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2つの月(1)

  2週間が経った。怪我をして動けないアーサー教授の命≪めい≫の下、ジャック達はあたり一帯を調査することになった。果たしてこの地は彼らの目指す所なのであろうか?それを当面の課題として行動を起こしたのである。しかしケインの目的はジャックの言った2つの月を探すことである。だがこの2週間、ただの一度も月が2つ昇ったことはない。イギリスと同じ満ち欠けする当たり前の月が1個あるだけだ。ここは自分の求めている場所ではないのではないか、そう感じながらも書物でしか知りえなかった星をたくさん見つけた。なにしろ南天の星空である。北に位置するイギリスとは全く異なる星々を実際に見ることができて、それなりに彼は満足していた。だがやはり心の奥では2つの月をこの目で見たい!と願っていた。だから彼の行動は主に夜である。その夜も高台で望遠鏡を片手に夜空を眺めていると突然人の気配がした。ハッとして振り向くと思いがけずジャスミンが立っていた。

「!!ジャスミン。どうしたんです!こんな時間に。」

この2週間、何故だか解らないがケインはジャスミンを避けていた。

「・・・・あなたとどうしてもお話がしたくて勇気を出して来ました。」

「僕と?」

「ええ。」

思いつめた様な表情にケインは改めてジャスミンを見た。

「・・何からお話したら良いのか迷いました。でも1つだけハッキリしている事があります。あなたの額にあるアザの事です。」

(額のアザ?何故その事をこの人は知っているんだ!)

それはケインがここに来た日に顔に現れた微妙な変化の事だった。

  「初めてお会いした時、偶然見てしまったのです。三日月型のアザを。あれは何かの理由で気持ちに乱れが生じた時だけ現れるのではありませんか?・・・・実はわたくし、同じアザを持っている方。いいえ、持っていた方と言った方がいいでしょう。存じ上げているのです。やはりあなたと同じ形でした。」

ケインが答えないのでジャスミンは言葉を続けた。しかし言葉は発しなくとも動揺しているのがわかる。三日月型のアザがくっきりと額に現れたからである。その事はケイン自身痛いほど感じていた。

「ほら、今も出ているわ。これでようやく2つの月が揃いました。この谷が救われる時が訪れたのです。」

ジャスミンの目には懐かしさの余り涙が溢れている。

(2つの月?どういう事だ!)

「ごめんなさい。また驚かせてしまったようですね。話せば長くなりますが、この事を話さなければあなたは調査が終わればいずれ帰国してしまうでしょう・・・実は、あなたとわたくしは現王でありわたくしの父、ムファドが決めたいいなずけ同士なのです。」

「え?今なんて言いました?」

「あなたとわたくしはいいなずけ同士なのです、と申しました。」

「は・はは。何かと思えばバカバカしい話を。あなたは自分の言っている事が解っているんですか?僕達はたった2週間前に出会ったばかりなんですよ。騙すにしてももっと上手い嘘があるだろうに。」

これ以上ジャスミンの馬鹿げた話に付き合っていられないとばかりケインは立ち去ろうとした。

「あなたのお母様の名前はオピウム。お父様の名前はジェイムズ。と仰るのではありませんか?」

「え?何故それを。・・・ああ、ジャックに聞いたんですね。」

「いいえ。あの方とはお話していません。ですからその事も含めてお話しなければならないのです。」

一旦立ち去ろうとしたものの、彼女の曰くありげな表情にケインはジャスミンに促されるままその場に腰を下ろした。

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