表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/56

ケインの心

  意外なカシミールの告白に怒り心頭に達したケインは、宮殿を飛び出しがむしゃらに走った。今までの事は全て仕組まれた事だったのか!カシミールはジャスミンは知らぬ事と言ったけれど今の彼にはその言葉を素直に信じる事ができなかった。自分のジャスミンに対する想いさえも。


  どの位走ったのだろうか。ふと気がつくといつもの場所、エローラの丘に来ていた。どこをどう走ったのかさえ記憶になかった。とうとう力尽きてケインは倒れこんでしまった。

(一体自分は何だったのだろう?)その一言が頭の中を回転木馬のように駆け巡っていた。

  やがてうっすら目を開けるとあたり一面芥子けしの花・・・こんなことがずっと昔もあったような気がする。・・・・自分がまだブマーと呼ばれていた頃・・・綺麗な女の人に叱られて一人泣きながら家を出た事があった。あの時は同じ位の男の子たちにいじめられ、その女の人に泣きながら話した後のことがった。何と言ったんだろう?・・・・よそ者?そうだ!僕はよそ者と言われあの女の人に興奮して喋ったんだ!その側には・・・父さん?するとその女の人は・・・母さん・・じゃ、あの女の人が僕の母?・・ブマー? 何故今僕はブマーと呼ばれていた頃と思ったんだろう?・・ブマーという人は星のことを勉強していた学者でその人の名前をつけた・・・僕に?・・・すると僕は・・・ケインのまぶたの裏に今はっきりと両親の姿が映し出された。自分は、自分の母親はカシミールの言う通り、ムファド王の妹、オピウムだったのか?・・・小さい頃母親について父ジェイムズに問い質したことがあった。どうして僕にはママがいないのか?一体僕のママはどんな人だったのか?etc. だが父の答えは『お前の母は美しく、優しく、それでいて凛とした性格の人だった』とだけ。 しかし一度だけケインが片親だという理由でハイスクールの先生から厭味を言われた時、

『この子は由緒正しい家柄の子供です。』

と言い切ったのである。その時は父独特のはったりだろうと気にも留めなかったのだが、今となってみればそれは真実だったのだ。ともかくその当時は父の言葉でケインは救われたのだった。

  自分は芥子の谷の王族の一員だった。しかも唯一現王ムファドの血の繋がりのある・・・。現実を直視しなければなるまい。しかしその為に何人もの人間が犠牲になった。その罪を一生背負っていくことが自分に出来るのだろうか−−−− 過去から現在までの記憶が走馬灯のように駆け巡っていた。


  フッと気が付くと辺りは薄暗くなっていた。知らないうちに眠ってしまったようだ。しかしそのお陰で大分気持ちも落ち着き、いつまでもこんな風にしていても何も始まらないと思い直した。だがこれからどうすればいいのか全くわからない。カシミールの顔を見ると思うと腹が立つが、ひとまず宮殿に戻って今後のことを考えようと重い気持ちを奮い立たせるように帰途についた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