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第13話:近未来のメイドロボ そのに

「つーかだ…、お前まさか外の自販機とかうちの洗濯機とかにも話しかけてないだろうな」


「いや…、何を言ってるんですか店長、さすがにそんな事しませんよ」


まぁそりゃそうか、さすがにそこまで重症では無いだろう。


そしてそこら辺の区別がキチンとついてんなら話しは早い。


ここは同じく、雨が降ろうが雪が降ろうが立派に佇む自販機を例にするのがわかりやすいか。


「よし、ならば外の自販機に雨が降ってるからといって傘をさしたりもしないだろ?なぜなら必要無いからな」


「はぁ…、そうですね」


俺の言いたい事がよくわかっていないのか、琴音の返事はいまいちパッとしない。


そう、人は雨の日に自販機に傘をさそうなんて思わない。


昔話のお地蔵様のようにお返しでもしてくれるなら話しは別だが自販機がお返しに来たところでせいぜいジュースとその日の売り上げくらいなものだろう、なにそれ凄い、ちょっと自販機に傘さして来る。


「だからあのメイドロボにカッパを着せる必要も無い、わかるな?自販機と一緒だ」


「え?だってアルファさんは感情がありますし…、雨に打たれればツラいと思います」


前言撤回…、重症だこりゃ。


「だから…無いんだって、感情なんて」


いくら姿形は似ていようが、あれはロボットだ。


「で、でも、挨拶すればキチンと答えてくれますし、お話しだってできます」


「そりゃそういうプログラムだからな、人様の言葉に適切な答えが出来るようプログラムされてんの、機能だよ、機械的な」


「機能って…、その言い方はあんまりですよ、大体、それでロボコン?がどうして悪くなるんですか?」


うむ、やはりここはキチンと教えといてやらねばなるまい。


「さっきも言ったがメイドロボに限らずロボットは基本的にプログラムで会話したり、動いたりしている、そのプログラムの根本は人様には逆らわないように出来てる」


ロボット三原則とはよく言ったもので、ロボットは人に服従するように作られているし、これが無ければリアルなロボットによる反乱がおこっても不思議は無い。


「人間に危害を加えたり、暴走状態となったロボットは問答無用で破棄されるくらいだ、今のご時世、まず無いけどな」


「なんだかちょっと可哀想ですね…」


何言ってんだか…、と言いかけはしたがこれ以上は話しが進まなくなるだろうから俺は話しを先に進める。


「まぁつまりだ、ロボットは人間に対して絶対服従なんだ、それが所有者であるマスターならことさらにな」


「は~…、なるほど、でも、それって特に問題は無いのでは?」


「大有りだ、そんな人間様に絶対服従のロボットばかりと会話してみろ、自分の話しをキチンと聞いてくれて、肯定してくれる、これほど都合の良いコミュニケーションの相手は無い、だからこそ…」


