LⅩⅩⅩⅧ USTOSUOTONIMAKOO (狼の統率)
「ありえねーだろ………先代の時の光景まんまになっちまうじゃねーか………」
ベルフェゴールは目を手で覆った。
「流石に無謀過ぎたか………」
生物兵器はこんなときも冷静だった。
「ウソ………でしょ………?」
レイは膝から崩れ落ちた。
このメンバーの中に、もう勝てる。そう思っていないメンバーはいなかった。
レイが刺した槍が有効打になったことで最高神の動きを封じられたため、もう神の駒が壊されるなんて最悪の事態は誰も予想してなかっただろう。
「ふざけんじゃねぇぞ………」
ただ、たった1人の邪神は諦めなかった。
「俺の術式には、確かに強制使役も含まれている。ただ、お前の言う通りこの遊霊が暴走するようならば、なぜここで俺達を襲わない?」
遊霊は、最高神の周りをふらついているのものの、決して誰にも危害を加えない。
「簡単なことだ………俺がまだ遊霊を使役しているからだよッ!
俺がどんな落ちこぼれであろうとなぁ、自分が出した狼の統率ぐらい取れるぞ。」
俺の魂が混ざった遊霊と、俺の血が混ざった遊霊。
これなら、術式がなくても手動で操れる。
「遊霊・赫・邪神の加護
遊霊・赫・竜王の咀嚼
遊霊・蒼・竜王の魂」
術式行使のための手段としてではなく、士気を上げるため。
自分の慣れであり、遊霊を動かすイメージとして。
意味のない言葉を俺はつぶやいた。
「「竜王の息吹」」
ベルフェゴールの力添えもあり、最高神相手に、会心の一撃を決める。
最高神の体をゴリゴリと削る小槍虫、砕かれた破片を飲み込み食らい尽くす遊霊、どんどん輝きを失う黄金の光。
その瞬間、最高神は〈天界〉の最上層でこの世から消え、姿を消した。
その瞬間、この世に君臨するトップは、最高神ではなくなった。
その瞬間、魔王軍はついに悲願の最高神撃破を達成した。
その時、最高神がいた場所に残っていたのは、黄金の光を放つ一つの神の駒だった。
最高神への謁見では、何でも願いを一つ叶えてもらえるという特典があった。
だが、俺は最高神に"死ね"と言わなかった。
いや、言っても叶う気がしなかった。
だから俺は願い事をする気なんて毛頭なかったわけだが、
「最高神を倒してしまった愚かな邪神とそのお仲間の皆さん。
あなた達の願い事を聞きましょう。ーーー規則なので。」
明らかに敵意むき出しな天使から、俺は願い事をする権利をもらった。




