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崩れる自信

  ところが急にヤコブが黙ってしまった。じっと天井を凝視し始めたのだ。やがてはっきりした口調で言った。

「お前はケインだな。」

ケインはカシミールに合図し灯りを点けさせた。パッと辺りの視界が開けヤコブは目をしばたかせた。すると目の前にケインが立っていた。

「やはりお前か!この茶番は何なのだ!無礼な。客だと思えばこそいろいろ面倒を見てやったのに。これは背信行為じゃ。だがこのようなことをするからには覚悟はしているのだろうな。」

そのセリフと共にヤコブは懐から拳銃を取り出しケインに銃口を向けた。

「ああ。」

「それにしてもこのような所に1人で来るとは見上げたものよ。愛しいジャスミンがいなくなって気が触れたのではないのか?」

「そうかもしれない。ジャスミンがいなくなってからの僕は普通じゃなかった。」

「フン!それももう終わりにしてやろう。ジャスミンの後を追ってお前も死ぬのだからのぉ。」

「そうか。・・・・わかった。僕はもうこの世に未練はない。喜んでジャスミンの後を追うよ。でもその前に大臣の口から本当の事を聞かせて欲しいんだ。冥土の土産に。」

「ははは!良かろう。大方おおかたは先程お前が申した通りだ。私は富と帝位を得、テリーは花を全部清国へ売り、百万の富を得ると言っておった。のぉ?テリー。それに間違いはないの?」

いる筈のないテリーに向かってヤコブは問いかけた。勿論それに対しての返事はない。

「テリー!何故返事をしない!」

苛立ったヤコブの声が空しく響く。

「大臣。僕が何故ここにいるのか疑問に思わないのか?」

初めてケインはヤコブに不安を抱かせた。

「もういいだろう。」

  それが合図となってジャックがヤコブの腹心の部下、デボンを捕らえて石柱の陰から現れた。続いてカシミールと兵士達も意外な人物を伴って現れた。

瀕死の状態にあった筈のムファド王を椅子に乗せ、唖然とするヤコブを尻目に中央に出て来たのである。

「ア・ア・・・義兄上あにうえ・・・・ま・まさか・・・」

「ヤコブ。今の話しはまことの事なのか。」

口調も以前のままと同じだ。

「な・何を仰る!全部この者、ケインの作り話でございます!どうかご信じならぬようお願い申し上げます!テリー!!お前も義兄上あにうえに申し開きをするのだ!」

「大臣。テリー、テリーと先程から仰っておられますが、彼が一度でも大臣の問いかけに返答いたしましたか?彼は企てが発覚したとみるや、ジャングルの奥地へ逃げ込み行方知れずになってしまいましたよ。」

あくまでもケインは冷静だ。それに引き換えムファド王の元気な姿を見せ付けられ、尚、テリーが行方不明になったと知らされたヤコブは、一遍に奈落の底に引きずり下ろされてしまった。

「あ・義兄上あにうえ!  い・いつ本快なされたのです?」

それだけ言うのがやっとだ。

「本快?私は初めから倒れてなどおらぬ。全てそなたの悪事を暴くため、そこにおるケインと相談してやったことじゃ。」

ケインを見つめる王の目は優しさに満ちていた。

「んぐぐぐぐ!・・・・何と言う事だ!しかし、証人も証拠もないのにどのようにして立証なさろうとしておられるのです。」

この後に及んでも尚、強気のヤコブ。とその時。


  「証人ならここにおりますわ!」

さっきまで死んでいたとばかり思われていたプレーナムが立ち上がった。

「プ・プ・プレーナム!おまえ! するとそっちは!」

「侍女のミンミンです!」

愕然とするヤコブ。一旦崩れかけた身体を何とか立て直し、ミンミンをぐいっと引き寄せると突然持っていた拳銃を彼女のこめかみに当てた。彼の指が少しでも動けば一瞬にしてミンミンの命は奪われてしまう!!

  だが次の瞬間。ヤコブの瞳に信じられないものがはっきりと映し出された。


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