7話 9/2 ギース視点 斥候殺しの魔法、至れり尽くせりの魔法
OFUSE始めました。
https://ofuse.me/rukea
ついでにブログも始めました。好きなことをつらつらと書いていく予定。
https://rukeanote.hatenablog.com/
さらについでにTwitterも始めました。変なこともつぶやく可能性があります。関係ないことも沢山つぶやきます。
https://twitter.com/rukeanote
向かった先には66匹のワイルドボアの群れがいやした。……内心ほっとしているでやす。これでいなかった日には目も当てられないのでやす。いることは解ってやしたが。
「いたぞ! 魔法使いはまず魔法を使え! 一気に数を減らす! その後に突撃だ!」
「はい! 『桃色輝く、春嵐の如く。吹き晒せ永久に。青春よ今、弾丸列葉のコウノトリ。熱波の弾薬、過ぎし日の夕暮れ』」
「任せろ!『エック、トラトチキ、サラサベリエテ、コールレント、トレイアキクチ』」
「では『風通る道は、我が道と成りて、吹きすさぶ。唐笠踊りの紅葉葉弾。現に増し増せ金風。雁はとうに過ぎ去った』」
あっしは3番目ですな。詩集閥の詠唱がまだ短めな物を選んでやす。威力、範囲共に大きく、木の葉の弾丸が32、切り裂きながらワイルドボアに痛烈なダメージを与えていく。
「突撃!」
「「「「「おおおおおお!」」」」」
惜しい所は追尾が少し弱い所ですな。無駄打ちが多い。これだけの数がいれば、大体は当たりやすが。上に抜けていくものについてはどうしようもないでやす。
140もの人の波がワイルドボアにぶつかっていく。各所各所で2対1、3対1を作って対処していく。魔法使いと斥候役は周辺の状況の観察が仕事でやす。乱入がないかを見張るのが仕事でやす。
乱入には3種類あるのでやす。1つは他のワイルドボアの群れが助けに入るパターン。これが一番対処しやすいでやす。魔法を撃って数を減らしつつ、戦闘職の方々に倒してもらう。
2つ目はワイルドボアを狙って他の魔物が突っ込んでくるパターン。ゴブリンだと対処しやすいでやすが、ウルフだと魔法を切り替えなければいけないでやす。
ウルフは風属性でやす。風属性には火属性をぶつけるのが良いと言われているのでやす。今回持ってきている魔法は一応全属性ありやすが、対処に困ると言えば困るって感じでやすかね。
3つ目が一番厄介なのでやすが、人間が乱入してくるパターン。分け前を寄こせと援軍に来る事でやす。これの対処が一番面倒でやす。東北東に行っていた場合はあっしらが乱入者になるのでやす。
善意の乱入と悪意の乱入がある故に、対処が難しいのでやす。当然の如く、分け前は用意しなければならないのでやす。仮に絶対に勝てていたとしても、乱入者には分け前を渡さないといけないでやす。
それがギルドで決まっているからでやすね。戦ったものには報酬をくれてやれというのがギルドの方針でやす。乱入されたくなければ早く倒せという訳でやす。
まあ今回は……乱入は無さそうでやすね。近くに群れはいるものの、こちらには気が付いて居ないのでやす。歩いて20分くらいの距離がある故に大丈夫でやす。
しかし、あの群れも欲しいでやすね。あの群れを食いきればワイルドボアが100を超えてくるのでやす。狩りに出て3時間30分。帰り支度をするいい時間でやすが、あの距離なら……。
「「「「「おおおおおおおおお!」」」」」
終わったでやすね。66の戦果に負傷者は10数名。上出来でやしょう。荷車に乗せねばならない負傷者はいなさそうでよかったでやすね。
皆が嬉々としてワイルドボアを積み込む。それはそうだろう。荷車が全て使われるとは思っていなかったでやすからね。大抵は何処かの乱入が入るもの。同じ足跡を追ってきてやすからねえ。
「リーダー、まだいけるでやすか?」
「ギース、どうした? 今日はもうこれで帰るぞ」
「近くにもう一群れいそうでやす。魔法でこちらに向かわせやすので、迎撃をお願いしやす」
「規模はどの位だ?」
「上手くいけばの話でやす。恐らくは40はいると思うのでやす」
「今日だけで100以上の戦果になるか。そうだな。駄目で元々だ。頼めるか?」
「お任せを」
さて、欲張りは何処までも欲張りでやす。あの店主の旦那のいい分ではウルフが敵を追い立ててくれるのでさあ。やってみる価値はあるのでやす。
「では『吠える風狼、風下にて、敵を待ち受けん』」
詠唱すると20の風属性のウルフが走って行った。目標に向かって一直線に行ってしまったが、これからどうなることやら。しばらく待ってみないと解らないでやすな。
ワイルドボアを積み込み終わり、少しばかり休憩していたところに敵が現れた。まあ解っていたことでやすが。こうも簡単に敵を呼んでくるとは思わなかったでやすが。
「来たぞ! 今日は大量だぞ!」
「「「「「おおおおおおお!」」」」」
「『木枯らし木枯らし空っ風』」
「『クッテ、ミレエレイレツイオ、アアオクジジュエリツ、キキーテレ、ララ』」
あっしは風属性のウルフを観察する。風弾を吐きながら追い立てて見せるのはウルフのやり口。実際のウルフは吠えるだけでやすが、みごとにまあウルフの特徴を掴んでいる。
後は先頭の足を狙うのがまたいやらしい。速度が落ち、突進の威力も削いでくれる。至れり尽くせりの魔法なんぞあっても良いものなんでやすかねえ。
乱入者の気配は無し。この魔法も大概にしておかしいのでやすが、効果時間が長いのが不思議な所でやす。普通の魔法とは違う作り方をしているとは言っていたでやすが、魔法も型破りとは。
まあこれで暫くはクランも維持できそうでやすねえ。今回の狩りは大成功。乱入もしないさせないで優秀な部類でしょうや。毎回こんな感じだとは思わないでやすが。今回が出来すぎでやす。
流石に帰る頃には魔法が切れてやしたが、あの魔法は斥候いらずになりそうで怖いでやすね。……斥候の読み合いが始まるでやす。なるべくなら普及はさせて欲しくないでやすね。
良いクランと悪いクランがありやすからねえ。マナーも弁えず、乱入してくるクランの多いことと言ったら。あっしらも人の事を言えた口ではないでやすが。
報告が必要でしょうな。魔法は便利で使いやすかったでやすが、便利すぎて普及はさせないで欲しいと伝えなければならないでやす。こっそりと売ってもらうようには交渉するでやすが。1番の特権と言う奴でさあね。