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【にじゅうきゅう】拉致られちゃいました☆

 

「姉貴を、シムをどこへやった!?」


こんにちは。

いきなり怒声から始まりました今回の瑠璃のstory。


「えー?子供の国?」


私がそう答えると目の座って居るリクシャル王子が、ぎろりと睨みつけてきた。

酷いなぁ~。さっきまでは“ルゥ”とか言って懐いてた癖に……。

本心を隠して、目的と下心の為に近づき懐柔する、汚い手だ。


まるで――私みたいだ。


「ふざけるなっ!お前がシムをっ!」


どう考えたらそうなる。

落ち着け14歳。


「と、に、か、く!私は無関係なのですが……」

「嘘だ!きっとシムを誘拐した後にノコノコとカスファイノにやって来て居座るつもりだったんだろう!」


もう一度言おう、どう考えたらそうなる。

王子は私を魔法という便利な代物で隠して、長い廊下をツカツカと歩いている。

なんだかリクシャル王子は、魔法の才がカスファイノの魔術師に勝る…いやそれ以上の凄腕魔術師らしいです。

メイドさん情報でした~。


「では、私をどうする御つもりで?」

「……とりあえず、シムの居場所を吐くまで監禁させてもらおう」


馬鹿かこいつ。

自惚れではないけれどアル様は私が1日でも消息不明になったら公務を放り出して探索すると思うのだけれど……。


「あのぉ……私、本当に何も……」

「黙れ」


うぅ、被害妄想も大概にしろよな。

大体、ファンテゥーヌ程の大国が何で童顔ロリっ娘を誘拐せねばならんのだ。

リクシャル王子にそう抗議すると『姉上は綺麗だからな』とわけわかめな発言をされ……。

遂に部屋に着いてしまいました。ぽすり、とベッドに投げ捨てられ……放置。俗に言う“放置プレイ”というやつですか?ぞくぞ……嘘ピョーン。

あはは……。


「それで、姉はどこにいる」

「そ、そういえば……姉君はリクシャル様の事をなんと呼んでいらしたのですか?」


苦し紛れに話題を変えてみた。


「あ?シャルとかそこらへんだな」


ふぅん。

普通にリクを言わないだけかよ、つまらんね。


「と、まぁ。その姉はどこにいる」


中々にしつこい。


「ほ、本当に知らないんです」「はぁ……しょうがない。姉と同じ顔の娘を拷問などしたくはなかったが……」


――え?

アレはまぢだったのですか?

私はMでもSでもないノーマルなのですよ!?

今村瑠璃、15歳。日本という平和な国に生まれ、拷問のごの字も分からぬまま生を終えれると思って生きてきました。はんぱなく怖いっす。最近は、仮面を被らずにいたので本心がするりと出てきます……。


「いや、いやっ……や、やめて、シャル」


……んなわけないだろ、15歳ナメんな。

リクシャル(様)が躊躇うようにわざと愛称で呼んでみる。

それに描いていた魔法をぴたり、と止めるリクシャル(様)。


「あ、あの……一緒に探しますっ!だ、だから…殺さないでっ」

「……っ!」


嫌でも、まぁ……。

まだ死にたくないです。ピチピチの15歳ですわよ?

「シムリア様……好きな人とかは?」


怖ず怖ずと聞いてみると、意外にも顔を真っ赤にして、


「い、いた……かも知れない」

「そうですか、で誰?」


こういう場合そういうスキャンダルが一番多いと思いますね。で、駆け落ちルート一直線。

「知らない、が……きっと叶わぬ恋だったのだな。いつも……苦しそうだった」


身分違いのラウ゛ロマンスか。王族にはありきなりな話なのだろうか?リヒト様も、えぇとリリス?様と身分違い、だし。


「では……駆け落ちでもなされたのでは?」


私がそう言うとうぐっ、と言葉に詰まるリクシャル(様)。

そして、暫くしたあとに、


「では、なぜ……相談してくれなかったのだろう?」


と、悔しげに呟いた。



† † †



「ねぇ、リト……」

「なんでしょう」

「愛して、いるわ」

「私もです」


暗がりの中で愛を語らう男女。それは一見、とても優しげな光景だけれど2人の顔は晴れなかった。


「私が居なくなっても、誰も探してくれないわ。お父様なんか私が居なくなって清々した、と思っているはずよ」

「……!そのようなことっ……」


反論しようにも、事実そうなのだった。カスファイノの第五王女など嫁にも出す機会のないただ国家の金を使うだけの存在。カスファイノの国王が疎むのも当然だった。それなら何故、産ませたのか?それは現国妃が国王の寵愛を受けていて、それが国妃の望みだったから。国王は、断れなかった。そして、その国妃に愛情を受けていて、しかも役に立てない第五王女など、要らないも同然。忘れ去られた離宮で少数の護衛と侍女に囲まれて過ごした。しかしある日やって来た、宝石商人の息子のギル・リトという北陸地方の青年に恋をした。

二人は相思相愛。障害は、ただ彼女がお飾りの王女だということのみ。


「行きましょう、心配のない所まで」


二人は手を取り合って駆け落ち。そんな王家のスキャンダルを国王が隠さないはずはない。こうして、二人の恋は無事、成就したのだった。

ぱちぱち。



† † †



「と、に、か、く!私は帰りますっ!」


というか分かってしまった。

コイツの心の裏が。

少し腹がたった。

だからくすり、と笑って、


「大層なお芝居ですね」


と言ってやった。

その時のリクシャル(様)の顔ときたらっ!愕然とした表情で何故わかった、みたいな顔をして。


「では、カス(ファイノ)の繁栄を祈って、クス」


カスだけいうというこの子供じみた厭がらせ。魔法切って日本語で言ったから多分、分かんないだろうが。


何がなんだか分からないと思いますが、次話で明らかになるはずです。


ではでは。読んで頂きありがとうございます。


2011.5.8 麦茶

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