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【にじゅういち】†涙草は忘れられない†

造語?があるかも……。


 朝ですね。

 そこはかとなく憂鬱です。

 今村瑠璃です。ぴっちぴちの女子高生!

 え?なんで憂鬱なのかって? 

 姫の前で“奴隷”とかいっちゃったんですぅー。

 意味?辞書れ!(ファンテゥーヌのやつで)

 きっと本当の意味が分かるはずだ!

 

 

 

しかし朝は誰にも平等にやって来るものでして……。

ちょうど身体を起こした時に、見ていたかの様に現れたアンナさんのモーニングコール。


「おはようございます、ルリ。よく眠れましたか?」


これは毎朝の決まり文句。

それに私は、


「おはようございます、アンナさん~。はぃすっきりです……」


と、寝ぼけてはいるけれども、朝食の献立を予想する程の余裕がいつもはあるはずなのですが……。

今日は、


「はぃ~おはようございます……」


と言うのが精一杯だった。

久しぶりに味わう〈絶望感〉。学校に行きたくないときに、起きちゃったときの、あのなんとも言えない気持ち。

まさかここで味わう事になろうとは……。


「ルリ? 大丈夫ですか?」


聡いアンナさんには気付かれてしまったけれど、お腹がすいた、と適当な理由をつけてごまかした。ごめんなさい。

あの一件以来、私は自分で出来ることはしよう、と思い、まず厨房に行こうとしたのだけれどアンナさんに首を振られた。

なんでも厨房は、毒や薬を容れられる絶好の場所なので、雇う側も雇われる側もきちん、と信頼出来る者しか上げられないという。

アンナさんがそのあと申し訳なさそうに、


「ルリを信頼していない訳ではないのです、が」



ですよねー。

だから、食事は作ってもらっている。

この時、瑠璃は知らなかった。アルが厨房に瑠璃が行かない様に圧力をかけていたことなど。


「いただきまーす!」


今日の献立は、オムレツみたいな卵を原料としている焼いたものと、フルーツもどきシャーベットです。それからスープ。スープはいつもついて来る定番もはや味噌汁に見えてきます。

ああ、愛しのお米……。

食べたいのが日本人です。


因みに朝食を食べたら、アンナさんが食器を片付け始めるのでその間にベッドメイクを済ませて、アンナさんに挨拶して部屋を出ます。それからアル様を起こしに行こうかな~。

初めての試みですな。思い付いたが即実行!

“黎明の部屋”のドアをノックします……………返事がありません。

もう一度ノックします…………………返事がありません。


「アル様ぁ~!」


声をあげてみます。


「……………」


返事が、ありません。

どうしましょう?

もう……入ってもいいですよねぇ?

実は前々から入りたかったんですゎ。ホホホホ。


「アル様……入りますよ」


ドアの前で一通り身もだえるとカチャリと瑠璃はドアノブを回した。

そうして、半開きにしながら中を覗き込む。

やはりいつも通りモノクロで統一された部屋が目に映る。

乳白色の床に敷かれたふかふかの絨毯。

壁は一面真っ白でしかし家具は全て黒い。

天蓋付きの大きなベッドの中を覗き込むと――いた。


「ア、ル様?」


横向きに寝ている姿はとても可愛らしい。少し乱れた髪がなんとも色っぽい。時節つく吐息が――!エロいっ、なんだ!なんなんだ。いても見下す様に私をみる深紅の瞳も閉じられて、縁取る黒い睫毛はとても長い。透き通るような白い肌も、なんかもう――負けた気がする。

美形に囲まれて自己嫌悪に陥りそうになる日々を異世界にきてまで何故、体験しなくてはいけないのでしょう?


