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【にじゅうよん】†涙草は全てを失う†

最近、グラグラですね…。学校でも時々、おっきいの来ますし。


胡散臭い目で見られるのは、もう慣れた。

そりゃあ、一介の弟子なんかが姫様とお近づきになってる事自体可笑しいことだとは思いますけれど……。

いくらなんでも……そんなに睨まなくても……。

ま、いっか……。君達の敬愛している主様はアル様の判断によって生かすも殺すも自由なんだよ?

と日本語で呟いてみる。時々呟いていないと忘れそうになってしまうから……。


いい加減この長い廊下にも慣れた。

廊下を俯き加減で歩いていると、知っている声が聞こえた。


「ですからっ……なぜか、と…」


おかしいなぁ。

いつも余裕そうなカイルさんが切羽詰ったような声で何かを叫んでいる。

なんだろう?

私はリリス様の部屋から一番大きい建物、つまりは中央に差し掛かった辺りだった。

中央は真ん中に野球が余裕で出来るカンジのスペースがあって、そこからいろいろな道に枝分かれしている。

そこの隅っこの方を見るとカイルさんの美しい長髪が目に入った。

カイルさんは、お偉いさんと話しているらしい。

カバに形容するのさえカバに申し訳ないような男が、カイルさんを見上げていた。

私のおじい様くらいの年齢のきっとファンテーヌの古カバでしょう……。


「だがのぅ……それを種に……た……じゃないわい」


ま、私には関係ないか……。

そう思い古カバに付き合っているカイルさんに心から同情し、胸中で合掌した。そして、瑠璃はくるりと背を向ける。

早く……逢いたい。逢いたいっ!

小走りで大理石の廊下を走り抜ける。最近は息切れもしなくなってきた。


ドアをばたんと開ける。

そこには予想通りアル様がいて……、思わず顔がほころぶ。


「アル様……」


瞳を閉じていたアル様は、静かに目を開けた。


「姫は……?」

「あの人、馬鹿ですねぇ……」

 

つい、本音が出る。

が、今はもうアル様は、苦笑いしただけで終わるほど過去の人となっている。

私が呼ばれてから、もう2時間はたっている。

そのなかでアル様の中で何かの整理が付いたのなら私はうれしい。


胸元のペンダントを発動させる。

すると、リリス様と私の声が部屋に流れた。


【「リヒト様を殺したいのですよね?」

「っ…そ、そうよ…なによ、悪い!?」】


これだけでリリス様の運命は狂う。


「どうしましょう?」

「……告発する」




  ―――!


その時が来るのを待ち望んではいたけれど、やはり少し……怖い。人一人の人生を狂わすのは怖い。


「私が調べはじめた事だ……今まで明るみに出なかったことが不思議な程だ」


そう静かに言い切って、


「私が……狂わせた。私が、姫の、リリスの人生を狂わせる」


そうして笑った。

それはきっと、私に対しての優しすぎる気遣い。

魔王様が優しい?ありえねー、と思っていた私はどこにもいない。


「ありが、とうございます。でも、私も一緒です!」


私がそういうと窓を見ながら、


「感謝する」


そう、小さく呟いた。












それから1週間後。


慌ただしく王宮の内政が入れ替わり、リヒト様が憔悴しきった顔で国民に挨拶をして姫リリスが島流しにされたことは、後世に語り継がれる戯曲となった。

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