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早熟の天才 三輪鉄矢編(4)

「成田さんは気難しい人なんですよ。昔は大会にも出ていたから性格はよく知っています。だからあの道場で育ったというのが驚きなんです」

一体これはどういうことなのか。心にまた新たなモヤモヤが生まれた。そしてまた別の都内アマ強豪の人物に、匿名という条件で取材をすることができたので記載しよう。

「成田さんは自分より強い若者には嫌悪感を抱くんです。特にアマ四段以上の子どもは嫌っていたでしょうね。出入り禁止にした子も知っていますよ。棋士になった××君とか」

なんと。あの明朗で安穏な成田にそんな事情があったとは。これはやはり成田に証言を聞かなければならない。合点がいった。あの時だ。有段者になってからの質問に対して奥歯に物が挟まるような物言いだったのにはそういった理由があったのではないか。

成田に電話で取材日の連絡をすることにした。しかし成田は藤野と同様、なかなか電話に出なかった。やはり後ろめたい何かがある。そこで事前のアポは取らずに直接らくらく上野将棋センターに出向いた。午前十一時十五分。まだ客も少ないであろう平日の午前中である。引き戸を開けると中には成田のほかに五人の客がいた。四人が二組になって対局をしており、一人は成田と会話をしている。

――こんにちは。お久しぶりです。成田さん。

成田はこちらに顔を向けず客との会話を続けるばかり。無視されてしまった。もちろん耳が遠いわけではあるまい。

――成田さん。この前の追加取材をさせていただきたいのですが。

「今は営業中だよ。取材なら時間外に来てくれないかい」

こちらに顔を向けず、話し相手の客と目線を合わせたまま声を荒げ気味にそう言い放った。穏やかな表情だったのが恐怖を増長させた。あの取材時の人物とは同一ではないのではと疑うような振る舞いに私は驚きを隠せなかった。何も返す言葉が見つからずこの日はそのまま退散した。いま執筆中に思うのは、あそこでもう少し粘り強く聞けなかったのかということである。いまなら「今日はお客として来ました」くらいは言えただろう。精神力の強さ、図太さ、確固たる強い意志。ジャーナリズムにはそういったものがないといけない。

さて、いよいよ重い腰を上げるときがきた。『アマチュア将棋将棋界大捜索!』で偶然知ってしまった三輪の住所を筆者が見逃すはずはなかった。これを手掛かりに三輪自身に突撃取材を敢行しようと思い立ったのである。だがそれは困難に困難を極めることはわかっていた。だからこそまず、らくらく上野将棋センターを取材したという経緯がある。

読者の中には三輪という名前を見てピンと来た人も多いかもしれない。実は三輪鉄矢は現在、あの大手財閥三輪グループの役員なのである。三輪グループは政治、マスコミ、広告業界ともがっつり関わっている天下の大企業。普通ならば一介のライターの取材に応じてくれるわけがないのは火を見るよりも明らかだ。そこで会社ではなく自宅を突撃する。昭和のマスコミらしくていかにも時代遅れだが、当たって砕けろだ。


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