【さんじゅうきゅう】退屈は私を動かす
今村瑠璃16歳。
最近疲れやすくなったなと自覚した高校正(学校行ってないけど)。
「最近、平和ー」
隣にいるのはカイル・アルジャンニさん。歌って踊れる万能騎手をめざしているらしいよ、うん。
「平和が一番ですよ、ルリ」
武器の手入れして、残念そうに溜息つきながらいわれても説得力皆無ですからね?
なぜ私のような一介の見習いが、軍の隊長さん&アル様の側近をしていらっしゃる青年とご一緒しているのか、と言いますと、
「カイル、私はリヒト様についてゆくことになった、暫く瑠璃の世話をしていろ」
て言って、私をおいていってしまったのよしくしく。
「はいはいルリ、嘘泣きは止めて魔法に励んでくださいね?」
はあ、意外にカイルさんは毒舌だった。私は今、こうして魔法のおべんきょに励む健気な子、もう一度しくしく。するとカイルさんの元に鷹のような大きな鳥類が現れまして、吃驚している私を一瞥すると鷹は帰って行きました。
そのまえに伝言だけを残して。
「すみません、ルリ……その急用が出来てしまって……」
「あー、行って下さい。子守なんて退屈でしょう?」
すまなさそうに呟くカイルさんの表情を見て、そんな所だろうと思ったよ。
「では、少し外します」
あの鷹かっこよかったなぁ。上手く調教されていた気がする。いいなぁ。
カイルさんの心配そうな声をガン無視して、言った。
「いってらっしゃいませ」
「………いってきます」
ちょ、行くなんでも傷つくよ?その目はぁ?
* * *
それにしても退屈である。
カイルさんが居ないとつまらないことこの上ない。
「暇だなぁ……PSPとかないんですかねぇ?」
ま、向こうの世界ではもっぱら読書でしたけど。この国娯楽すくなすぎんだろ。
よし、遊びに行こう。普段、自堕落なこの瑠璃様を動かすとは……さすが退屈のやろう、一枚上手だぜ!
と、いうことで…今村瑠璃、決してアル様に捨てられたわけではない16歳が王宮内を旅します。探さないでね?
「うーんと……私が行ったことがない場所といえば……」
王宮内は広すぎて何があるのかすら分からないし、私のような見習い(アル様の)が立ち入ってはいけない場所もあるかもしれない。リヒト様も最近はライ様(妻)ときゃっきゃっうふふの新婚旅行から帰ってきて、らぶらぶピンクぃオーラ全開ですしね。まじリア充滅亡しろ。
「中庭、図書塔、医務室、アル様のお部屋、大広間、リヒト様のお部屋、謁見の間、■■■のお部屋……あー、訓練場?とか行った事ないかもしれませんね」
瑠璃はそういうと、例のごとく長い長い廊下を歩き始めた――優雅に黒髪をなびかせて。
更新が遅れてまして、本当にごめんなさい。