ⅩⅩⅩⅨ IHONA(あの日)
「というか、あの日俺が死んだだろ?」
「あぁ。あの時の後始末はかなり大変だったのだからな…」
「あの時の記憶が少々曖昧でな。話してくれないか?俺が死んだときの話を。」
俺たちは酒を飲みながら話していた。俺が死んだあの時の話を。
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あれはある日のことだった。商談でロクロスのとある企業にサタンが出向いた時だった。
商談も無事に終わり、外に出たのだろう。
その時、かなり大勢の人間がサタンを囲んだ。
革命軍と呼ばれる、ロボットを人間と同列に見ることに反対し、『ロボットを人間が支配しよう』
という思想のもとに活動する組織だった。
サタンはは商談に出かけただけだったが、こういった連中が現れるためかなりしっかり目に装備品で体を固めていた。
お気に入りの槍と、ダガーと、散弾銃。
さらに黒革コートを着て、神の駒も持っている。
が、サタンはこれらの装備を一切使わず、己の脚力のみでその人込みを飛び越えてそこを抜け出す。
だが、そうなることが分かっていたかのように、そこには一人の男が待ち構えていた。
「あぁ、やっとやってきた。貴様をここで討てるのをずっと楽しみにしていたんだ。」
「〈七人の邪神〉の掟には『無意味な殺傷をしない。』『互いに事業や政策の邪魔をしない。』ってあった気がするが?」
「無意味な殺傷でも事業の妨害でもない。
この世の秩序を乱すものをつぶすことは必要だ。
それに、これ事業の邪魔でなく、我々の世界を守るための行動だ。」
サタンの発言に耳を傾けないルシファーは剣を抜いて俺に斬りかかってくる。
サタンは即座に〈闇からの贈り物〉で槍を取り出し攻撃を防ぐ。
「ここじゃ周りに迷惑がかかるし、無味な殺傷が起こりかねない。ブレストフィストとロクロスの国境付近にだだっ広い大地があったはずだ。いったんそこに場を移さ…グハァ!」
サタンが地図を取り出そうとすると、ルシファーは俺の腹を刺して言った。
「お前は〈七人の邪神〉としても、この世に存在するものとしても、最強と言えるだろうな。
そんな奴が企業を立ち上げビジネスにも成功して、いろんな力を得た。」
だが、と付け加えて彼は言う。
「貴様を殺さなければ貴様は必ずこの世界を自分のものにしてしまうだろう。
そうなる前に駆除しなければならない、そのためにこのタイミングを選んだんだ。
武器を使わない。商談の際イメージを悪くできないという無防備な状態で、奇襲を行えば確実にお前を討てるんだよ。」
サタンは膝から崩れ落ち、その場に倒れた。
「おい、わが友に何をしようとしているのだ?」
そこに現れたのは、サタンの古くからの親友であるマモンだった。
「おぉ!敵が増えてしまったなぁ。まぁ、所詮死にかけの第3位と完全装備でもない第5位だけだ。
それに対し俺は第2位。すぐに始末できるだろう。」
”序列”。
〈七人の邪神〉には強さを表す順位のような形で”序列”が存在する。
ルシファーはその中で最高位の第1位。サタンは第3位。マモンは第5位。
この状況で危機の回避は難しい。
サタンはもう死にかけだ。治癒魔術を使うことはあまり得意じゃないマモンは、治療をあきらめて彼の遺品を集める。
コートと神の駒、そして地図。
替えの利かないものだけ回収して〈闇への贈り物〉で収納する。
「おまえの荷物は預かっておいてやる。そして必ず生き返らせる。お前が神としての力を取り戻すことができたら俺のところに来い。「神の怒りを3つ返してもらいに来た。強欲な男のもとに連れていけ。」と門番に伝えれば通してやる。」
そういってマモンはサタンの魂を安全な異世界”チキュウ”へ避難させた。
そして、サタンの地図のうちの1枚を取り出し、ルナフェジオに帰ったのだ。
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話を聞いた俺は正直かなり驚いた。
マモンがそんな危険な橋を渡っていただなんて思ってもいなかったからだ。
「マジか…それって結構危なかったんじゃ?」
「危ないとかいう次元の話じゃない。
ていうかお前、チキュウから帰ってきてからバカになったか?語彙力もなくなっている気がするぞ。」
「失礼な。地球の文化を吸収したといってくれないか?」
「ならチキュウは平和ボケした馬鹿なやつばかりいる場所だということなのだな」
ぶっ飛ばしてやろうか。
「今日はありがとう。だが、俺は明日ここを去ろうと思う。」
「何故だ?お前ならずっとここに居座ってくれても客人扱いできるが?」
「かなり魅力的な話ではあるが、飯と寝床は間に合っている。それに、」
俺は少しこの話をするか迷ったが、
「それに?」
というマモンの声を聴いて白状することにした。
「抵抗軍と革命軍。その2つの組織をぶっ壊すからだ。」




