【にじゅうご】始まる?
新学期だというに風邪をひいた麦茶っす。ハイ。
皆さんもお気をつけて。
本当に慌ただしい1週間。
慌ただしいほうが気が紛れてよかったけれど……。
「はぁ……」
ここで1分間に30回の割合で幸せを逃しているこの国の第一王子を見やる。
なぜかこの人はリリス様の一件があってから、悩み事があったり、愚痴を言いたくなった時に私に話しかけるでもなく勝手に人の部屋を逃げ場所に使うのだ。
「あああっ……!リヒト様何があったんですか!?」
近頃では溜息をあまりにも哀愁漂わせてつく王子を見ていられなくなって、声をかけてしまう。
前は、ピーチクパーチク話してくれたのだけれど、最近は、
「いや。ルリには言えないんだ。top secretなんだ」
英語で言えば何でもカッコ良くなると思うなよ。
バカ王子が……。
「じゃあ、帰れ…って下さい」
「ふふふ。今、本音出てた」
あ。ウザいかも……。
「いえいえ……ま、ア」
「転移。」
静かな声が聞こえたら~、全力ダッシュで逃げましょう~♪〈主にリヒト様〉
「あ……ア 」
リヒト様が驚いた顔になり、アルさまの名前を呼ぶけれど容赦なくその体は魔術の粒子とともに消えていく。
「瑠璃……ただいま」
「おかえり~アル様」
今はアル様の前でだけ敬語は外しているし、忘れてしまっていた自分のホントウの個性?というやつも取り戻せるように頑張っている。
アル様もなるべく優しくわたしに接してくれる。
とてもうれしいことには変わりない。
「あれも五月蝿いやつだ」
あれ……って。
仮にも一国の王子でしょう?仮にも。
最近、リヒト様は本当に煩わしいと、アル様はことあるごとに言う。
でも、心配も1%くらいはあると思う。
「そーいえば、カイルさんが慌ててたよ?」
私が最近よく見る光景の一つ。
カイルさんが必死になにかをしている姿。
ただし、必死というか優雅にしか見えないけれど…わかる。
目が焦ってる。
私も上手く真似できなかった時は、あんな目になってた。
「……そうか」
物憂げに呟くと、
「すまない。少し出る」
そう言うと来たばかりの私の部屋から出て行った。
* * *
「カイル」
私がそう呼ぶと分かり易い程、反応する肩。
なにを隠している。
「カイル……言え」
またしても細い肩が震える。
いつもと違うな……。
まず、俯いているその顔にはいつもの柔和な笑みはない。
焦りと絶望が入り混じったような表情。
「……っ。申し訳、ございません…私は、私はっ…無能です!」
ふるふると瑠璃が怖がったときのように体全体が震える。
カイルは従来責任感が強いが…ここまでカイルが追い込まれるなんて。
「何があった…言ってみろ」
「隣国…和平同盟を結んでいるカスファイノ国っ…第5王女がルリ様にっ……」
……??
「簡潔に言え」
その後。
覚悟を決めて様に私の目を真っ直ぐに射抜いたカイルは、こう言った。
「カスファイノの第5王女がルリ様に似ている。しかも今現在、第5王女のシムリア様が失踪なさっておいで、です」