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【に】下剋上フラグ

出来たてほわほわです。

私は、今村瑠璃。

今現在持っている装備は、スルースキル(スルーも何も何を言っているのか分からない)のみ。

“毒舌”は異世界トリップによって使えないぞ!との事です。ハイ。

ご丁寧なご指摘ありがとう。

そしてそんなレべ1よりも弱いんじゃね?的私が今いるのは魔王様のいるダンジョンでございます。

ああ、魔王様そんなに睨まないで?新しい趣味に目覚めてしまうかもしれないじゃない!

私が魔王様の視線に身もだえ……、怯えているところに、王子サマは現れてしまった……現れて下さった。


「――?」

「お前は誰だ?」

「――――・――」

「私はファンテゥーヌ・リヒト」


矢継ぎ早に魔王様を通して言われる言葉。

そんなに焦らなくてもいいのに……どうせ、何処にも行かないのだから、行けないのだから。


「私は日本から来た今村瑠璃と申します。何故ここに来てしまったのかは貴方がたのほうがよくご存じのはずでは?」

「――――――」


くるりと王子サマだと思われる威厳を放っている御方に私の言葉を翻訳して告げる魔王様。

その答えに怪訝そうな顔になりながらも笑顔を絶やさず私に話しかけてくる王子サマ。

ああ、魔王様にこんなことをさせて天罰やら懲罰やらが下らないのだろうか?大丈夫か、レべ1以下勇者瑠璃よ。


「魔お……リュンヌ様、私奴(わたくしめ)に説明して頂けませんでしょうか?」


【レべ1以下勇者、瑠璃は“謙る(へりくだる)”を覚えた。レベルが0.1上がった】


「この国はファンテゥーヌ、お前は我らが召喚したわけでもないのにやってきた邪魔者だ」


わぁお、さっすが魔王様。

初対面でも躊躇なく相手を見下している!しかもそれが自然体だよ!魔王様。


「了承いたしました、ではこの国、ファンテゥーヌでの私奴の今後の立場をお教え下さい」


魔王様は大変、渋い顔をしながらも、


「王子はお前のことを気に入ったらしい、遺憾だがお前の立場は私の弟子、つまり下僕だ」


さも当然。いや置いてもらうだけ感謝しろと言う口調で魔王様は言う。


「分かりましたご主人様、疑問提起…何故日本語を操れるのですか?」


私がプライドを捨て、早くも自分を主人と認めたことに少なからず驚きを覚えているらしい魔王様。

プライドなんて生まれてこのかた持ったこと何てこれっぽっちもありません事よ?

しかし、これからどうしようか?都合のいい事に王子様はどうや私に興味を持っているらしい。なら……

ここは何も分からずに悲しいのに精いっぱい涙を見せずに頑張る健気な少女でも演じておきましょ?

そしてこの国で生活出来るだけの支援を乞い、あわよくば日本帰還の方法でも探ってもらいやしょう。

ああ、でも王子が私を帰したくない、といった場合、魔王様にお願いしてみようか。

彼は、私が自分と同じ空気を吸っているのでさえも嫌がるような気がする。

というか、この国、この世界に気体という概念は存在するのだろうか?

当たり前のように息を吸っていたが……、まぁ、そんな事を考えてもしょうがない!ガンバ、私。


「……お、……い、おい!聞いているのか?」


首に走る痛み。

どうやら私は魔王様に首を絞められているらしい。

ああ、堪らないわ。このSっぷり。ぞくぞくしちゃう!

ああ、私はこう見えてもMではないのですよ?ただ、苦しい、恥ずかしいといった感覚に対し、快楽を感じる人格なだけですの。そこまで重症なイタイ人間ではないのです。

美しく、冷たい魔王様の手。方手一本で私を持ち上げてしまわれるなんて……ぞくぞくする。

でも、私は何も分からずに悲しいのに精いっぱい涙を見せず以下略。を演じなければならないので目じりに涙を浮かべ恐怖の眼差しを魔王様に、SOSの眼差しを王子様に向けた。

それを見て、王子様が、笑顔を忘れて、


「―――!」


と強く叫んだ。ふふ、単純な人で助かる。

魔王様は、チッと舌打ちをし(様になっている)私の首から手を離した。

すぅ~っと、新鮮な空気を吸い込む。それから、魔王様に聞こえる音量で、


「……お仕置き、です」


と、微笑みをたたえて言って差し上げた。

いくら魔王様と言えど少女の首を絞めるなんてマナー違反です。

ということで、王子と魔王様の位置関係は良く分からなかったけれど、15歳にしては小柄な体系を生かして王子様に泣きながら飛びついて行った。まぁ、最初の出だしはこんなものでいいのではないのですか?作者。


「!」


王子は驚いていたようだったが、私が必死に王子の服を掴みしわくちゃにしてしまい、それに気づき謝罪した謙虚な少女を演じ、魔王様を恐怖の眼差しで見てがたがた震えだしたところで、王子は鋭い視線を魔王様に投げかけた。

王子の瞳は、若葉のような色。その色が針葉樹のように魔王様に突き刺さる。

あれ?意外に怖い人?


王子「―――」

魔「――――」

王子「―――!」

魔「……」


会話の後。

おおっ!なんと、魔王様が頭を下げ、私に謝罪なさった。


「すまなかった、女に手を挙げた事を謝ろう……赦してくれるか?」


とまぁ、下剋上フラグかしらん……?


「だが断る!……わけがありません、ご主人様。私はご主人様の所有物ですのでそのような謝罪はなさらなくてよろしいのです」


と、言って()()()


「そなた、……仕置きと言ったな……あれはどういう事だ?」


と問われたが、持ち前のスル―スキルでやり過ごした。


読んで頂きましてありがとうございます。

加筆修正致しました。2.12

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