【いち】異世界とりっぷ
はじめまして又は、お久しぶりです。
何だか突然ふっと異世界モノが書きたくなったので、投下!
生温い目でお読み下されば重畳です。
2011.02.12 麦茶
彼女は驚くほど突然にやってきた。
宝石の名を持つ彼女は、幼げな笑顔を皆に向けたのだという。皆は、その笑顔に惹かれた。
† † †
「……お腹すいた」
まだ20にも満たないであろう少女が、ぶらぶらと短い足を揺らして言った。
豪奢な部屋である。
その中心に大きな、大きな、ベッドが一つ。
大の大人が5人で寝転がってもまだ余裕があるほどデカイな、と少女は思った。
少女は闇夜の様な漆黒の髪と瑠璃色の瞳を持っていた。
あふぁ、と欠伸が出てくる。
目の前には、すらりとした美形男子……。それが睨みつけるようにこちらを見つめてくる。
あ、睨んでるわ。ようにじゃなくて。
「ご飯は〜?」
通じる筈もないのにね。
どうやら、というか案の定、ここは“異世界”であるらしい。どんなお決まり設定だよ、と誰にもつっこめないこの辛さ。何せ私の最大の武器である“言葉”が発動出来ないのだから。
「つか……ここ、どこですか」
私が日本語を喋るたびに怪訝そうに警戒した顔になる美形。
別に取って食う算段を立てている訳でもないのになぁ。
そんな様子でさえも絵になっている。これだから美形は。
しかし一体、なぜ私がこんなお約束展開に巻き込まれているのか、近所で吠える5歳児以下の脳細胞しか持ちえない私にはさっぱり分からない。
「―――、―――?」
ぼーっと美形を眺めていると何か質問されたらしい。
嫌、わかりませんよ?
貴方の国の、世界の言葉なんて……。
分かりたくもありませんよ?
「なんでしょうか?無駄に美形さん?」
どうせ分からないのだからいいだろう?
このくらい……勝手に召喚だか何だかを人に施しておいてこの御出迎えの仕方。
人に対する態度がなっていないとは思いませんこと?
「そこの女」
……。
今のは誰の声でしょう?なぜ日本語が聞こえるのでしょう?
目の前の美形も怪訝な顔をしていますが……?怪訝と言うより恐怖?
目の前、右、左。
誰もいないのですが?
「何故後ろを見ない?阿呆なのか?」
嗚呼、お母様。私は決してマザーコンプレックスになってしまった訳ではないのです、が。
私は幻聴が聞こえてきてしまったようです。ええ、そうですね。厳しい貴方なら“その程度のことで私に
話しかけてきたの?お気楽ね”と一笑するでしょうね。
「――、――――!」
目の前の美形が傅く。
私にではなく、私の後ろに居る人物に。さらさらの金髪がさらりと下に垂れる。いいなぁ、私の硬質の黒髪と交換して欲しい。
ギギギ、油が足りない機械のように後ろを向く。
そして、私の中の全ての勇気と理性をかき集め、
「どちら様でしょうか?」
――言えた。
私は魔王がいるのならこんな感じではないかな?と思う彼と対峙した。
目を閉じても伝わってくる迫力。
「べリアル・リュンヌ」
心を探るような深紅の瞳。そして漆黒と灰色が混ざる異様な髪色。
「ぁ……私は今村瑠璃、です」
最初何を言われたのか分からなかった。しかしそれが彼の名なのだ、と思い至る。
暫くの間放心してその美しさに見惚れていたかった。でも、場の空気ってもんが世の中にはあるじゃない。
私が名乗ると、彼――リュンヌは秀麗な顔を歪めて、
「何用だ……」
と不機嫌そうに言う。
――は?
それはこっちのセリフなんですけどー?と軽いノリで言えたのならどんなに良かったかとか。
どう答えるべきか?何故日本語が話せるのか?
口を開かない私に気を悪くしたのか、なんなのか、彼は扉の方に向かって、
「――」
と短く私には分からない言葉何かを言った。
すると……、扉から超絶美形が出てきたのであった。
お楽しみいただけたでしょうか?
いきなりの加筆修正。
会話文と文章に間入れてみました☆L(´▽`L )♪