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第25話:近未来の小学生 デート編 そのさん

「あー!翼さん!!」


蜂須賀との密談を終えて三人の所に戻るなり、琴音がぱたぱたと俺の元に駆け寄って来た。


「まったく…急に居なくなってどこに行ってたんですか?」


西園寺もジトーッとした目付きで俺の事を睨んでくる。


「いや、あー…、ちょっとトイレ行ってた」


柚原の手前、正直に話す訳にもいかないので適当に誤魔化す事にする。


「それよりクレープだ、俺まだ頼んで無かったしな」


三人はすでにクレープを手にして食べているので後は俺の分だとクレープの移動販売屋の所に…。


「…あれ?」


「もう行っちゃいましたよ、少し遅かったですね」


クレープの移動販売店はすでに場所を変えたのか、影も形も無い、つまり俺の分のクレープも無し。


「マジか…」


別にそこまでして食べたいかと言われれば実はそうでも無いのだが、食べれた物が食べられなくなると分かるとなんか悔しい。


それもこの三人娘はすでに美味しそうにクレープを頬張っているのだ、つまり、俺は今からただそれを眺めなければならないと言うことである。


他人が食べてる所見てると余計に食いたくなるんだよなぁ…。


そんな事を考えてると服をくぃっと引っ張られた。


「?」


「翼、私のやつなら食べていいよ」


見ると柚原が上目使い…、まぁ身長差があるので当たり前だが、で俺を見つめるとクレープを向けてくる。


柚原いい娘だなぁ…、小学生とは思えん気配りさんだ。


「お、良いのか柚原」


え?小学生と関節キス?そういうの気にするからロリコンなんだよ。


柚原からクレープを受け取ろうと手を伸ばすと彼女はひょいっと俺の手をかわした。


「…おい」


なんだよ、いじめか、今時の小学生のいじめは上げて落とすみたいな高等テクも使うの?


「柚原じゃない、恋人同士なんだし名前で呼んで」


柚原は不機嫌そうな表情でそう言うと名前を呼ぶまでは食べさせないつもりか、クレープをさっと俺から隠した。


「あー、わかったわかった、わかったからクレープを食わせてくれ、ひよりん」


「…キモい」


言うと柚原は若干引いていた、え?そんなに気に食わなかったの?それともそんなにキモかったの?


