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1話 もふライフの始まり


 五歳のわたしは孤児だった。


 拾われてからは奴隷のように扱われた。


 言うことを聞かなければ殴られる。


 これが今のわたしにとっての当たり前。


 孤児院にいたときにもう顔も覚えてないけど、ある男の子がいた。


 その子がこう言ってくれた。


『俺たち、大きくなったら結婚しよう!』


 そのことばがわたしにとってのお守り。


 いつかむかえにきてくれる、そう思ってた。


 でも、わたしには姉がいた。


 姉はわたしを助けてはくれなかった。


 当たり前だ。


 お風呂には入らせてもらえない。


 綺麗なお洋服もない。


 こんなわたしを助けようなんて思わないよね。


 村の人以外。


 姉たちが出かけてる間にわたしは村に出てしまった。


 嫌われる、そう思ってた。


 でも、違った。


 村の人達はわたしを大切に思ってくれた。


 すごくうれしかった。


 でも、ある時。


 ここに聖女がいるといってる人が来た。


 お母さんたちは姉を見せた。


「リリアでしょう!聖女といったらこの子しかないわ!」


 リリアは姉の名前だ。


 わたしもついていきたかった。


 でも。


「こんな子はもういらないんじゃない?私達にはリリアがいるし」


「そうだな。こいつはもう捨てよう」


 そう言い捨てられた。


 ごはんを食べさせてもらえなかったせいだろうか。


 意識が薄れていく。


 気がつくとわたし、ルナはもふもふの世界にいた。


ーーーーー


「あ、目、覚ましましたね。聖女様」


 前にはもふもふの犬がいた。


「もふもふ……!」


 もふもふもふ……


 ルナは犬をもふもふしまくった。


「あっ、ちょっと、やめてくださいよ。あははっ、くっ、くすぐったいですっ」


 もふもふもふ……


 それでもやめなかった。


 今のルナには何を言っても聞かない。


『もふスキその① もふもふのじゅうたんが作れる

もふマットを習得しました。』



「ん?何これ…?」


「やっとやめてくれましたね……」


 なんか疲れきってる……。


 もしかして……わたしのせい……?


「ごめんね……わたしのせいで……」


 犬はぴょこんっととびおきた。


 「全然っ!急にされてびっくりしましたけど、ちょっと気持ちよかったですから」


 よかった……!


「それにしても、もふスキを手に入れるなんてやっぱり本物の聖女様ですね!」


「何それ……?」


「それはぼくから説明するよ」


「あっ、神さま!」


 神さま……?


「っ!もしかして……本物の神さま!?」


「そ、そうだよ。本物の神さまだよ!さて、本題に戻ろうか。ルナさん、君は瀕死状態だったんだ。そんな状態で聖女に選ばれたんだ。そして、この世界のスキル、もふスキは聖獣をもふもふすると手に入るスキルなんだ。だから、この街でぞんぶんに聖獣たちともふもふしてくれ!」


 ………。


「わかった!」


「ところで、あなたは誰なの?」


 ルナが犬に聞いた。


「ぼくは聖獣のクラです。人間にもなれちゃうんですよ。ほらっ!」


 ポンッ!


 クラが煙に包まれるとなんと人間の姿になっていた。


「もふもふの男の子!しっぽ生えてる!耳も生えてる!この世界、最高!」


 そんなこんなで、わたしの人生は大きく変わった。


 よし、この世界でぞんぶんに楽しもう!


 




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