CⅧ ⅩⅧ NERIHSONUOAM (魔王の試練 ⅩⅧ)
「〈Ⅰ・邪槍〉・並行・〈Ⅱ・自動守護〉・並行・〈Ⅲ・小槍虫〉」
以前レイにしたように、自動守護を着ぐるみのように扱い、承認の秘宝の攻撃から身を守れるようにした上で、生物兵器の分身と小槍虫で牽制しつつ、邪槍で決定打を決める作戦だが………
「〈Ⅲ・塵槍虫〉」
ごまようなサイズの槍が飛んでくると、神ですら反応は困難だ。
ただ、〈邪神〉の完全劣化である〈魔人〉の術式を邪神にぶつけたところで何もできない。
「何をしよーとしてるのかは知らねーけど、邪魔するよーなら消えてもらおーか。」
小槍虫を1本ザガンに向けて飛ばすと、彼は腰を曲げて倒れた。
「自動守護すらうまく扱えないやろーが、小槍虫なんて複雑なもん扱えるわけねーだろ」
生命力も原動力も魔力もほとんど残りカスの状態であるザガンを気にすることはなく、ベルフェゴールは承認の秘宝に攻撃を開始する。
「生物兵器!まずはそこをうろちょろしててうっとーしー小さいのを潰していくぞ。」
小槍虫を使い、ベルフェゴールも殲滅を開始する。
宝石一つを壊すのは決して難しくはなかった。
ただ、数が膨大すぎて時間がかかる。
たかが数百ではあるが一つ一つを壊していきながら本体からの攻撃を防がなければならない。
個々の宝石が受け持つ光が少なくなった分、光線一本当たりのダメージ量はおそらく大きくなっている。
そう、太さも速さも威力も強化されている。
そんな状況で全てを避けきり捌き切るのはなかなか難しい。
ベルフェゴールの肩スレスレに一本の光線が飛んできた。
「いや、危ねーとかいうレベルに話じゃねーぞ………って!?」
その瞬間、ベルフェゴールの目の前には音速を超えるレベルの速度で光線が飛んできた。
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〈邪神〉ベルフェゴール………いや、今は〈聖神〉になったんだったか。
あいつの力は底知れなかった。
今までずっと〈怠惰〉だった分、どれだけ術式を行使しようが使いきれないレベルに原動力がたまっている。
その上、実践経験や身体能力でもザガンに勝っている。
もう勝ち目はない。〈新たなる神〉の端くれであるザガンとしては認めたくないことだが、仕方ない。
今考えていることはただ一つ。
『今ここで何もせずに命を落とすより、何か自分の死に意味を持たせたい』
それだけだ。
「メフィストフェレスの前でこんなこと言ったら〈傲慢〉だって言われるだろうな………こんな出来損ないが、自分の死に価値をつけてくれなんて何もできなかった〈怠惰〉な俺には〈傲慢〉な話なんだろうな………」
それでもいいと、そう思ったザガンはベルフェゴールの目の前に飛んできた光線目掛けて残る力の全てを振り絞って駆けつける。
「精々足掻いてくれ………いや、他の〈魔人〉だけじゃなく、〈新たなる神〉全員をギャフンと言わせてくれ。
〈聖神〉ベルフェゴール様…………」
その時、彼の死は『神を助けた』という華々しい価値を持った。




