表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/56

ムファド王

  その頃ジャスミンも昨夜の事を思い出しながら、元王であり父のムファドの寝室にいた。ケインの事を報告するためである。

  ムファド王は2年程前に病気で倒れて以来、寝たきりの状態になってしまったが、脳には影響がなかったらしく言葉もハッキリしている。だが身体が思うように動かない為以前のように政務を全うすることができない。大臣で義弟のヤコブが代行しているのだが、最近王の椅子を密かに狙っている、との噂を耳にしてからはムファド王はジャスミンに良い婿を、と考えていた。そんな矢先、もしかするとオピウムの息子かもしれない、という男が現れた。その男、ケインの一挙一動を逐一報告するように、とカシミールに命じてあった。しかしその事はジャスミンには知らされてはいなかった。


  ジャスミンはベッド脇の椅子に腰掛けた。

「お父様。ご機嫌いかが?」

彼女の声はカナリヤのように美しく、聞く者全てに安らぎを与える。

「おお。ジャスミン。今日のお前は一段と美しいの。何かあったのかね?」

「い・いいえ。あの・お父様にご報告申し上げたいことがありましてこのような時間も顧みず来てしまいました。」

その頬がほんのりと赤らんだ。

「何だね?」

父、ムファドの問いに昨夜のケインとの会話を掻い摘んで話した。但し、正体の分からぬ人物とその後のケインとのキスは除いて。しかしジャスミンの報告は既にカシミールから全て聞いていた王は、愛娘の話をニコニコと聞いていただけだった。

  「それでお前はそのケインという男に何時いつ全てを話すのだね?私は早ければ良いと思うのだがね。そうすればお前の身は守ってもらえるだろうし、オピウムもきっと天国でそれを望んでいるだろう。」

昔を思い出すかのように王は遠くを見つめた。

「でもお父様。あの方が叔母様の実子おこだとハッキリしたわけではないのですよ。」

不安そうに自分を見つめるジャスミンに王は言った。

「大丈夫。お前の話を聞いてケインとやらがオピウムの忘れ形見であることがはっきりしたよ。お前は先程ケインの瞳が綺麗は緑色だったと言ったね。』私があの子を最後に見た時も深い緑の色を放っておった。知らない国へ行くという不安さえも感じない位にの。決定的なものが額のアザじゃ。お前も知っての通り、オピウムは左の二の腕に三日月のアザを持っておった。ケインは父親より母親の血をより強く受け継いでいるようだ。・・・・そうか・・・ケインという名前であの子は大きくなったのじゃな。私の知っていた名前は、ブマーマグプタであった。星座に興味を持つように、とインドの学者になぞらえて私がつけてやった名だ。その名の通り星に興味を持ったのじゃな。・・・・よしよし。ジャスミン。私の口からケインに話そう。お前の事も頼んでおきたいからの。ケインを呼んでおくれ。なるべく早くじゃぞ。・・・それからお前は席をはずしていなさい。」

「はい。」

  父の命令でジャスミンが出て行くのを確認したのかカシミールが音もなく王の寝室に入った。しばらくしてジャスミンに呼ばれたケインが同じように入って行った。


  それから3時間後。王の容態が急変し、突如意識不明に陥った。知らせを受けたジャスミンは、すぐ王の容態について絶対極秘にするよう臣下に申し渡した。お陰でその件はごく一部の人間のみが知ることとなった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