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【よんじゅうに】暖かな灯を遠巻きに


 ごきげんよう、紳士淑女の皆様。

 皆様のアイドル、今村瑠璃(16)は浮気罪という冤罪によって


 ――ピンチです。




 † † †




 事の発端はある■■の誕生日。

 ■■の恋人、**は疲れ果てて帰途に着きました。

 いざ扉を開けようとすると、中から恋人の迷惑げながらも**に聞かせたことのないような無邪気な声で掛け合いをしている声が聞こえてきたではありませんか。

 **は不安になりました。昔だったら考えられなかったであろう、感情が芽生えたことに**は驚きながらも、嬉しくもあったのですが、この状況下で素直に嬉しがれるほど**は物事を楽観視できる性格ではありませんでした。


 そして、ふと自分は最近恋人に、顔さえも見せていないことに気づくのです。

 これはまさか自分は、大変なポイントを逃してしまった、のか……と愕然と思いました。


 **は愕然としたまま、扉から距離をとりました。




 † † †




「ア、アル?」


 なぜこんなことになったのか。

 瑠璃は、困惑の表情を隠せない・・・・

 隠さないのではなく、隠せない。


 (どうしよう……どうしようどうしよう)

 

 もう一度、瑠璃は確認する。


「なんで、浮気疑惑発生?」

「現状のデータ統計により、考えられ得る条件を満たしたからだ」

 

 酷く抑揚のない声は、聞く人にとって恐怖しか煽らない。

 ベリアルは、自分よりも遥かに小さなその儚く、脆い存在を見つめた。


「………わからない、です」


 悔しげに、唇を噛むのは心当たりがある証拠――ではないと思いたい。

 瑠璃が、饒舌な口調でいまにも話し出すのではないかとベリアルは息を詰めて待っていたが結局、瑠璃は何も言わないまま、沈黙した。

 心の中では、何を言いたいか……お互い分からないままで。


「アル、確かにここ最近、カイルさん以外に接触した男はいましたが恋愛対象外です。ありえません絶対です!!!」


 いつにも増して、熱く語るところがまたベリアルの心にさざなみを立てる。

 

「そう、か」

「そうです、かっかー!」


 ――閣下とはなんだ、閣下とは。

 しかし不思議なことに、先ほどまでの苛立ちはすっかりとまではいかないが、消化できたと、ベリアルは一人息をついた。




 † † †




 瑠璃は久しぶりにベリアルと共に、街に出掛けることにした。

 なんでもベリアルにしか出来ぬ、使命が…時空に……大規模…な……亀裂……瑠璃は話の半分も理解していない。

 初めて、行ったのが何年も前に感じられるが、まだ半年も経っていない。

 街に来るのは三度目。

 二度目は、誕生日の日に、自棄でやけににちゅくちゃした砂糖菓子を大量購入したとき。

 そうだ、そこで零に会った。


「………」

「………」


 瑠璃は、ベリアルがいつも以上に無口なことを察して、魔王さまでも緊張することはあるんだなぁ、と少し愉快な気分になってしまい小さく笑った。


「………どうした」


 途端、抑揚の少ない声が聞こえ、


「やぁ、リュンヌ!」


 と何やら若い男の声が前方から響く。

 地味に人見知りな瑠璃はこそ、とベリアルの華奢な体躯に隠れる。


「どうした?瑠璃」


 やや眉をひそめて、後ろに隠れる瑠璃を見つめる。

 瑠璃は、これ以上アルの心労を増やしてはならん、と思うが……、


「人、恐い」

「お前、人見知りだったか……?」


 (性格がコロコロ変わらますからね)

 と瑠璃は心の中で笑った。


「おや?噂の『ベリアルの春の妖精さん』ではないかい……どうやら、歓迎されていないようだけれど」


 

 握手しようとした手は空は切った。

 少々、苦笑いしながら、手をポケットに突っ込む。


「リュンヌ、紹介してよ」


 (それにしても……敬語使わない人も珍しいなぁ)

 興味津々な様子で、しかし後ろに隠れたまま、瑠璃は男を見つめた。


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