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【じゅう】瑠璃


ごくり。と唾を飲み込みます。こんなに緊張したのは、初めて自分を偽った時以来です。

なぜなら今、この扉を開けた瞬間“死刑宣告”をされる可能性大!だからです。

きっと私の事を居ないように扱うのは序の口で“去れ”とか言って問答無用って感じで転送魔法使われるかもしれません。

あー、嫌だ、嫌だ。

開けたくないです。

でも後ろにはアンナさんが“速く開けろ”と無言の圧力をかけてきます。

ヤバい、怖い。

ということで、開けてしまった―――!


カチャ、と金属音がし、ゆっくりと、そりゃもう嫌がらせかと思う程ゆっくりと。


魔王が君臨していた――…。


深紅の瞳は苛立ちを隠そうとせず、細く白い指は一定のリズムで机を鳴らしていた。


「――っ、おはようございます……リュンヌ様」


迷ったけれど結局今演じている“瑠璃”はこの選択肢を選ぶだろう。

アルではなくリュンヌと。

話しかけてきた事に驚いたのかゆっくりと、本から顔を上げる。次の言葉が紡げません。

私には――もう。


「お尋ねしてよろしいでしょうか」


静かに時を刻む時計。

私には遅すぎるペースで。

しかし、おしとやかで、消極的な今の“私”には早過ぎるのかもしれません。


「―――なんだ」

「化け物が望む物は何だと、思いますか?」


これはペースの早過ぎる賭け。丁か、半か。

負ければ変わらず、勝てば何かが変わることでしょう。

暫しの時が流れます。

瞳を閉じる。

すると、聴覚が鋭くなるので時計の針のカチリと言う音が嫌にはっきりと聞こえます。

一体どのくらいの時間が流れたのでしょう。


さぁ、さぁ。速く、早く。

貴方の言葉で。

答エヲ聴カセテ――…。


リュンヌ様は深紅の瞳をこちらに向けて、囁くように、自分の秘密をこっそり話すときのように。

静かな、その美声で……おっしゃいました。





「――詰りの言葉」





嗚呼、そうです。

その通りでございます。


その時私の中を駆け巡ったのは恐怖や羞恥ではなく――歓喜。例えようのないほどの喜びだったのです。

「私の場合は……な」


やはり、やはり。

この方も何かを捨てたのだ。



† † †



幼少の頃、私は人の気持ちが痛い程、分かる……分かってしまう感化されやすい性質でした。周りにいる人間、それに留まらず本の登場人物にまでも。

それだけならまだしも気持ち悪くなったり、登場人物が肉体的に傷付けば自分までもが痛くなるくらいには重症でした。

私はこの性質のせいで人間が大嫌いになりました。

なぜなら小さい頃の私の周りには私を傷付ける、そういう嫌な存在しか居なかったのですから。

傍に寄れば、母はいつも帰りが遅い父への愚痴を零し。

父は、母の浮気について心を悩ませていたのですから。

祖母は、母の不出来を歎き。

友人は、異性への悲しみを私にぶつける。


つまり、本来寄り所となる居場所は私には存在しないも等しかったのです。

だから“私”は“私”を捨てました。


私は瑠璃として、ではなく本に登場するような“私”と言う存在になったのです。

そこにはどんな人格でも入り込める、という訳です。

つまり、瑠璃の人格以外入り込めるというわけ。

“瑠璃”は“私”を演じれば良い。

そう決めた日は“私”の誕生日でした。

その日からなりたいなぁ、と思った人格になる努力の日々が始まりました。

観察して、真似をする。

簡単な事でした。おかげさまで周囲からは性格美人と呼ばれるまでに至りました。

中には妬んで八方美人と呼ぶ人も居ましたが……。

私は何も感じない“人形”になったのです。

人間ではなく人の形だけの――モノ。


しかし、罪悪感は消えませんでした。


私は皆を騙している。

誰にも気付かれませんように、と願いながらも誰か気付いて、と思い続けていたのです。

だから『瑠璃ちゃん、すごいね!』と言われるより『騙してたんだ!裏切り者っ』と詰られた方がマシでした。


だから、私は、リュンヌ様の答に歓喜したのです。



――これが瑠璃。

全然分からなかったと思うので説明をさせて頂きます。

もちろんこれは私の文才がないからであります。

分かったに決まってるじゃん、と言うお方はすごいね、うん。

【瑠璃について】


彼女は小さい時に自我を捨てたんですね。

つまり自分を客観的に見るようにしたって訳です。

ある意味、凄いですよね~。


【ベリアル・リュンヌについて】


彼の過去は後々明かされる……はず、です!

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