「アル様――!起きて下さい」

少し華奢な身体を揺すってみる。


「っ――」


それに声にならない何かをあげて、抵抗するように身をよじる。

(ああっ、可愛いっ)


「アル様~」


面白かったので、ほっぺを突いてみる。

すると嫌だ、というふうに眉を寄せた。

低体温の人は朝が弱いって本当だったんですね。

ぐらぐらと強めに揺すると、


「…………だ、れだ」


と返事をしながら不満げに瞼をゆっくりと上げた。

だんだんと隠されていた深紅に輝く宝石が姿を現す。

それは暗い部屋の中で綺麗に光って、とても綺麗で神々しかった。

「瑠璃です。私は瑠璃です」


妖しくに輝く紅に目を奪われながら、答える。


「…る…り、ぃ……?」



いつもとは違う掠れた声が甘えているように聞こえて――。

消えてしまう……。アル様が消えてしまう。そんな錯覚に陥った。思わずぎゅっ、と肌触りの良いシルクのアル様の寝間着を掴む。


「……!?」


幼い子供が驚いた様な顔が背中の向こうから現れる。

睫毛に縁取られた宝石が一際、輝る。


「教えてください」


知りたい。

この人をもっと良く………容姿とか、身分とかどうでもいいから……。

教えて。

カーテンを閉めきった、目に痛い部屋の中での、心地好い――沈黙。

隣には私のご主人。

最初見た時、魔王の様だと思った人。

リヒト様なんかよりも威厳がある、と思った。でも、その人には好きな人がいて……でもその人は姫様だった。

それを聞いた時、胸がズキリと針を指したように痛くなったのは――きっと嘘。

いつも私がついてる小さな嘘。まだ寝ぼけているアル様は、数分のあいだにまた寝て、また起きた。


疲れて、いるの?




「………なにが聞きたい?」




暫くして、私の疑問に答えるように、優しく問われた。

ひんやりとした手の平が、握り締めた己の手に触れる。 吃驚して目を見開いた私の網膜に映ったのは優しく微笑んだアル様だった。


「リ、リリス様と……出会った時の……事、とか……アル様の……ことを」


微笑んだアル様なんて見たことがなくて、もしかしたら……夢の中にまだ片足つっこんでるのだろうかと思いました。


「リィの事? 自分の事を私に聞いてどうする?おかしな奴だな」


その一言が残酷に鈍く光るナイフに見えた。

それは私がついていた小さな嘘を壊して、壊して切り込んできた。

そうか……私はアル様が――好きだ。

好きなんだ。どうしてこんなに単純で明確な事が分からなかった。認めなかった自分が悪い。

だからこんなに胸が痛い。

きっとアル様はまだ夢だと思ってる。

幸せだった頃の幸福な夢の余韻に浸っている。

だったら壊さずにそっと温めよう。

リリス様の穏やかな口調を真似て話し掛ける。


「そうね…じゃあ、出会った頃の私を教えて?」


私がリリス様を真似て言うと、満足そうに目を細めた。

ああ、これはリリス様にしか見せない顔だ。

この甘やかな幸福そうな顔は。この深紅にいつも渦巻いていたこの倦怠と諦めを取り除けるのは彼女だけなんだ。

――私じゃ…駄目なんだ。

明らかな敗北。


「リィは…気付いたら雇われてた……天使みたいに輝いてた」


アル様の口調は段々と子供のソレになっていく。

きっと夢の中でリリス様との昔を思い出してるんだ。私をリリス様だと誤解して――…。

突如言いようのない感情に捕われた。

アル様に気付いて欲しい。

私だと……瑠璃だと、気付いて欲しい。それはとても身勝手で、我が儘なアル様の幸せな夢を壊す覚悟が貴方にはあるの?


「……ない、わ」


震える声で呟けば不思議そうに眉を寄せた。


「どうした?――――っ!!」


微睡んでいたアル様が、驚愕した顔になる。

ばれちゃったかぁ……。


「申し訳ありません。暫し寝顔を拝見してしまいました」


いつもの通りに出来ていた筈だ。なのに……。


「よせ、惨めになるのは私だ……」


いつになく弱々しい口調でアル様が言う。

その瞳には倦怠と諦めがいつものように渦巻いていた。


「まだ……好きで…すか?」


震えなかった私は凄い。


「ああ、愛している」

きっぱりと断言した。

切れ目の瞳を妖しく光らせる我が主人は、まだ愛していた。



――最低な女の事を。



造語……辞書れ!

多分??

違ったらスミマセン(´・ω・`)

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