誘拐
「ン?・・・ここは・・・・アッ!!姫様!ジャスミン様!!」
素早く辺りを見回すと、すぐ側に青ざめた顔のジャスミンが横たわっていた。
「ジャスミン様!しっかり!」
慌ててその身体を揺すってみると、ゆっくりとジャスミンの瞼が開いた。
「ああ!お気が付かれましたか?良かった!」
感激の余りプレーナムの目には涙が溢れている。
「プレーナム?・・・ここは・・・」
「わかりません。でも私達は何者かに連れ去られたのだと思います。」
「連れ去られた?」
途端にジャスミンの身体が震え始めた。エローラの丘でのあの男達の会話が頭の中で蘇る。
『ジャスミン・・・』『交換条件・・・』自分達は何者かの餌食になったのだろうか?その姿を見て、自分がしっかりしなくては!と思ったのか、プレーナムがいつもの彼女に戻った。
「大丈夫ですわ!このプレーナムが付いております!皇女様に指一本触れさせるものですか!」
「おお、相変わらず威勢がいいのぉ。」
突然背後から男の声がした。
「キャ――――!」
二人は思いっきり叫び声を上げ、お互いをギュ―ッと抱き締めあった。
「そんなに驚かずとも良い。」
「ヤコブ様!」
「叔父様!」
同時にその名を呼ぶ二人。
「ヤコブ様!これは一体何の真似です?!私達を早く帰してください!」
「プレーナム。ここでそちの威勢のいい声を聞いても誰もびくともせぬぞ。それにお前達は生きてここから宮殿に帰ることはないからの。フフフフフ。」
ヤコブの笑い声は二人のいる洞穴一杯に不気味に響き渡った。