「…あ」


琴音も何か、思う事があるのか、気付いたかのように小さく言葉を漏らす。


「そういう奴は、人とコミュニケーションを取らなくなる、ひどいと友達ならロボットで充分とか言い出す始末だ」


人は誰だって自分を否定しない者と一緒に居たいものだ。


その事だけを考えればロボットはこれほど都合の良い物は他に無いだろう。


今でこそだいぶ落ち着いてはきたが、一時期は本当に酷かった。


規制される前なんかヒューマノイドという、本当に人間そっくりのロボットも出回ってたくらいだ。


「人間に従うプログラムで動いているロボットを友達と言い張るなんて、馬鹿らしい話しだけどな」


「で、でも…、それって要するに本人次第じゃないですか!キチンと分別さえあればロボットが友達でも良いと思います!!」


「そう、本人次第だ、だからこそ、ロボットが友達とか言い出す奴が出てきても最近こそそこまで問題にもならなかった」


さて、問題はここからである。


「んで…、ロボコンの究極の終着点は、ロボットと結婚する、と言い始めた事だ」


「…え?」


「いや、だからロボットと結婚だよ、自分に絶対服従の奥さん、もしくは旦那様、機能を充実させれば料理や洗濯といった家事も完璧、結婚相手としちゃ理想だわな」


琴音は驚いているのか、それとも考えがまだ追い付いていないのか、口をポカンとあけたままだった。


なので無視してどんどんと話しを先に進めてやる。


「おまけにロボットだからな、顔のパーツもスタイルも本人好みに仕上げる事が出来る、幼女でも合法だ」


「へ、変態じゃないですか!!」


そうですね、全くもってその通り。


「って…、あ、あの、ロボットだったら、出来ない事だってあるじゃないですか!!」


「…例えば?」


「例えば…、その、え、えっち…、な、事、とか?」


顔を真っ赤にさせて途切れ途切れにそう答える琴音、いやいや、まず出てくる発想がそれってどうなのよ、この娘。


「そこは普通に子供が作れないで良いだろ…」


「そ、そう、それです!それが言いたかったんです!!」


嘘つけ…。


「確かにさすがに子供は作れんが行為事態は出来るぞ、まぁロボット相手でそういうオプション機能を付けるって話しになってくるがな」


いや、俺はやんないけどね、ロボット相手とか悲しすぎるでしょ?


