9話 9/4 2人目の客、値切るのは標準搭載
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ギースが帰って暫く考えていたのだが、魔力の癖の相性はどうだったのだろうか。一度で解るものではないから黙っていたのか、それとも次回の情報料なのか。ちゃっかりとしている。こちらから聞かねばいつの間にか情報料を取られてしまいそうだな。
まあ利益は出ているので良しとしよう。これで人を雇えば人件費などが発生してくる訳なのだが、それのやりくりもしなくてはならんのか。なかなかに経営とは難しいものなのだな。
なんとなくで魔法屋を始めた訳だが、今後が上手くいくかは客次第だ。まずは認知してもらわんことには始まらない。魔法屋の看板は出ているが、それ以外にも必要なのかもしれんな。
カランカラン
なんだ? ギースが買い忘れでも……違うな。新しい客だな。今度は魔法使いという格好だな。イメージ通りの魔法使いの格好だ。フード付きのローブを着ている。魔法使いと言えばフード付きのローブだろう。色はピンク色な訳だが。
「いらっしゃい。まだ開店して浅いのだがな。良く見つけられたものだ」
「……魔法を見ても?」
「ああ、構わんよ。ゆっくりとみていってくれ」
顔は解らんが、女性だな。声がそうだった。魔法使いに性別など関係ないというか、冒険者に性別など関係ないのだよ。強ければ冒険者だ。魔法を使えれば魔法使いだ。そういうものなのだよ。
流石に軍に志願するものは男が多い訳だが、魔法兵はそうとは限らん。男女比は同じくらいだったはずだな。魔力が多い少ないは性別は関係ないようだ。
さて、なかなかの速度で読み込んでいくな。そこは風属性の魔法を置いてあるところだからな。彼女の所属するクランもワイルドボア狩りをするのだろう。この時期は特にそうだからな。
ワイルドボアは所謂害獣な訳だな。農作物を根こそぎ持っていく奴らなのだよ。好きなだけ食い荒らして行くからな。ゴブリンの比では無い位に害が酷い。
ワイルドボアはまあイノシシな訳だが、何と言ってもでかい。高さで1.5m程あり、長さで言うと5m程になるそうだ。冒険者や軍はそんな巨大な生物と対峙しなければならんのだよ。
私には無理だと悟ったさ。そんなもの怖くて仕方がない。ワイルドボアは牙は小さいとはいえ、突進だけでも厄介だ。盾で受け止めても死んでしまいそうだ。
「……魔法が特殊。解説を」
「どの魔法だ? ……ああ、これか。これは風属性の魔法だな。ゴブリンの形を模した風塊が25、目標に突撃していく魔法だな。速度はそれほどでも無いが、威力はまずまずだし、追尾も出来る。ワイルドボア相手にも負けはしないはずだ」
「……形がゴブリン? 追尾するのは嬉しい。ワイルドボア狩りにも使える」
「そうだな。まずまずの魔法だと思うがな。ただ、どのワイルドボアを狙うかは魔法の勝手だ。運次第では、1匹のワイルドボアにすべてのゴブリンが群がる可能性もある」
魔法は全て任意で動かすわけでは無い。基本はオートだ。だから運が悪いと突撃対象が被ってしまう。頭のいい魔物の魔石や血を使えば解らんがな。
「……それは仕方がない。他の追尾の魔法とも変わらない。形がゴブリンってだけの普通の魔法?」
「だな。普通の魔法だ。ああ、空は飛べないからな。何と言ってもゴブリンだからな。空を飛んでいる魔物を相手にするのであれば、違う魔法の方が良いな」
「……大丈夫。ワイルドボアを相手にするから。それとこれの違いは?」
違いは殆ど形だけのはずなんだがな。解説が必要であれば解説はしよう。認識のずれがあっては魔法を使ってコレジャナイ感が半端じゃないからな。
「ん? こっちは形がワイルドボアだな。追尾もするが、追尾が弱い。その分威力は高いが、どちらかと言えば矢に近い魔法だろう。速度と威力に重点を置いた魔法だな」
「……ゴブリンが球、ワイルドボアが矢と考えても良い?」
「その考えは捨てた方が良い。球や矢は空も飛ぶが、これらは空を飛ばん。形は大事な魔法の要素だ。ただ、地上でしか使えん代わりに、範囲は広いがな」
ゴブリンは空が飛べんのだよ。ワイルドボアは空が飛べんのだよ。そこは形に縛られる。空への攻撃手段は空を飛ぶ魔法を選択しなければならんのだよ。
「……成程。この2つを買ってみる。お代は?」
「中銀貨2枚だ」
「……相場通り。でも詠唱文を見る限り高い気がする。それは何故?」
ああ、散文閥と比べているのだろうな。それよりは高いのは仕方がないんだよな。材料費の関係があるからな。どうしても少し高くならざるを得ないんだよ。
「魔法の作り方が違うからな。皮紙を見てもらっている通り、ある程度の大きさが必要な作り方をしている。相場的にはそれほど外していないつもりだ」
「……そう。残念」
「魔法使いは値段を負けさせることが普通なのか?」
ギースも1番目の客だろうと、情報料だと何かと値切ってはきたが、魔法使いはそれが標準なのだろうか。私は違うような気がするのだが。魔法使いは金払いが良いと思っていたのだがな。
「……安く買えるのであればそれに越した事は無い。クランにも負担がかかる」
「確かに魔法は安くは無いな。だが仕方が無いだろう? 便利な物には違いが無いのだから」
「……言いたいことは解る。これお代」
「確かに。ああ、一応名前と所属を教えてくれ。今後も会う事があれば困ることもあるだろうからな」
ギースの時は聞き忘れていたからな。二度と来ない可能性もあるわけだが、どのクランが関わっているのかを把握しておいた方が良いだろうからな。
「……クラン「カナリアの鳴き声」のアリアナ。これで良い?」
「ああ十分だ。またの利用を待っている」
さて、何と2人も客が来たぞ。早いな。まだまだ認知はされていないというのに。もう2人目か。魔法屋が足りていないというのは本当の事なのかもしれんな。あくまでも情報だったわけだが。
魔法屋が足りないのには理由があるからな。魔力の癖が合わない所の魔法は基本的には使わない。余程の理由がない限りな。その店だけの専用の魔法があれば別なのだが。
私の店にもそういう魔法を置きたいものだな。……索敵魔法は無しだ。あれは駄目だという話だったからな。その魔法しか作れんのは苦痛でしかないのだよ。売れてもそれでは楽しくないからな。
楽しみは必要だ。魔法屋をやる以上、何か楽しみが無くてはやってられんさ。私は何を楽しみに魔法屋を続けていこうか。金は一生分はあるつもりなんだ。それ以外の楽しみを見つけよう。