた、一枚手にとってバリッと口に入れる。


「あ、美味い…」


煎餅のように薄いながらも味が濃く、ジャンク的だが普通に美味い。


スナックポテト(ステーキ味)を食べつつ、先ほどのウシメンのスープを飲む、そしてほっと一息。


あぁ…、落ち着くなぁ。


って…、いかんいかん、何してんだ俺、当初の予定を忘れたのか、目的は銃の購入だろ。


…でも、なんだろうか、なんか頼める気がしない、もしかして、もしかしてだが、俺は店を間違えたのか?


でも他に…、てか周りから見てこのもこの店が一番胡散臭さを放ってるんだが。


「おっす~、琴音、今帰ったぞ」


「あ、店長~、お帰りなさい」


等と考えていると店先から男の声とそれに反応するように少女が視線を店先に向けている。


店長…、という事はついにこの店のオーナーが帰って来たのか?しめた、これでこの店が武器商人の店なのかどうかはっきりする。


俺は店長の姿を確認すべく、後ろに振り向いて店先に視線を向けた。


「ひっー」


そして、小さく悲鳴を上げてしまう、だが、それも無理は無い事だろう。


そこには目付きの悪い男と…、その男に頭を鷲掴みにされている小さな女の子がいた。


「ん…、お客さんか?いらっしゃい」


店長と呼ばれた男は俺の姿を見るなりそう声をかけてくる、いや…、それより俺はあんたが鷲掴みしている女の子が気になるんですが…。


「店長…なんですか?それ」


店員の少女も俺と同じ気持ちなのか、男が鷲掴みしている女の子を見てそう聞いた、でも…それ扱いとか、やっぱりこの少女も怖い。


「あー…、これな、うん、蜂須賀の奴に、ちょっとな…」


そういいながら店長の男は店の中に入ってくる、しかも少女を引きずりながらだ、ヤバイ…、ヤバイヤバイヤバイ。


「またですか…店長、売るんですか、それ」


「売るしかないだろ…、処分するのは面倒だし」


「ならもう少し丁寧に扱って下さい、傷が付いたら商品としての価値が下がりますよ」


「おっと…、そうだったな、危ない危ない」


この二人は…いったい何を言っているのだろうか。


売る?処分?商品としての価値が下がる?


その全てが、今店長が持っている小さな女の子に向けられての言葉なのだ。


気付けば…身体はガクガクと震えていた。


ー失敗した、それも最悪の失敗だ。


どうやら俺は、闇の世界というものを甘く見ていたらしい。


この店は…、武器商人の店とかそんなレベルの店じゃないんだ。


人…、人の販売をしている、言わば、奴隷商人の店だ。


「ん、そうだ、なぁ…あんた」


「ひっ!?あっ!ひゃい!?」


店長の男が急に声をかけて来たので、男は恐怖でまともな返事が出来なかった。


「あんたどうだ?こういうの…、興味無いか?」


店長の男は邪悪なエミを浮かべると俺にそんな最悪の提案をしてきた。


それは…つまり、俺に、この小さな女の子を買えと!?


心臓がドクドクと脈打つ、咽なんかもう、一気にカラカラで身体の震えは先ほどから止まる気配が無い。


「いや…、その、俺は」


「あぁ、別にこいつじゃなくてもいいんだ、ほら、表に止めてあるトラック見てくれ」


トラック…?正直にいってしまえば見たくない、しかし、ここで見る事を否定してしまえば、俺はこの二人に殺されてしまうかもしれない。


恐る恐る、店長の男の言う通りに視線を店先に向けると…なるほど、トラックが置いてあって。


「ーーーッ!!」


駄目だ!騒ぐな…、下手に大声を上げて悲鳴をあげるな…、俺は咽まででかかった悲鳴を無理矢理にでも押し戻す。


トラックの荷台、そこに居たのは、沢山の女の子だった。


「あんなかから好きなの選んで良いんだぜ、あんだけあれば気に入るのも見つかると思うが」


…今から銃を買おうとしていた俺が言うのはおかしいと思うが、こいつは本物の外道だ。


人を人と見ていない、まるで物のように扱っている。


「どうだ?買ってくれたら、あとは好き勝手出来るぜ?」


…いや、俺だって男だ、そういう妄想をした事だって無いとはいえない。


だけど…、だけどだ、銃を買おうとしていた俺でも、だ。


人なんて…買える訳が無いだろ。


「俺、は…」


震える唇でなんとか言葉を繋いでいく…、怖い、たぶん…、俺は殺されるだろう。


でも…、これも仕方ないのかもしれない、これはきっと、銃なんて物を買おうとした俺への罰なのだ。


「俺は、銃が欲しいので、その、ちょっと、いらない、です」


あぁ…、言った、言っちまった、それもここまでドストレートに。


俺のその言葉に店長の男と店員の少女が顔を見合わせる、きっとこれから、俺をどう処分するか決めるのだろう。


殺されるか、もしかしたら奴隷として売られるか、どちらにせよ、俺の人生はここで終了するだろう。


闇の世界に足を踏み入れる覚悟も知識も、俺には圧倒的に足りなかったのだ。

























ーーー


ーー



「ありがとうございました~」


店員の少女に見送られて、俺は高屋敷商店の店から外に出た。


ジリジリと照り付ける太陽の熱気が、俺に生きている事を実感させてくれる。


俺は助かったのだ、生きて、あの悪魔達の巣窟からの生還を果たしたのだ。


しかも…、その手にはしっかりと銃の入った袋をぶら下げて。


「…はぁ」


深く深く、溜め息をつく。


あの沢山の少女達には申し訳ないが、いくら銃を手にした所で俺は所詮、平凡な男だ、どうすることも出来ない。


それにもうあんな恐ろしい目にあうのはごめんである、銃だって手に入ったのだ、あの店とはもう関わらん方が良いだろう。


これで…俺の目的の達成がより現実的となった。


「しかし…」


俺は目線を銃の入れてある袋に向ける、人の目があるので当然、大っぴらに公開する事は出来ないが…、そこに人の命を奪う重みがある。


【銀玉鉄砲】とは…、なかなか威力の高そうな銃じゃないか。































ーーー


ーー



「あーぁ、やっぱり売れんか、このフィギュア」


「当たり前ですよ店長!またこんなに蜂須賀さんから貰って来て…、今度はどう処分するんですか!!」


「し、仕方ないだろ、この前の日和との一件でアイツには借りがあったんだから」


「せっかくのお客さんも凄い引いてましたよ、でもあの人、銀玉鉄砲なんか買ってどうするんですかね」


「さぁ…?」


しかしまぁ…、変な客だったな。

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