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ジャスミンの秘密

  「これから話す事はあなた様の将来にも関わる事ですので注意してお聞き下さい。ただ皇女にはどんな事があっても知られる事のない様おねがいいたします。」

カシミールの声の調子が変わった。

「秘密の話を僕が聞いてもいいのか?」

「あなた様だからこそ打ち明けるのです。−−− 私の家は代々王家に仕えてきました。前王から私の父はお側に上がっておりました。ケイン様。皇女はムファド王の実のご息女ではございません。王には子種がなかったのでございます。少年の頃の病が元で子供を作る機能が失われ、王妃は王公認の下、隣国のさるお方と数回寝所を共になさいました。それで皇女が誕生したのです。今から18年前のことです。既にその時ケイン様とジェイムズ様は本国に帰られた後でしたので、ジェイムズ様もその事はご存知なかったはずです。しかしそれは絶対漏れてはならぬ事でした。知っていたのは王と私の父と王妃出産の折お側に仕えておりましたプレーナムの母のみでございました。その後ジャスミン様は何も知らず王の愛娘として幸せにお育ちになられました。王妃は出産後公認といえど王以外の殿方の寝所を共にした、という罪の意識にさいなまれ間もなく崩御なさいました。ですから現在事実を知っているのは王、私、プレーナムの3人だけなのです。」

カシミールの一言一言はケインにショックを与え続けた。

「・・・・こんな極秘事項を何故僕に話した?」

驚きの余り、声がかすれているのが分かる。

「父の遺言でございます。」


  「遺言?」

「はい。王がどんなに皇女を可愛がろうと王家の血筋を引いた方はオピウム様のお子様ただお1人、つまりあなた様なのでございます。その事はずっと王も認めておられました。無論私の父にしか打ち明けなかったそうですが。そこで王と計らい、将来ケイン様、当時はブマーマグプタ様でした。をジャスミン様とめあわせて王家の血筋を存続させるという計画を立てたのです。問題はブマー様、つまりあなた様がこの地を訪れることがあるかどうか、ということでございました。そこで父がジェイムズ様と一緒にこの地を訪れ、一足先にイギリスに戻られた方、バーナード様を数年かけて探し出し、何とかブマー様をここへ来ていただくように仕向けて欲しいと懇願いたしました。詳しい話は私も聞いておりませんのでどのようにしてバーナード様が話されたのか分かりませんが、とにかく上手くいった旨の手紙を受け取り嬉々としていた父が突然倒れ、三日後に亡くなってしまいました。その死の直前、私は枕元に呼ばれこの話を聞いたのです。今度この地に足を踏み入れる方がブマー様ご本人と確認したら、この秘密を話すよう申し渡されました。あの時のトラ。スウォード達は私の命令で皆様方を襲ったのです。」

  

  「何だと!!それじゃお前は僕をここに連れてくるためだけにあの人達を殺したというのか?!」

「罪は私1人にあります。皇女は今でもあなた方が不法にこの谷に侵入して来た為スウォードに襲われたと信じております。全て私1人が計画したことです。」

若いが決して意思を曲げない強さがそこにあった。いつもプレーナムに怒鳴られてシュンとなっていた、あの気弱なカシミールはどこにも見受けられなかった。

しかし怒りが全身を覆っているケインには終始冷静なカシミールが、いやそれ以上にそんな計画にむざむざ引っかかってしまった自分が許せなかった。

「ウォォーーー!」

腹の底から搾り出すような叫び声を上げると、ケインは忠実な従僕の顔に鋭い一発を浴びせ走り去った。残されたカシミールの顔が見る見るうちに紫色にはれ上がった。

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