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客間

  (一体ここはどこなんだろう。)生き残った隊員、ケイン、ジャック。リュー・テリー、アーサー教授、ジュディー、スージーの6名のうち、まずケインが意識を取り戻した。転倒した際どこかに当たったのだろうか、頭がズキズキする。

続いてジャック、テリー、教授の順に目を覚ました。ジュディーとスージーは少し離れた所に寝かされていたためまだ目を覚ましていない。

「う−−−。イテテテ。」

ジャックは足を怪我したらしく綺麗に包帯が巻かれていた。教授は気付いたものの、腰をひどく打ったようで起き上がることができない。ケインとテリーが手伝ってようやくソファに寝かせた。その物音にジュディーとスージーが目を覚ました。

「ここは?」

お互いが無事なのを知ると二人は一斉に泣き出した。その声を聞きつけたかのようにドアが開き、3名の人間が入ってきた。2人の女性と真面目そうな男。いずれも年が若そうだ。そして女の子達が声高に泣いているのを見て、片方の女性が二人に輪をかけたような甲高い声でたしなめた。

「お静かに!!・・・あなた方は一体どこからいらしたのですか?」

「言葉が通じますよ。教授!」

テリーの第一声。黙って頷く教授。

「私達は通常の会話は困らぬように教育を受けています。あなた方の仰っている事は理解できます。」

代わってその男が答えたが、その表情からは何も読み取ることができない。

「私達はイギリスから来た考古学の研究をしているグループです。私は隊長のアーサー・ドイル。こちらは元教え子で今はこの地で貿易の仕事をしているリュー・テリー。そして学生であり隊員のジャック、ジュディー、スージー、ケインです。」

一人づつ紹介されると彼らはそれぞれ頭を下げた。

「ケイン?」

中央に立っていた品のいい女性が呟いた。

「助けていただきありがとうございました。それで他の者達は一体・・・」

不自由な体を起こすように教授が続けた。

「私達が止めに入った時には既に殊≪こと≫切れておりました。」

無表情の男が淡々と答える。

「そうですか。」

それきり教授は目を閉じて黙ってしまった。涙が両目から溢れ出す。自由になる手を胸の上に置き静かに十字を切ると、それに習うように全員が十字を切った。


  「ところでここは一体どこなのです?そしてあなた方は?」

教授が黙ってしまったのでテリーがその後を引き継いだ。

「ここは芥子の谷と呼ばれている所です。この方はこの谷の皇女、ジャスミン様。そして従僕のカシミール。私は侍女のプレーナムです。」

甲高い声の女性、プレーナムが答えた。皇女、と聞くとすぐジャックが反応した。

「やっぱり!!そうじゃないかと思ってたんですよ。実に美しい。この世の人とは思えない位だ。」

そう言いながらジャスミンに近付く。

「え−−−−!!」

ついさっきまでワンワンないていたのが嘘のような声で女の子達が叫び、代わる代わる文句を言い始めた。

しかしジャックの賛辞の言葉も全く気に留める様子も無く、ジャスミンの視線はケインに向けられたままだ。それに気付くとジャックはケインをからかった。

「お姫様はハンサムなケインに一目ぼれだってサ。」

「何を仰るのです!皇女様に向かって無礼な!」

一段とプレーナムの声が上がる。その高揚とした雰囲気にケインの顔に微妙な変化が現れた。それを見た途端、ジャスミンの体がワナワナと震えだした。

「ジャスミン様?」

心配そうにカシミールが声を掛けた。事実、ケインの変化に気付いたのはジャスミンの他にいなかった。当のケインさえも気付かない。しかもその変化はすぐに消えてしまったのだから気付かない者を責められはしなかったのだが。

「い・いいえ。何でもないの。・・・ご挨拶が遅れまして申し訳ございません。この国の皇女、ジャスミンと申します。・・・プレーナム、あとは宜しく頼みます。」

涙をこらえながらもはっきりとした口調で命ずると、足早に客間を出て行った。その後をカシミールがびっくりしたように追って行く。残されたケイン達は突然我に返ったように動き出した。

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