たぶん後者だろうが小学生にキモい呼ばわりされるなんて…、なんかイライラして背中がゾクゾクするぞ。


「おい、キモいゆーな、悪かったよ、日和」


「ん、じゃあどうぞ」


納得したのかスッと再びクレープを俺へと向けてくる、それも今度はゆっくりと近付けつつだ。


「?」


はて、と思っている中でも日和はクレープを俺へと向けて近付けてくる。


「はい、あーん」


「おい、身長差考えろ、このままだとそのクレープの行き先は俺の服だ」


日和のやりたい事はわかった、だが彼女の身長ではどう背伸びしたって俺の口には届かん。


「なら翼がしゃがんでよ」


「あー…、はいよ」


言われた通りにしゃがみこむ、と同時に隙あり!とばかりに日和からクレープを奪った。


「あぁ!!」


驚く日和を無視してクレープをさっさと口に入れる、…ふむ、抹茶味か。


小学生の癖に中々に渋いチョイスをするじゃないか、なかなかやりおる。


「翼のばか…」


「あほ、流石にそんな恥ずかしい真似出来るか」


というか周りの目が怖いし、つーか小学生の女子とあーんし合うとか、…ちょっとなぁ。


「ほい、なかなか美味かったぞ」


「いい、残りは翼が食べて」


言ってクレープを日和に返そうとすると彼女はそれを断った。


え?俺の食ったやつなんか食べれないとか、そんな感じ?酷いよひよりん。


まぁくれると言うなら貰っておこう、なんか日和も満足そうに俺の事見てるし。


しかしコイツと将来付き合う男はたぶん、すげぇ尻に敷かれつつ、甘やかされそうだな、今日の行動見てると。


何その理想の彼女、俺、立候補しちゃおっかなー。


「………」


「………」


等と考えながらクレープを頬張っていると二つの視線が突き刺さるのを感じた。


「…なんだよ」


「いえ、そのー…」


「あなたが本来の目的を忘れてないか…心配になったくらいですね」


言うまでもなく、それは琴音と西園寺のもので、彼女達二人の視線はどこか冷たい。


「…あー、大丈夫だから、妙な心配すんな」


溶けかけた抹茶のアイスをたれないように口に入れクレープを完食させて答える。


「そう…ですか、それでその、翼さん」


琴音はもじもじと恥ずかしそうにしながらも自分の手にしているクレープを俺に向けてくる。


「えっと…、何?」


「ほら、私達恋人同士ですから、私のクレープもどうぞ、と」


ま、まぁ…、フリとはいえ今は恋人同士という設定だ、ここで日和のだけ食う訳にはいかない。


けど…二つ目かぁ…、ちょっと胃がもたれそうだなぁ、ま、それくらいなら全然イケるか。


琴音からクレープを受け取る、中に苺が入った女の子らしいストロベリー味だ、


「そ、それも残りは全部食べちゃって良いですからね!!」


「お、おう…」


だからなんなの…、皆俺の食べた後がそんなに嫌なの?


琴音からストロベリー味のクレープを受け取り、口に入れる、ふむ、美味い、しかし二つ目となるとさっきに比べてちょっと食が進まない。


「高屋敷さん、次は私のクレープもどうぞ」


「さ、西園寺?別に気を使わなくていいんだぞ、お前だって自分のクレープくらい、全部自分で食いたいだろ」


流石に三つ目はキツい…、胃が完全にもたれてしまう。


「柚原さんや朝河さんのクレープは食べても…、私のクレープは食べてくれないのですか」


そう大げさに言うと西園寺はよよよ…と泣くフリをしてくる、コイツ…絶対わざとだ。


「わかった、食う…、食うからちょっとだけ待ってろ」


「ふふ…、えぇ、でも早く食べないとアイスが溶けちゃいますよ」


イタズラっぽく微笑む西園寺に恨みの視線を向けてやるが彼女はまったく気にする様子などないようだった。































ーーー


ーー



結局、西園寺のチョコバナナアイスのクレープまでも完食させられ、俺の胃には大ダメージが与えられた。


「ふぅ…、全部食った、ぞ」


「美味しかったですかー?」


いや、もう後半は味なんか気にしてられんだわ…。


「このあとどうするんですか?」


「そうですね…、次は」


西園寺と柚原が次の行き先について話している、あの…、頼むからちょっと休憩とかしません?


次の予定にげんなりとしていると町行く人々の中で俺に向けて一直線に向かってくる奴が見えた。


最早語る必要も無いだろうが蜂須賀の奴だ。


やっと来たか…、相変わらず病院服に松葉杖に点滴姿だけど。


「あれ…蜂須賀さん?」


「?、誰ですか?」


「しっ…、二人共ちょっと黙ってろ」


西園寺の方は面識は無いが琴音は蜂須賀の事を知ってるので、余計な事を言わぬように釘を刺しておく。


「ようよう兄ちゃん、羨ましいねぇ、休日に女の子三人連れ歩くなんて、なんだったら一人分けてくれよ」


流石蜂須賀、どこぞのアニメのやられ役を思わせるようなハマりっぷりだ、…格好以外は。


「なぁおい、聞いてんのか?あん!?そこの小学生くらいこっちに寄越せよ、あーん!?」


本人も結構ノリノリで松葉杖を俺へと向けてくる、なんなの、武器のつもりなの?鉄パイプのつもりなの?


つーか何故日和チョイス…、コイツ、捕まればいいのに。


まぁ細かく…は無いけど細かい事は良いか、後は俺がびびったふりして逃げるだけだし。


実際、こんな病院服の格好の奴に絡まれたらビビるし、普通に怖いしな。


などとさっさと逃げる事を考えていると何故か日和が俺と蜂須賀の間に入ってきた。


「…日和?」


はて、危ないぞと声をかけようとすると彼女はクルリと俺の方を振り向く。


「翼、合図したらすぐに逃げて」


そしてゴゾゴソと自分のバックの中を探ると、取り出したるは防犯ブザーである。


…ん~?


