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ジュディーとスージー

  ケインとジャスミンとの間にかすかな繋がりの芽生えた翌日のことである。ジュディーとスージーがアーサー教授の部屋にいきり立って入って行った。何しろ調査といっても何も無い。荷物は襲われた場所にあることに間違いはないのだが、あの恐ろしい光景を思い出すから取りにはいけない。しかもこの谷がインドのどこに位置しているのかも明らかではないので、道具不足、資料不足のまま作業しなければならず、その行為は非常に困難を極めた。

  

  「先生!私達の調査は役に立ってるんですか?!」

年若いスージーが業≪ごう≫を煮やし、アーサー教授に食って掛かった。

「スージー!」

「先輩だってそう思ってるんでしょう?」

「申し訳ありません。先生。スージーにはちゃんと言って聞かせますから。」

「いいのだよ、ジュディー。・・・ああ、ありがとう。」

自分で身体を起こそうとしたアーサーをジュディーが助け起こした。

「スージー。君がそう思うのも無理はない。もっと前に説明しておくべきだったのだからね。・・・まずここがどこなのか、ということだが。・・・・ここに着いてから2日後。ケインが星を見て測量した結果、デカン高原のどこかに位置しているということだ。日数、歩行距離からみてもほぼ間違いはないだろうと思う。−−−そこで君達に質問なのだが。デカン高原といって思い出すものはないかね?」

アーサーの優しい眼差しが2人に問いかけるように注がれた。

「デカン高原?・・・・アッ!もしかすると先生はアジャンターの事を仰っているのではありませんか?」

先輩のジュディーが答えた。

「おお!さすがはわが考古学教室トップの成績を誇る生徒だね、君は。その通りだよ。今から18年前に私達の先輩によって発見された石窟寺院だね。復習の意味も兼ねて言ってみなさい。」

アーサーは目を閉じてジュディーの答えを待った。

「先生!私にも答えさせて下さい!」

ところがスージーも負けてはいない。

「おおスージー。それでは君が答えなさい。いいかね?ジュディー。」

「はい、もちろんです。」

「じゃスージー。アジャンターのことで君が知っている事を答えなさい。」

「はい!・・・・アジャンターとは元々マハーラシュトラ地方にある村のことで、BC2世紀からAD8世紀頃に作られ、29の石で出来た寺院です。壁画はグプタ美術の粋を表しています。1817年、先程先生が仰ったようにイギリス人の手によって発見されました。・・・・どうですか?先生。」

「良く出来たね。スージー嬉しいよ。ではジュディー。何か付け加えることはないかね?」

「はい。アジャンターはサムドラグプタ時代に掘り始められました。仏教遺跡ですがインドには仏教徒はあまりおらず、ヒンズー教徒が多かったと云われています。カースト制度がその代表ともいえるものです。また、シヴァ、ヴィシュヌ、ブラフマーという3人の神を崇めているのも特徴的です。」

「ウーーーーム。良く勉強しているね君は。」

アーサーの言葉にジュディーの顔が赤らんだ。

  ジュディーはどちらかといえば秀才肌の生徒であまり外見にこだわらない女の子だった。化粧も殆どしないし、遺跡発掘のためなら何日もシャワーを使わなくても平気である。

一方、スージーはなるべくなら遊びたいタイプで、考古学を選んだのも穴掘りさえしていれば単位がもらえる?という安易な考えで専攻した所謂≪いわゆる≫流行≪はやり≫の学生だった。そんな2人だったが、なぜかウマが合うというか、話が合ったらしく、ジュディーのほうが1年先輩にも関わらず仲良くなり、今回の調査隊の一員に加わった。

しかし元々負けず嫌いのスージーの心の中に面と向かって教授に誉められているジュディーに対抗意識が芽生え、

「先生!そのくらいなら私だって!」

といきり立った。だがその言葉を遮るようにアーサーが言った。

「そのアジャンターの近くに先ごろ全く別の遺跡があるらしい、という記事が出たのだよ。私は今回の発掘でそれを証明しようと思っていたのだ。ただそれがどこなのか、皆目見当がつかないのだよ。」

「えっ!それは本当ですか?!」

思わず2人は驚きの声を上げた。

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