【よんじゅうさん】まち/そんざいりゆう/どうぎょうしゃ
ごぶさたすぎて、話しを忘れられてしまったかた……申し訳ありませんでした(*´・ω・。)
お電話代わりまして。
今村瑠璃さんです。
街に出るのは、少し恐い。
なんてしおらしく思ってしまうのも、無理はないと思われます。
「瑠璃」
「ぎゃああああぃあ!」
どこか遠くで魔王様の声が聞こえた気がしました。
いつになく、楽しげなアルの声がどこか新鮮に聞こえましたとさ。
……あれ、死亡フラグ??
† † †
三度目の街にて。
アルと敬語なしで会話する、少々馴れ馴れしい男性と出会う。
「私は、ケイト。 ケイト・クラマシードと申します」
にかり、と笑った彼、クラマシードさんは、野蛮なカンジはしなかった。
ただ紳士的な雰囲気が漂う。
それを見て、アル様が瞳をすがめたことなんて気付かなかった。
「瑠璃、コイツは同業者だ」
同業者……つまりは魔術師ですか?
「そうだよ、私はリュンヌと同じく魔術師だ。今から大変危険なオシゴトをしに『 』に向かいます」
『 』。
なんと言ったのか分からなかった。
きっと翻訳出来なかったのだろう……そういう言葉もきっとあるはずだから。
それにしても最初の印象とは随分な変わりようだ。否、第一印象が悪くなってしまう人なのだろう。損な人だ。
ということよりもまず……。
――きけんなおしごと
クラマシードさんが言った、言葉が大変気になる。だけどまぁ、そこはスルーの方向で。
アルが何も言わなかったのだから、アルにとっても、私にとっても危険なおでかけではないのだろう。
「そうなんです?なら行きましょ、アル様」
一応、人様の前では呼称は『アル様』だ。だって見習いだし。
「あぁ、ついて来い。目立たないところで転移する。それから『 』に向かい、仕事を完了させる。日暮れ前には帰城する」
簡潔にこれからの予定を並べ立てて、手を引くアルはかっこうぃ。
やっばりアルに敵う男なんて、いや生命体なんていない。
――のろけです。
† † †
『 』に向かう途中の空中にて。
「ぎゃああいあ!」
「瑠璃、煩い」
どこか楽しげな顔で怪鳥を操る、華奢な体躯の男。
ベリアル・リュンヌ。
少しでも洗脳魔法を間違えば、命はないこの空中で、嗤う絶世の美貌を持った魔術師。
「瑠璃。私がいないと恐ろしいだろう?なにもできないだろう」
嗤いながら、泣いているかのよう。
瑠璃は彼の、腕に抱き抱えられながら思った。彼が少しでも手を緩めれば、瑠璃の身体は風の中の塵のように、文字通り消えるだろう。
「ど、どうしたんですかかかか」
いくら瑠璃でも、一介の高校生。
怪鳥と一緒に“あいきゃんふらい”をしたことは流石になかった。
いつもの冷静さをぶんなげて、どもりながら聞いたその顔は長い間、水に浸かっていたかのように真っ青だった。
それを見聞きして、隣で同じく怪鳥をマインド・コントロールしているクラマシードさんが笑った。
いきなり笑ったからびっくりして、心臓が止まりそうになった。
「リュンヌ、俺に嫉妬してんだよ……かわいーぃ(笑」
えーなになに嫉妬ぉ?
いみわからん。
てゆか、ちょいとイラッと来ますね……なんでアンタがアルのこと分かるんですか。
「それはですねえ、私には‘えいそう’といふ得意技があるからなんですよ」
「…………!?」
なんで考えてることが分かったの!?
‘えいそう’…影想、影の想い。
はぁ、世の中には人知を越えたチカラがあるのですね。
「で、リュンヌを影想したら、視えたから。人見知りだと言っていたのにも関わらず、私と話し、自分一人の力で街の地面に立っているのをみてイラッと来たんだろうね」
すらすらとアルの心を読まないでいただきたいよ。
ウザい。
「酷い……子供に、ウザい、て」
泣きそう、泣きそう。
アルの可愛い一面を見れて今日は収穫大だったわ、ヨホホホ。