第一、ロボット買う金無いし、エロ機能なんて付けたら尚更だ、金無くて良かったよ、あれば変態になってたね。


…イヤ、ヤリマセンヨ、ホント。


「これでわかったろ?ロボットにはしっかりとロボットなりの扱いをするべきなんだよ」


「そんなの…」


琴音はしゅんと頭を下げていたが、すぐに顔を上げると西園寺の方を見た。


「翠ちゃん…、翠ちゃんはどう思ってるんですか?アルファさんの事」


「………」


琴音が呼び掛けても西園寺は心ここにあらずといった風にぼーっとしていた。


…そういえばやけに静かだな、コイツならさっきの俺と琴音の会話にちょくちょくツッコミでもいれてきそうなもんだと思ってたんだが。


「…翠ちゃん?」


「…え?えと、はい?」


琴音にもう一度呼びかけられてようやく我に返ったのか、西園寺はぼんやりとした答えを返す。


「えと…、アルファさんは翠ちゃんにとって大切な存在、です…よね?」


「………」


恐る恐るといった風に聞く琴音だったが西園寺の表情は暗い。


まぁ当然の事だ、琴音からすればアルファのマスターである西園寺から俺のさきほどの説明に対する否定を聞きたかったのだろうがそれは無い。


なぜならメイドロボに限らず、西園寺コンツェルンだってロボットの開発、生産はしている。


その開発元である西園寺コンツェルンの社長令嬢がロボットは友達などと言ってしまえばロボコンを認めていると言っているのと同義だ。


「…高屋敷さんの言っている事に間違いはありませんよ、朝河さん、ロボットは人と同じように扱うべきではありません」


「…翠ちゃん」


望んでいた答えが返ってこなかった事に琴音は悲しそうに呟くと項垂れる。


「まぁ、これでわかったならお前もロボコンは止めとけ、周りから変な目で見られるぞ」


ポンと、慰めの意味も込めて琴音の頭に手を乗せてやる。


「…嫌です」


「あん?」


「もう人とかロボットとか関係ありません!アルファさんはアルファさんです!!」


うがーとでも言いたげに琴音は大きく両手を上げて宣言する。


こ、こいつ…、やっぱりなんもわかってねぇ…。


「…ふふふ」


俺がどうしたもんかとぽりぽりと頭をかいていると横で西園寺が小さく微笑んだ。


「…良いのかよ、ロボット作ってる企業の娘さんとして」


「まぁ…、良いんではないですか?朝河さんらしいです」


さいですか…、西園寺の奴、どうにも琴音に甘いな。


「しかし意外ですね、あなたがここまでロボット関係に詳しいとは、昔何かあったんですか?」


………。


「別にこんなもん一般常識の範疇だろ」


「そうですか…」


西園寺はそこでふと思い出したように店内のフィギュアを見渡す。


「そもそもの話し、これだけフィギュアを持っている人がロボットを否定した所で説得力はありませんけどね」


「だから言ってんだろ…、知り合いから譲り受けたって、そいつ、同じフィギュアを観賞用、保存用、使用用と三種類持ってんだぞ」


うんざり気味に説明してやると西園寺はキョトンとした顔で首を傾げていた。


「あの…保存用と観賞用はまだわかるのですが…、使用用とはなんですか?フィギュアは観賞するのが使用、でしょう?」


「………」


「………」


店内の空気がピシッと固まった気がした。


ふと琴音の方を見ると、あっ…、コイツ、視線をそらしやがった。


「ふぅ…」


俺は溜め息を一つつくと琴音に声をかけてやる事にする。


「いいか琴音…、これが保存用、観賞用、使用用と聞いた時の純真な子の答えだ」


「も!もう!何を言ってるんですか!?知りません!!」


あっ…、拗ねた。


「あ、朝河さんも知ってるんですか?よろしければ教えて下さい」


「え、えぇと…、わかりません!私には、全然、なんの事だか」


嘘つけ、この耳年増さんめ、とか思っているとどうやら西園寺は教えるつもりのない琴音を諦めたのか、今度は俺の方を向く。


「では高屋敷さん、私にフィギュアの使い道について教えて下さい」


えー…、俺にそれ聞いちゃうの、この娘、しかも上目遣いで。


「大人になったらわかるから、今はまだ気にするな、つか穢れるな」


「なんですかそれ!?まるで私が除け者みたいじゃないですか!いいからさっさと教えて下さい!!」


どうやら俺に対しては諦めるつもりもないのだろう西園寺に対し、どう誤魔化そうか考えていた時だった。


一瞬の光りが、俺の視界を奪った。


その光りがなんなのか、それはその直後に起こったそれですぐにわかった。


落雷…、大きな音に合わせて店が大きく揺れる。


「ひっ…」


西園寺はその事に驚いたのか、小さな悲鳴を上げると俺の身体に抱き付いてきた。


「……!!」


だが、その事に気付くと素早くピョンと俺から離れるとコホンと咳払いを一つ。


「はぁ…、ビックリしました」


琴音はというと口でこそそう言っているがあんまり驚いてなさそうだ、コイツ、肝が座ってんな…。


俺?さっきから心臓バクバクですよ?


あと海燕さんは微動だにしない、パネェな、この人は。


さて、これで全員の安全を確認できた訳だがーーー。


ガシャンッと、大きな音が店の前から響いた。


見ると屋根の修復をしていたはずのメイドロボ、アルファが店先で倒れている。


まさか…、雷が直撃した、なんて事ないだろうな?


「アルファ!!」


真っ先に西園寺が店先に飛び出し、大雨に降る中をアルファに駆け寄る。


「今店の中に…」


アルファの身体を持つと店の中に入れようと引っ張るが西園寺の力ではピクリとも動かない。


「…高屋敷様」


「わかってますよ!!」


海燕さんに頷いて二人でアルファをズルズルと引っ張って店の中にいれた。


…つーか重いよ、なんで海燕さん、そんな涼しげなんですか?


「…ふぅ」


アルファを店の床におろして、ようやく一息つく。


「アルファさん!大丈夫ですか!!」


「お、おい…、西園寺、壊れてない…よな?」


屋根の修復を頼んだ手前、もしアルファが壊れていようものなら…、一体どれほどの修理費を請求されるか…。


「………」


だが西園寺には聞こえていなかったのか、じっと黙ったままアルファを見ている。


「西園寺…?」


『………』


静かな駆動音と共にアルファがパチリと目を覚ました。


良かった…、特に異常は無さそうだな。


「アルファ!大丈夫!!」


すぐに声をかける西園寺だったがアルファの視線は西園寺の方を見ていない。


その視線の先は…ん?


『………』


「アルファ…?」


マスターである西園寺の呼び掛けを無視してアルファは立ち上がる。


その視線はさっきからずっと一つのものを見ている。


つーか…、さっきからずっとこのメイドロボと目が合ってんだけど?何コイツ?


『高屋敷様…』


「…え?お、おぅ」


マスターの西園寺をスルーしてなぜか呼ばれたので生半可な返事を返した。


『好きです…、高屋敷様』


「…はい?」

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