ん!?


「お、おい、日和!!」


慌てて止めようとするがもう遅い、勢い良く日和が防犯ブザーを引っ張ると大音量のブザー音が町中に響き渡る。


コイツ…、何の躊躇も無くやりやがった!!


「ひ!?ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいい!!」


そしてこの状況に一番驚いたのは他ならぬ蜂須賀である、コイツも防犯ブザーの恐ろしさはわかってるのか、なんかもう、絶望した顔だ。


慌ててその場から逃げようとする蜂須賀だが、そこは休日の町中、周りがそれを許すはずがない。


「なんだなんだ?」


「あいつ!あの病院服の変なのが女の子襲おうとしたらしいぞ!!」


「変態だ!捕まえろ!!」


「いや、その…ですね、俺は、その、頼まれただけで…」


蜂須賀は両手を上げて降参のポーズをとっているがそんなもの、幼女に手を出そうとした男の言動等、誰も信じない。


「さ、翼、今のうちに逃げよ」


「…え、お、おう」


日和に手を握られてそのままその場から駆け出してしまう。


「あの~…、良いんですか?あの人、蜂須賀さん、でしたよね?」


「あいつなら大丈夫さ…、きっと」


そう時間もかからずに、警察も来ると思うけど、そうなると未成年三人を連れ歩く俺の方がよっぽど怪しまれる。


なのでここは蜂須賀の奴に犠牲になって貰おうか、安心しろ、特別にラーメンのトッピングにバターも付けてやるから。









ーーー


ーー



「はぁ…はぁ」


「もう…大丈夫、かな?」


どれくらい走っただろうか、あれだけの騒ぎを起こしたのだ、もう駅前通りには入られないので走り抜けた俺達は気づけば我が駄菓子屋の前だった。


なるほど…、これが帰省本能ってやつなのな、やっぱ我が家が一番だわ。


「しかし、これからどうしましょう?もう町にはいられませんし」


「さすがに警察の人はちょっと…まずいですね」


「どうする?翼」


「ぜぇ…、はぁ、ちょっと、待て」


俺としては久々の全力疾走だ、少しは息を整える時間が欲しい。


「つーか…、お前らなんでそう元気なんだよ」


「あれくらい走った程度で…情けないですね」


「タバコの吸いすぎですよ、翼さん」


うるさい、タバコは関係無いだろ、何かにつけてタバコ悪いとかタバコちゃんが可哀想だろ。


タバコの擬人化とかされたら間違いなく売れるね、蜂須賀みたいなのがホイホイ釣れそうだ、だってタバコって口に加えるもんだし。


しかし…これからどうする、ね。


正直に言って俺のダメ男作戦は最早完全に失敗と言っていい、というかひよりんの器が大きすぎる。


とはいえ、小学生の女の子とこのまま付き合う訳にも当然いかないのだ、そこはキチンと断らねばなるまい。


…ならば、そうだ、日和を納得させつつ、穏便に断るには最早、この手しか無い。


幸い、俺達は今、駄菓子屋の前へと戻ってきている、ここは俺の店、俺のフィールドだ。


ならばここは、俺のやり方で決めるのが一番である。


「日和、改めて聞くがお前、本当に俺の彼女になりたいのか?」


「…どうしたの突然?最初からずっとそう言ってるけど」


よし…、と俺は日和の前にしゃがみこんで彼女に目線を合わせる。


「これより、最終試験を始める」


「…店長?」


「あの…、高屋敷さん、話しがまったく見えないのですが」


まぁそうだろうな、俺もかなり強引だとは思うし。


「最終試験…、何をするの?」


だが日和は結構やる気満々みたいだ、小学生ってこういうの好きだったりするのかな。


「最終試験…、それは、おままごと、だ!!」

さて、次回よりやっと駄菓子屋要素が出てきますよ、なんか久しぶり。

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