第4話 コードネーム《S-2》 file 松本京太
悪戯者との戦闘を終え、ベットに吸い込まれるかのように飛び込んで爆睡中の隊長の靖治を横目に松本京太は英雄の使命と【代償】について調べていた。京太はこの【代償】について過去にあったことを振り返った。
思えば京太(以下俺)の父の雄星は第82代英雄S部隊の隊長であった。現在のS部隊の隊長の靖治は今年で100代目の隊長であった。当時まだ小さかった俺は英雄についてはあまり理解をしていなかったが大好きな母からはこう言われていた。
「京ちゃん、パパはねすごい英雄さんなんだよ?」
「へぇ~パパってそんなすごいんだ」
「そうよ~?京ちゃんもパパみたいな強い英雄になれると良いね」
「・・うん」
英雄という存在を認識し始めたのは母が教えてくれたのもある。それ以外にもクラスメイトであったりテレビの特集など様々方向から英雄という言葉が飛び交うためそんなにすごい存在であるのかと俺は興味が湧いてきた。
父が帰ってくるといつもお土産を買ってきてくれる。それをいつも楽しみに待っていた。
「ただいま~!お!京太~!英雄に興味が出てきたんだって~!良いね~!京太と何年後かには一緒に仕事できるかな?」
「うん。してみたいな」
「よ~し!そのためには勉強頑張れよ?」
それから5年が経過し、俺は英雄への道を志すことを決めた。父の後継という名目で英雄になることになった。英雄育成学校入学後は父の特殊能力の研究や個人生成の特殊能力の作成にも勤しんだ。
「おっす!京太。能力の研究はどうなん?」
「おう靖治か。あまり進んでいないかな・・・」
「そっか~確か京太の父さんも英雄の先輩だったよな?だけど能力研究と言えど京太の父さんの能力って個性的だよな」
「そうなんだよな~かなり研究するの難しいんだよな~」
俺の父の特殊能力は全国で一人しか保持していない四重能力であるため研究には時間を費やしてしまう。四重能力は文字通り4個の特殊能力があるため能力の暴走だってあり得るのである。
「協力できることがあればいつでも言ってくれ。可能な範囲で手伝うことは可能だから」
「お。それはありがたいな。じゃあ松本雄星のことについて調べておいてくれ」
「分かった。調べてみよう」
「助かる」
靖治にも協力してもらい父の過去の経験や特訓、四重特殊能力の正常維持、能力暴走の対処方法などの研究をしている。
「少し休憩するか・・・」
時間を忘れずに父の能力の研究などをしていたため休憩することにした。研究資料などを横に置き、お菓子を用意しTVをつけバラエティー番組やアニメを見たりしてゆっくりと時間を過ごした。
「良い資料が無いなぁ・・・って、お前俺に頼み事しといてこれはどういう状況?」
「おぉ靖治。お前も一旦休憩しないか?」
「まぁそうだな。お、プロ野球チップスもらおうかな」
靖治は机の上に置いてあったプロ野球チップスを手に取り、選手カードから4枚の選手カードを獲得後、袋を開封し一枚目を手にしたとき緊急速報テロップが流れた。
『番組の途中ですが緊急速報をお伝えします。先ほど英雄S部隊に所属する松本雄星容疑者を殺人の疑いで現行犯逮捕しました。松本雄星容疑者は』
「は?」
「は?」
俺の父が殺人事件を起こす?そんな筈はない。英雄は悪戯者からみんなを守るためにいる存在だ。決して一般人に危害を与えたりはしない。
英雄規則の全文にはこう定めれている。【国民の自由と平和、地域の治安維持を目的とする英雄はいかなる場合であろうと非武装の民間人に危害を与えてはならない】と記されている。また、英雄が犯した犯罪は英雄部隊警務科が対応する。
「父さんが民間人に危害を加えたりはしない!」
「分かってる。俺はお前の意思を尊重する。今はこのニュースの行く末を見守るしかない。お前は何もしていないからな」
その後、ニュースの続報がありその内容は俺の一家の危機であった。続報の内容は父が衰えによる能力の維持が不可能になり能力暴走を引き起こし実家で帰りを待っていた母に危害を加えてしまったようだ。
「マジかよ・・・なぁ京太、この研究は止めにしないか?四重能力もあったら能力暴走だって起こる可能性もある。今はお前独自の特殊能力を開発してみたらどうだ?」
「・・・あぁ。そうするよ・・・」
その後、学長室に呼ばれ警察に事情を聞いた。自宅に帰った際に父が能力暴走が突如発生し四重能力の一種である身体分裂を母に使用し危害を加えたという。数分後に電話で自主を行い警察による取り調べ後に英雄警務科に身柄が引き渡されたという。
また、能力暴走を引き起こした父は警務科を通して英雄D部隊の能力削除を保持する常夏葵によって削除された。
「そうでしたか・・・やはりそんなことが・・・」
「あぁ。だが君は今後の学校生活には影響は無いだろう。多少何か言われるかもしれんがその事はこの後の緊急集会で話すことにしよう。だが今後の君の父さんの能力開発は中止だ。その代わりオリジナルの特殊能力を研究したまえ。良いね?」
「はい。父がご迷惑をかけて申し訳ございません」
「君が謝る事ではない。今後もオリジナルの能力開発に励みたまえ」
学長室をあとにし1時間後には緊急集会が開かれ、事の一件の経緯をマスコミや生徒に伝えた。京太に対しての誹謗中傷などは絶対にやめるよう呼び掛け、京太の今後の学校生活に影響が出ないよう学長や教職員らは必死に対応に当たった。また、集会後にはメディア向けの記者会見を行い京太への誹謗中傷をやめるよう呼び掛けるなどした。
この一連の事件により英雄育成学校は今後の3つ以上の特殊能力の保持を禁止した他、一切の研究も許さなかった。その後京太は周囲からは白い目であったり悪口を言う生徒はおらず逆に大変かもしれないけど頑張ろうぜという暖かい言葉を投げてくれる生徒がたくさんいて俺は安堵した。
そして卒業後、今に至る訳である。
「能力過剰による【代償】・・・それが能力暴走か・・・」
俺はあの事件以降、最愛の母を亡くしたが周囲から元気をもらい今は英雄S部隊として活躍している。あの時のみんなの支えがなかったら今の俺は無かっただろう。当時の学長やみんなには大変感謝している。
次回9月13日投稿予定