【さん】異世界での生活
あ、こんにちは。
魔王様もといリュンヌ様の下僕やってます。今村瑠璃 15歳です。
この世界はグラル。
その一番大きな大陸を支配しているのがこの国ファンテゥーヌなのだとか……。
立派な大国ですね!玉の輿狙えるかもですね!
そうそう、王子リヒト様は顔はいいので婚約の催促が絶えないのだとか……。
職務をしているところを全く見たことがないので、本当に王子か?とも思ってしまうが……。
陛下はきちんとした方だったのでこの国はとりあえずあと数年は安泰だろう。
と、私はもらっためっちゃ布やん!これ!というこの世界の紙“クフ”に書き記している。だって忘れちゃいそうなんだもの。一応、リュンヌ様の下僕と言う名の弟子をしているので違う大陸から来た魔導師志望の娘と言うことになっているから、常識は覚えておかなければ!因みにこの国では黒い髪と言うのは存外珍しいものらしい。が、違う大陸の娘ならオーケー牧場って事で!と宰相様に流されました。この人のスル―スキルは半端ない!と書いている間にも私の肩から落っこちそうな、着せられたお洋服。
う~む。はっきり言って日本のファッションと大差ない!チューブトップ(黒)に膝くらいの腰がきゅっとなったプリーツスカートみたいなのですね。そこになんと!ショ―ルです。ポンチョっぽい物でも可。しかもふわふわ、落ちそう!なんでもこの国は腕を狙われる貴族が多いらしいです。……どんな国だよ。
あー、食事は珍妙です。とーても。
なんか、すべてが水っぽい。透明できらきらしてる。コンソメスープ的な?
主食はパンっぽいもの。名前は“クゥ”らしい。ご主人様から教えてもらった。
あとは、果物!これは美味!マジ美味!ドリアンぽいものデ―ンと来たから嗚呼、無情。とかおもったけれど中から出てきたのは……果物詰め合わせみたいなものでして、ゼリーのような触感のものもあれば、お餅のようなもの、各種取りそろえてあった。ま、まぁ中には七色に輝いているものもあったけれどね?
そこは……まぁ、ね?
「何をしている?」
「ぎょわくえっ!」
「……」
「あ、これはですね……この世界の常識は私の母国の言葉でですね……」
「……」
どうしたのかしら?ご主人様の深紅の瞳が半分しか開いていない。心なしか顔も赤い。酒か……?
「……ご主人様?」
「……寝る」
「へ、あ、はい……おやすみなさい」
寝ると言った割には私の後ろから動かない。
長身な背をかがめて私が書いている文字をじっと見つめていらっしゃる。
ああ、麗しい。
「借りるぞ……」
―――は?
ああ、ショールのことですか?どうぞどうぞ。絶対、“お前の使ったモノなど触りたくもない”とか言いそうなのに……。
「へ……ちょ!待てい!」
……普通おにゃのこを抱っこする時って、お姫様だっこと相場が決まってますわよね?
なのに何故、担ぐのですか?頭に血が昇って大変です。ぞくっと……いえいえ、失言でした。
――というか。何故私?
「あい あむ のっと でりしゃす!」
拙いひらがな英語を総動員して一生懸命“美味しくないよ?”と魔王様に伝える。
「……美味しそうだぞ、瑠璃は…」
―――!!!!!!
何故私の翻訳不可能なひらがな英語を解読できたのですか!?
というより、なんで英語が分かるんだ~~~!
ズルイ!ずルすぎる!頭良くて顔良くてって……あとは正確どうにかすればOKね!
ああああ!てふてふが飛びまわっているわ!なんてきれいなんでしょう!まぁ、透けるような羽ですこと。って頑張れ今村瑠璃!現実逃避はいけないよ!
「……ご主人様……酔ってます?」
「……黙れ」
あ~、酔いとは違う意味で顔が赤い。
これは、酔いが醒めて今自分がしていることに戻るに戻れなくなった、ということかな?
「っ……寝る」
「はい。おやすみなさい、魔お……ご主人様」
……ごめんなさい。お母様。私は節操がない尻軽ではないのです。決して。
ただ、魔王様のプライドを下僕として守るという使命感からの行動なのです。
決して、魔王様の抱き枕として一夜を共に出来るな!よっしゃぁ。とか思っているわけではないのです。
ああ、幸せ♪
ご主人様の腕の中は至福の一時でした。
ご主人様は逢った時から華奢だと思っていましたが、事実そうでした。
あ、あと。低体温~。ときどき居心地悪そうに抱きかかえ直すのも、ぐっじょぶ!
乙女心をくすぐります。
次の日、起きるとご主人様はいませんでした、が。
次会う時が楽しみでたまりません。キヒヒ。
何この子!とか言って引かないでやって下さいまし!
この子はただちょっとばかし欲望に忠実なだけなのです。
って全然異世界での生活について書けてませんね?