LⅩⅩⅥ NERIHSONIHIJ (〈慈悲〉の試練)
俺が橋を渡ると、そこにいたあのは〈慈悲〉の天使ミカエルだった。
頭上に生えに書いたような黄色い輪があり、背中には2本の白い翼が生えている。
パステルグリーンの髪に、少年のような顔つき。
それでもとても長生きしているのだろう。数千年単位で。
「君………人間じゃないよね?とてつもない力を感じるけど………魔力とも違う。魔力は君よりも君の持ってる魔術具から感じる方が強いぐらいだ。」
そう声をかけてきたが、彼の言う事自体は何も間違っていない。
完璧な洞察力。こちらのことはすべて読まれていると考えるべきだな。
「あぁ。俺自身の魔力は大して高くない。アンタの言う通り俺よりも俺の持ってる“地図”や“指輪”の魔術具の方が確実に魔力量は多いだろう。」
レイにも言われたとおり俺は魔力が多いわけではない。
この“地図”の魔術具は、魔法が一切使えない俺の弱さを補完する為の魔術具と言っても過言ではない。
「魔法が苦手な君には少し難しい試練かもしれないが、今回の試練の内容はいたってシンプルさ。」
そう言いながら彼は翼を羽ばたき宙に浮く。
それがきっかけ、だったのだろうか。
雲の上には沢山の人が血を流して倒れている。
先程までは俺とミカエルしかいなかったはずなのにこの人たちは一体どこから………
「そうか。それが試練か」
「察しがいいようで助かるよ。説明の手間が省ける。
リミットは10分間。それまでの間に全員の傷を完治させろ。それが今回の試練。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
目測、ざっと200人ほどが倒れている。
10分間。つまり600秒の中でこれら全部を治療しろと言われたら、一人当たりにかけられる時間はおよそ3秒。
天使、というのは優しく無いようだ。
しかし、あまりにも凡人には過酷すぎて、神には簡単すぎる話だ。
あぁ腹立たしいこれが試練か。
あぁ腹立たしいアレほどの強者がそんな生ぬるいことしかできないのか。
あぁ腹立たしい完全に舐められたものだ。
「〈遊霊・漆・蘇生〉」
200体。とりあえず遊霊を出してみた。
遊霊は漆いその口の中に倒れている人々を飲み込み、治療の後に吐き出す。
治療が済んだ人々は黄色い光になって消えていく。
数体の遊霊は仕事がなくなって帰ってきた。
だが、それで終わりではなかった。
また新たな怪我人が現れ、血を流して倒れているのだ。
「おい、まさか200人で終わりだと思ってたのか?あと800人は治療してもらう。
そしてその術式………最高神様から聞いたことがあるような?」
まぁいい、と考えることを諦めた様子のミカエルは高みの見物を続ける。
800人の怪我人を目の前にして救いの手つ差し伸べない天使に反する形で、俺は試練に立ち向かう。




