熱い背中。
陽炎立ちのぼるアスファルトを見ながらコンビニの影でアイスを食べる。
通り過ぎる車のガソリンの匂い。かき混ぜられる熱気。ぎらつく太陽が跳ね返って目を射るから目を細める。
「あちぃ……」
「暑いね」
「ナチュラルに食うなや」
ゴチ、とニヤリと笑う唇がケミカルな緑で噴き出してしまう。
笑うな、と小突かれて小突き返し、無意味に小突き合ってから「アイスが溶ける」とどちらからともなく渋々矛をおさめる。
グズグズなアイスを一息に口に入れて、頭痛に襲われた。
頭を抱えて小さな背に背中をくっつけ、もたれる。
「重い。どいて」
不満げに揺すられて、頭に響く。ガンガンする。揺すんないで、動かないで、と懇願する声が我ながら弱々しい。
「今だけ。キーンてする。頭痛い」
「……バーカ」
しょうがないな、と向こうもぐいと押し返して来る。熱い。湿っているのは、どちらの汗か。
でも、今だけ。
「……まだ?」
不満げで、心配そうな、声。
それは胸のやわらかいどこかを満たして、ぎゅうと締め付ける。
今更、好きなんて言えない。
「まだ。もう少し」
本当はもう頭なんて痛まないけど。
「好きだ」、とも、「わかれよ」、とも言えないまま、胸の痛みに目を閉じて、背の熱を感じていた。