【さんじゅうはち】もう一つの愛の手錠
遅くなって本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当にごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいm(_ _)m
綺麗な瑠璃色の瞳を持つ少女、瑠璃と最強の魔術師と言われていたベリアルが並んで歩き去っていく様は、物語に出てきた――奴隷と主人の関係そのものだった。
「ぁ、の……リヒト?」
「なんだい?お姫様」
唖然としているライラとは対照的に、もう慣れたものだと胸中で思いながらリヒトは、
「ああ、あれかい?あれはねぇ……ああいう愛し方もあるんだって事だよ」
どこか遠い目をして、リヒトは言った。
勿論ライラも、随分昔のようだけれどここ最近、起きたリリス・クロウの件は知っている。
いくら孤児だからってバカにしないでよね!リヒトのためにたくさん勉強したんだからっ。
リヒトもきっと……ああいう盲目的な愛し方をしていたかな?
くやしいけどあの女はとっても綺麗だったしね。
「そっかぁ……でもリヒトからは飽くまでふ・つ・う!に愛されたいですからね?」
理解はしておきますけれども!
知識として留めて置く事にします。ええ、そうさせていただきます。
私の必死の叫びを聞いたかのように、リヒトは華のある優しい、笑顔を浮かべて、
「もちろんだよ。ライラ」
と、言ってちゅ、と輝くようなライラの金髪を掻き揚げて、その額にキスをした。
勿論、群衆の前でそんなことをされたライラは、真っ赤になり、周りはひゅーひゅーと口笛を吹いて冷やかした。
ライラは、反則……といつも思うのであった。
そして散々二人にふつうではないだの、盲目的だのと言われた瑠璃色の少女の首には漆黒の美しい蛇。
そしてその蛇の持ち主は、べリアル。
あの時、瑠璃が差し出した手錠を見て、べリアルが、
「いいな……」
と呟いたかと思うと、手袋をはめた手から今にも飛び掛かってきそうな大蛇を出し、警備隊が冷汗をかいているところに、ただ淡々と、
「動いたら殺すぞ」
と瑠璃に命じて、大蛇を彼女の首に巻きつけて、蛇の牙を自らの手に刺し、ゆっくりと優美な笑みを浮かべて、
「簡単に外せないだろう?無理に外すと私が死ぬぞ」
と、瑠璃に言ったのだった。
周りが唖然としている中で、瑠璃は全く気にも介さず満面の笑顔で、
「アル様のご命令なら……嘘です。好きですから」
と言って、抱きついたのだった。
魔術師志望の男女は、一瞬であれほどの大蛇を出したベリアルを敬い、恋する少女たちは、あんなことをされても全く動じずに『好きだから』と言えてしまう瑠璃を見習った。
そして冒頭に戻る。
* * *
「瑠璃、寒くないか」
「ええ、全く」
パレードが始まった夜の王都。
そこに黒大蛇を華奢な肩に巻き付けれ、長身の男と手を繋いでいる少女がいた。
瑠璃色の瞳をきらきら輝かせながら、色とりどりのドレスや仮面で着飾っている庶民、貴族を見詰めている。
――木の上で。
べリアルが最近、一緒に居てやれなかった瑠璃に差し出した贈り物は、見通しが言い果実の木でパレードを眺める事だった。
「本当に、寒くないか」
「あったかいのです。アル様が居れば」
とす、と細い腕に頭を寄りかからせながら、激甘な言葉を吐く。
「今は嘘吐きは返上ですよー」
くすくすと、笑ってそれからただじっ、と輝く光景を見詰める。
金の粉がさらさらと舞っていて、それを夢中で集めている幼い女の子を見て、それから綺麗な舞を踊っているスタイル抜群のおねーさんを見て……。
いつまでも見ていたいと思った。
日本の地元のお祭りを思い出して、目頭があつくなったけれど。
あの終わりかけの寂しさや、花火を見て皆できゃーきゃーと笑いあった時間は確かに幸せだったと言える。
異世界に来てまさか新しい価値観と愛しい男性が出来るとは思わないよ。
――普通。
普通は、ですよ。
私を誰だとお思いですか。
天下の今村 瑠璃さんですよ。 しかも一歳、年を重ねてグレードアップしたんですよ?
さぁ、さぁ。
皆さん!異世界ライフを楽しみましょうよ。
でも向こうの世界から絶世の美女が現れてしまたらまた居場所が無くなるから止めて欲しいなと思ったのでした。
増してや、アル様を誑かした女狐が居るなんて分かった日には、私はソイツのことを精神崩壊させて頂くことになってしまうやも知れませんし。
つらつらと考えていますとくい、と首が横に引かれて、何事!?と思いながらも、そちらに顔を向けると、
「名前、」
いつでも高慢な魔王様が、うっすらと陶器のような白い肌をピンク色に染めて、ぼそりと口を動かしました。
「名前……ですか?アル様」
こてり、と無理に傾げさせられた首をそのままにしながらも、私は聞いた。
意味がわーかりませぇん。
「様、をつけ、ろと言った覚えは、ない」
うわ。かみかみー可愛いー(°□°*;)彡
ふと、今だにアル様の手に刺さった、蛇の毒牙を見る。血がどくどくと溢れている訳でも、変色しているわけでもないそれは、ただ貫通していた。
貫通した牙の先からは、ぽたぽたと紅い液体が流れ出していて、見ると血液だと分かった。
「どうした?」
「アルさ……アル、痛そうですね」
慌てて言い直す私に満足げな顔をして、自分の手を掴む。
「痛そうに見えると?」
面白そうに笑って(これはレアです)、言った。
「――見えます、血が、でて」
「舐めろ」
満面の笑みですよ。
魔王様が久しぶりに君臨なさったと思ったら。
勿論、従順で忠犬な瑠璃ちゃまは素直にアルの美しい掌を怖ず怖ずと舌に近づけました。
感想。
うん!ほどよく血の味★
「疲れたろう――眠れ」
低く響く低音にまどろみながらも頷いた。