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【じゅうよん】侍女さんの証言1*

亀更新なのに評価付けてくださってありがとうございますっ!

めさくさ嬉しいです(ΙεΙ*)


 

 今村瑠璃。

 15歳。只今、異世界とりっぷ中~(現在進行形で)



「あの……もういいので降ろしていただけませんか?」

「ルリ……酷い。猫かぶってたのか?」

「いやだって本来こっちのが素ですし……?」

「やけに大人びてるんだな~」


 と、つらつらと問答を続けているとキズナが右に曲がった。

 この先に扉があるのだろうか?


「ところでお前何しに行くの?」


 そういえば、この国ってどのくらいの勢力を持ってるんだろう?とか考えていた瑠璃はそんな質問を投げかけられて心臓が跳ねた。


「う~ん……秘密?」


 と、茶目っ気たっぷりに言ってみれば、は?とキズナが目を丸くする。

 ですよね~、とか思いながらもやっぱり本当の事は言わない瑠璃。


「ま~、いっか……!」


 考えるのは苦手らしいですね……筋肉馬鹿?

 と瑠璃のキズナへの評価が為されたのは言うまでもない。

 いくら小さいからと言って自分を俵担ぎで担いでいるのにも華奢な男性ならそろそろギブなはずだ。

 と、どーでもいい事を考えて暇をつぶしているとキズナがいきなり止まったので瑠璃は強かしたたにキズナの背中に顔面をぶつけた。


「あうち!」


 反射的に出てくる叫び声をスル―してキズナは、


「着いたぞー」


 と能天気な声を上げる。

 それに無性に苛立って、足をジタバタさせてみると、クスリと彼が笑って、


「年相応の所もあるんだな」


 と言いつつ余裕たっぷりで降ろした事にも苛立った。ので、降りた瞬間に足をふんずけてやろうと己の足を上げたところで、ひょいっとかわされた。

 くそう!



  † † †



 さて、世の中には苦手とする人間がいる。

 例えば瑠璃の場合はキズナのような裏表ない真人間である。リュンヌの様な冷徹な人間や、リヒトの様などこか偽りの仮面を被っている人間の方が、まだ扱い方が分かる。がキズナのような裏表のない真人間はどうしても戸惑ってしまう。

 イヤミも屁理屈も全ていなされてしまうからだ。

 しかも天然で……ピュアブラックとでもいうように瑠璃の様な根性ひん曲がった人間には映るのだ。



「じゃあなー」


 そう言って走り去っていくキズナの背中を見ながら、ほうっと息をつく瑠璃であった。

 ……さて行くかー。


「趣味がいい庭師さんなのでしょうね」


 とてとて、と可愛らしい足取りで歩く瑠璃は、小さいながらも可憐な花を咲きみだらせている庭に目をやりつつ侍女を探していた。

 華美ではないけれども、どこか人目を引く可愛らしさ、美しさを兼ね備えた花々が咲いている中を歩くのはとても気持ちがいい事だなぁ。

 しっかし早いとこ侍女さんに事情聴取しなければなー。


「もぉ~やだぁレイルったらっ!」


 ああ、聞こえてくるこの美声は一体何なのでありましょう?


「やるじゃない!ピア!」


 音をたてないように侍女さんたちがいるであろう方向に向かう。

 一際、高い樹が生えて日陰になっているところに彼女たちはいた。

 そこで3人ほどの侍女さん姿の人が集まって談笑していた。

 まさしくそこは彼女たちのテリトリー、男禁制の場所であろう。

 そこで木漏れ日を浴びながら微笑んでいる様はまるで春の妖精のようです。

 侍女さんの制服は、半そでシャツに黒い袖なしワンピースの上から腰巻の白いフリルがたくさん重ねられたエプロン。という出で立ちであります。

 一見地味な格好にも見えますが、フリルや可愛らしい金ボタンが付いていてシンプルな中に華やかさがあるというなんともぐっじょぶ!な恰好であらせられます。

 

「レイン~これ以上言うと~」


 一人、一人の顔と名前を一致させるために結構じろじろと眺めまわす。

 何も知らない第三者が今の瑠璃の姿を見たなら、完璧に通報されるであろう大変ねちっこい視線を瑠璃は妖精さんたちに送っていた。

 黒髪を腰まで伸ばしたお淑やか系の美人さんはピアさん。

 栗色のふんわりとした髪を肩まで伸ばした活発そうなイメージの方がレインさん。

 そしてさっきから一言も言葉を発せずに、ただにこやかに笑って、波打つ金髪を緩く縛っているのは……誰でしょう?

 さっきから名前を呼ばれもせずに完璧に傍観者を決め込んでいる。


「シャルからもいってやってよっ。ピアってやるゥ~」


 レインさんはからかうのが趣味みたいだ。

 この人ならなんでも一から十まで話してくれそう……。

 

「ねぇ……帰っても・・・・いいかしら?」


 和やかなムードを一変させたのがこの一言。

 この言葉を受けたレインはぴしりと固まり、今まで怒っていたピアも動きを止めシャルを見た。

 

「だって私、先輩から押し付けられた仕事が山ほどあるし、勿論自分の仕事もあるし……のろけを聞いてる暇なんてハッキリ言ってないのよ・・・・」  


 少々過激な言葉だが彼女たちにとっておじゃべりに花を咲かせる事より、侍女としての仕事を果たすのが本分である。

 シャルの言い分はもっともだ。


「……シャ、シャルの……」


 レインが震えた声で言葉を紡ぐ。

 瑠璃の経験上この後の言葉は『馬鹿』『阿呆』等々の言葉が当てはまる。

 ――ので。


「あのぉ……ごめんなさい」


 としおらしく言いながら潜ませていた身を明かすと、レインたちは吃驚したような顔になる。

 まさか、喧嘩の真っただ中にきた乱入者が自分たちよりも5、6歳は幼い少女が出てきたのだから。


「え!」

「どうしたの?」


 

 今まで無表情を保っていたシャルが問う。

レインが、


「女の子よ……」


と呟く。

ピアは唖然として口をあんぐりと開けています。

ウケます……っ。

クフ、と笑いを噛み殺し、


「何かネタになるお話……ありませんかぁ?」


さりげなく切り出す。

最初から、リュンヌ様達の事を聞いたら余りにも不自然ですからねぇ……。

まぁいきなり現れた少女に“ネタになるお話”を聞かれるのも随分珍しいですが……。


「ネタになるお話……?」


人一倍、警戒心が強そうなシャルが翡翠の瞳を細めながらわたしの言葉を反芻します。

をい、をい!

そんな眼差しをこの歳の少女に向けたら即泣きされますわよ。わたしも泣いた方がいいですかぁ?

正直ちょっと涙目だよう……!

「ご主人様が退屈だ、とおっしゃられましたので……」


と瑠璃が言うと、3人は納得したように頷く。

しかしシャルは、


「聞こえていたと思うけど、わたし今忙しいのよ。悪いけど……行くわ」


と言い残し、金の髪を優雅に降りながら、去って行きました。

「あっ!じゃあ わたし達が話してあげるわ」

「そうねぇ……」


と二人が考えはじめたので、


「ご主人様は王家のドロドロが好きなんですよぉ」


にっこりと笑いながら言うと、2人はう~ん、と唸った後、


「「あっ!」」


とこちらが吃驚する叫び声をハモらせて、


「「リリス様取り合い事件は!!??」」


とこれまた同時にわたしに聞いて来られました。

おぉっ!シンクロ率高ぇ!

名前からしてこれに違いありません。作った人のネーミングセンスを疑うところですが……。



取り合えず、聞いてみやしょうか!

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