虎穴に入らずんば虎子を得ず
虎穴に入らずんば虎子を得ず、と中国の偉い人が言ったらしい。ざっくりとまとめると、貴重な物を手に入れる為には危険を犯さなければいけない、という意味になるのだが、これは実に金言である。金の言葉である。この金言を虎穴に入って手に入れたいくらいだ。黄金の板に彫られている文字である。
しかし古代中国とかけ離れた異郷である現代日本、ここにおける虎穴とは例えばどこであろうか。そして虎子とはなんだろう。とりあえ危険な場所に貴重なものがあることを想像すればいいと思うのだが、さあ、何が思いつくだろう。
まずは危険な場所だが、そもそもそんな場所が日本にあるかと言われると、それは例えば富士の樹海であるとか、桜島周辺であるとか、竹島なんかも危険かもしれない。尖閣諸島も危ない。あとは崖とか深い森であるとか細々とした地形くらいなものであろう。
とすれば、そこで得られる貴重なものとはなんだろう。富士の樹海では自殺ができるくらいで特にコレと言って貴重な生き物や植生があるというわけでもないような気がする。また、桜島周辺に何があるかと言えば、これも特に無いような気がする。あえて言えば桜島の写真が貴重かもしれないが、それは虎子というか虎穴そのものであるし、まずネットに出回っている。
そうなってくると、虎穴に入らずんば虎子を得ず、という概念は、ひとまず物理的な面ではあまり意味のないものなのだろう。
しかしそもそもことわざとは概念的、思考回路的であるから、ここまでの思考は少し遠回りというか無駄であるというか、つまり何の意味もなかったのかもしれない。まあでもその考えに至れたという意義はあったかもしれない。
では、概念的な虎穴に入らずんば虎子を得ず、について考えてみよう。
これは恐らく人生における成功だとか失敗だとかの話になってくるのだろう。とはいえ成功も失敗も個人差の激しい非常にあやふやなかつ感覚的かつ感性的な物なので、定義をはっきりさせておく必要があるだろう。
ただ、幸福という概念は数値化することができないので困る。ここは金本位制で行こう。お金が多い方が成功、少ない方が失敗であるという定義で考えてくことにしよう。
金本位の虎穴といえば、やはりギャンブルだろうか。そしてスポーツ選手、あとは……教師もそうかもしれない。
となれば虎子は、競馬で言う大穴馬だろうな。外れたら虎に食われるように財産が消える。スポーツだとやはりプロ入りか。やり過ぎれば大怪我をし、虎に体を直に食われるような物。とろとろと怠惰に目指せばたちまち虎に追いつかれて食われる。末路はマグロ漁船で重労働と言ったところか。教師はまあ比較的安全な虎穴であるかな。ブラックだとは言われるが成ってしまえば耐えるだけ、肉体的な怪我も少なければ、犯罪でもしない限り地位を追われることもない。精神を喰われぬよう気張るのみだ。安定した将来が虎子として手元に入る。
まあ、結局どれもしたくない。
あと厄介なのは、虎子のない穴か……
何のメリットもないのにも関わらず騙くらかされ虎穴に入る。馬鹿は痛い目を見るという諺は中国にあったかな?