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【よんじゅう】再来は遠いような気がして意外に早い

更新しましたにございます(・ω・`)


 訓練場にて。


 はぅ、やはり戦いに勤しむイケメンは麗しいですねぇ。

 瑠璃は、日焼けしていない片手を自らの頬に当ててうっとりと一人のイケメンを眺めていた。

 浮気?いえいえ。アル様以上のイケメンなどこの世にいるわけがないでしょう(寧ろいたら殺■)。

 リヒト様……あの人は人間じゃないように思われますので悪しからず。


「やぁっ!」


 ぼんやりと妄想という名の楽園に浸っていると、一際大きい声が響いてイケメン様が相手に向かっていくところでした。おお、白熱した戦い繰り広げていらっしゃいますね。

 

 「そこの女、ここは女児禁制だぞ」


 余りにも静かで素朴な声で、つい反応が遅れてしまいました。ヤバいヤバい!何か言わなくては、不振に思われる。


「申し訳ありません……わたくしは今村と申すものでして、ベリアル・リュンヌ様の身の回りのお世話をさせていただいております。今日はカイル・アルジャンニ様から仰せつかって来たのですが……?して貴方の発言はカイル様の発言を覆すほどの効力をお持ちなのでしょうか?いえいえ疑っているわけではないんですの、えぇ。ただ何故私が女だからという理由でここから締め出されなければいけないのか甚だ疑問。あぁ、なんて男尊女卑が激しい時代でしょうか、この頭でっかちが、と罵っても良いでしょうか?あぁ、危ないからとかそういう理由で注意してくださったのなら素直にありがとうございます、と受けとっておきますわ。しかしカイル様の命に背くわけには参りません――分かっていただけますか?」


 弾丸とぉくとはこの事を言う。

 私に声をかけた、顔も背が高すぎて見れない男性を初めて見上げた。

 いかにも軍人~みたいな顔のお方はあんぐりと口を開けてます。マヌケさんと呼んでいいですか。


「隊長から?隊長てロリコンだったのぉ!!??ショックぅ!」


 (゜Д゜;)こーんな顔して現れたのは、やけに色っぽいネェチャンでした。

 ええぇ、ここて女禁制じゃなかった? 私の表情で何かを察したのか、ネェチャンが艶やかに微笑む。


「アタシ、男よ?」


 ほーぅ。興味深い方が現れましたねぇ。

 瑠璃も日本にいてネカマさんは見たことありましたけれど、オカマさんはさすがに公衆の面前では見たことありませんでした。


「レクシ、話がこんがらがる。出来れば退出願いたい」

「あら?アタシが邪魔なのぉ?ひどぉい一緒に寝た仲ぢゃなぁい」


 軍人さんより、一枚上手なネェチャン。

 世の中にはこんなに完璧に女に成り切れる殿方がいたのね!?と感動中の瑠璃さん。


「ん、よく見ると可愛い顔してんじゃない。黒髪も珍しいしー、てか見たことないわよアタシぃ」


 んー、とキスされそうな程、身体を折って迫られた為、本能的に回避っと。

 しかしこんなオカマ美人さん……素顔はどんなでしょう。


「失礼します。私、カイル様に会わないと……」


 今更だけど、すみませんカイル様。

 貴方は今、どこにいるのかも分かりませーん。


「本当に急ぎのようなのねぇ?ま、どうでもいいわ。みんあぁぁあ!」


 イキナリ大声で叫ばないでくれますか?お陰で無様にも肩を跳ね上げてしまいました。

 しかし瑠璃さんは持ち前のスルースキルを生かして、探検の続きに出かけたのでした。




* * *




 一人になると、考えることがたくさん泡のようにボコボコと沸いてくる。

 たとえば、ここに留まって起こるメリット・デメリットだとか。

 あちらの世界に帰れたとしたら……。もう未練なんてこれっぽっちもありませんが。


「本当にィ?」


 おおいやだ。一人になると幻聴が増えて……。


「あらこんにちは。零さんご機嫌麗しゅう?」

「おや、随分と物腰柔らかァ……学んだのかな?」


 うるさいですね。ただこいつからはいろいろ特殊な情報を聞きだせると思ったのですよ。

 だからここは友好的に接するべきでしょう?長年の感がそう告げています。


「何をおっしゃいますか?あら今日は普通のお召し物」


 そう、奴は今日は燃えるような赤髪と同色のローブを着込んでいます。

 暑くないのかしらん。涼しくなってきたとはいえ、フォンティーヌはまだまだ暖かい。


「ぅん……ボクは気に入ってたんだけどねェ?悪目立ちしちゃってさァ」


 ああ、そんなこと着る前に分かれよ。

 学生服なんて珍妙なもん……着てるだけで怪しまれるわ。


「して、ボクがなんでここにいるのか聞かないのかィ?」


 そんなこと聞かなくても分かる。


「不法侵入でしょう。どーせ」

「ご名答!クスクス」


  あーあ、これだから嫌だよ。焦らないし、寧ろ笑ってるし。不気味だよ。


「ねェ……あれ、あれは治ったァ?」


 ぴくり、と身体が反応する。

 嫌、治るわけねぇですぜ?だってあれたよ、あれ、アル様は依然として瑠璃さんのこと認識してくれないし。


「声かけないと私がどこにいるか分かってくれないわ」


 あー、やだやだ。

 自我は持つべきじゃなかったんだよやっぱし。瑠璃さん人生のターニングポイントだったんじゃね?あの選択よぉ。


「くく、愛しい人に見てもらえないなんて可哀相にィ……まぁ、あれだよね」


 ――本当に愛されてるのかすら分からないけどね。


 それ最大の精神攻撃ですよ。

 瑠璃さん泣いちゃうから!


 今村 瑠璃は、にこりと愛らしく笑った。痛む心を幾枚もの仮面で覆い、隠してまたいつものように笑った。




「あれェ……ここ泣くところじゃないかなァ?」


 零は嬉しそうに首をこてり、と傾けて消えた。

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