【さんじゅうに】花咲く王宮*
遅くなって申し訳ありません(汗。
瑠璃は、自室に戻りいつも通りに掃除を少しして……泣いた。
† † †
瑠璃は、今カスファイノの王女の事を考えた。
誰からも必要とされていない女性。
いや……そーいえばあの人は駆け落ちしたのか。
なら王女様は恋人がいるのね。
ああ、嫌だ、嫌だ。
どうしたことでしょう。
今村瑠璃15歳、ピンチです。
私には予想がついた。
このままでは私の存在が消えてしまうかもしれない。
それだけは…嫌だ。
神様、あなたは私にまだ道化を続けさせるつもりですか?
† † †
「瑠璃……」
「んぁ……?」
色気の欠片もない声を出しながらむくり、と起き上ってみた。
昨日、泣き疲れて眠ったことは覚えている。
でも寝たのは自室だったはずだ。
なのになぜアル様の寝室のモノクロのベッドから起き上ったのでしょうか?
「アル様ぁ~、なんでアタシここにいるんれすか?」
寝起きで全く舌が回らない。
「………瑠璃……おはよう」
「おはよーございましゅ。らなくてーなんでここにアタシいるろー?」
再度、同じことを質問してみる。
「運んだ。」
「らんでー?」
「――消えて、しまうかと思ったから」
「………っ!」
言ってしまってから顔が強張るアル様。
傷つくならいわなければいいのに。
「だいじょぉーぶ!……どこにもいかないよぅー」
そういって安心させた。
それが自分の為か、アル様の為か分からないし、知りたくもなかった。
† † †
リヒト様が新しい王妃を迎える。そんな知らせをアル様から聞いた時には驚きましたよ、えぇ。
私は、ぶらぶらと図書搭の中を歩いていた。
最近は“帰りたい”なんて気持ちも段々と減って行って、今ではずっとここに居たいと思う。
「ルリさん……?」
気付かなかった。
澄んだ声に視線を本達から外すと、青い何かを水に溶かした綺麗な色。
「カイルさん、こんにちは」
歌って踊れる万能騎手のカイル・アルジャンニさんだ。
今日も柔和な中性的な顔立ちを惜し気もなく晒している。
柔らかく微笑んでみた。
でも申し訳なさそうに目を逸らされた。ほわい……?
「どうか、しました?」
ひょこりと目を覗き込んだ。
「すみません、私は……気付けませんでした」
「カスファイノの件、ですか」
あぁ、本当に責任感が強いなぁ。きっとカイルさんは、カスファイノがここに探すフリに来たことに気付けなくて、私達に迷惑が掛かったと
思い込んでいるのだ、勝手に。この世界で仮面を被れば上手くやっていけると思った私を見ているようで苛々した。
でも仮面を被った方が上手く行くわけで……。でも私はここに来て仮面を被らない私でも存在理由があるのだと……。
だから――。
「えぇ、ですから……」
「黙れ」
初めてカイルさんに汚い言葉を使った。
カイルさんは思った通り、目を見張って絶句している。
「ごめんなさい。でも私もアル様も大丈夫だと言っています。だから――」
いったん言葉を切って続ける。
「もう悩まなくていいです……いいんです」
悲しい気分になってくる。
カイルさんは、目に涙を溜めてこちらを見ている。
綺麗だと思った。
「では~、」
半ば強引に話を切り上げて、走り去る。
後はもう慰めてもらおう!
うん。アル様に…。
ではでは、また明日。