401話 10/21 ケイト来店
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魔法屋を志望する子供は割と少ないのかもしれない。そう思う様になってきた。何故少ないのか、それは、魔法使いが一番かっこいいからである。単純明快な事ではあるんだが、事実だろうと思っているんだ。だってそうだろう? 大抵は魔法を使えたことを羨ましがられるんだから。
基本的に、魔法が使えるのかどうかを試す機会がある。私も試したしな。初めて外に連れていかれたのも、その時だった。そして、上級魔法を使えなかったのもその時だ。
皆が見ている前で魔法を披露する。使えたら何度も使って魔力の量を計る。それを同じ年頃の子供たちが見てどう思うか。かっこいいと思うだろう? その子供は、教会でのヒーローになるんだ。
沢山魔法を使えた方が偉いみたいな感覚に陥るんだろうと思うんだよ。実際はそうではない。初級魔法であれば、25回以上使えた場合のみ偉くなれるんだ。平民が偉くなる、立場が上級になるのは、魔法兵になるしかないんだよな。兵士では下っ端だからな。
間違っているんだが、子供的には魔法を使っている方が楽しいだろうし、魔法使いになりたいという気持ちも解るってものだな。本当は魔法屋になって欲しいんだけどさ。
魔道具職人にもなって欲しいんだけど、魔法屋の方が急務ではある。魔法使いの数が多すぎるんだよ。魔法の消費に対して、魔法の供給が追いついていないんだ。どうにかしないといけないんだろうけど、魔法屋をやりたいって思ってくれる子供がどれくらい居るのかだよな。
感覚的には、魔道具職人と同じくらいだと思うんだよ。生産職ってそんなものだと思っている。日に当たらない事が多いからな。目立ちたい人にとっては、やりたくない仕事だろう。
目立ちたくない子供の方が少ないんじゃないか? 私的にはそう思うんだが。私はそもそも前世というものがあったから、何方でも良かったが、子供的にはそうではないんだろう。
目立つことは、注目を浴びることは、子供にとってのアイデンティティと言っても過言ではない。魔法を使えたことによる注目度ブーストは1回しか使えない。だが、その時の光景が強く残っているんだろう。多くの子供が魔法使いを目指すことになると、想像できる。
比率的には、魔法使いが8割を占めると思っている。魔法屋や魔道具師、もしかすると他の仕事は、残りの2割から凡そ均等に別れるのではないかと思っているんだがどうだろう。
そうすると、良くて1割なんだろうが、5分が魔法屋になるんだろうと思われる。全体の5%しか魔法屋にならない。魔法使い16人に対して魔法屋が1人という事になってしまうと思うんだよな。
もっとも、希望的観測ではあるんだがね。5%でも多いのかもしれない。下手をすると、1%を切るのかもしれない。そこまで魔法屋に魅力が無いんだろうと思われる。
稼ぎはどうかと言われたら、魔法使いの方が良いに決まっている。魔法が中銀貨1枚で購入できたとして、魔法使いはその魔法で大銀貨3枚程儲けているのではないだろうか。成果を均等に割ると、そうならないんだが、魔法使いは成果を沢山貰えてもおかしくはない。
どのクランも魔法使いに抜けられては困るからだな。条件は良くするだろう。対して魔法屋は、クライヴ君基準で言えば、月に大銀貨2枚だ。30日分を1日で稼いでしまう。
かといって、魔法使いには危険が伴うんだよな。前衛が負ければ、命を共にするのが魔法使い。いや、冒険者の生き方か。勝ち続けなくてはいけない。負けることは死を意味するから。
勝ちを強制させられる生活が良いものなのかと言われたら、解らない。いずれは負けるかもしれない。その危険性は常にある。まあ、冒険者全員に言える事ではあるんだがね。命を賭けて大金を手に入れているんだ。魔法屋は命を賭けないでもいいからな。
その違いだと言われたら、納得するしかないんだが、それでも収入の格差は大きい。危険な仕事をする方が給料が高いのは当然だと思うが、それにしてもな。
クライヴ君への給金が少ないのかどうかは、個人の感想でしかないな。月に大銀貨2枚というのは、5日分の売り上げを渡している。残りの25日分の売り上げは私が貰っている。
その代わり、魔法の作成のノウハウなんかはこちらで面倒を見るという事ではあるんだがね。適正価格なのかは解らないが、平均年収は中銀貨5枚だ。クライヴ君でも平均以上は稼いでいる。
携行食屋は月に中銀貨2枚だからな。あっちの方が圧倒的に安い。当然ではあるんだけどな。魔力持ちとそうではない人を比べては駄目だろう。クライヴ君は何方かと言えば、エリートなんだよ。
それでも、携行食屋は平均年収よりもずっと渡しているけどな。まあ、あくまで平均なんだ。中央値とはまた違ってくる。中央値はもっと安いからな。主に第1スラムの所為で。
中間上層と下位下層の数が多いんだよ。かなり歪な形をしているとは思うが、そういう感じになるんだよ。因みにクライブ君の年収的には上位下層となる。小金貨を稼げているからな。
カランカラン
「いらっしゃい。ゆっくりと見て行ってくれ」
「いらっしゃいませ!」
「あいよ店主君。今日も買わせてもらうよ。やっぱり土魔法を置いてくれている店が少ないのがいけないんだよね。あたしも何とかしようとは思っているんだけど、どうにもならないんだよ」
「土魔法な。沼地はそこまで人気では無いからな。狩りの報酬は美味しいが、専門装備が必要になるのと、マッドゴーレムの所為だろう? あれが何とかならない限りは無理なんじゃないか? マッドゴーレムには風属性の魔法で良いしな」
「それを言ったらお終いなんだよ。マッドフロッグは前衛が倒せってのは解るんだけどねえ。それでも数が多いんだから、魔法で散らさないと危険なんだよ。マッドゴーレムには前衛が無力だから、風属性だけ持っておけってのも解るんだけどさ」
「そして、そもそも土属性の魔法は少なすぎて競合して負けると。そうなると活動は出来るが、前衛の負担が大きくなる。そうなってくると今度は活動時間が少なくなる。休止期間が長くなる。結果収入が減ると。悪循環でしかないな」
「全くだよ。前衛には沼地で動ける装備をしてもらわないといけないってのもあるんだけどね。結構値段がするんだよ、あれも。でも、だからと言って放置も出来ない。沼地で生産している物を考えるとね。米や蓮根は収穫量がずば抜けて多いからねえ。放置は出来ないのさ」
「ただでさえ食糧を外部からの輸入で賄っている部分もあるんだから、作物生産は減らしたくないと。まあ、肉については余っている部分もあるとは思うんだけどな」
「肉だけでも足りてないのが現状だよ。あれだけ狩っているのに足りてないんだからさ。末端までには届かないのさ。金がないってのが一番の原因なんだがね」
「それについては何とも言えないな。1つは解体する速度が追いついていないというのがあるだろうが。大規模クランがもっと活動できるようになれば、肉事情は改善できると思うんだがな。特に平原で狩りをしてもらっているクランにワイルドボアを沢山狩って貰えばいい」
「無理だね。解体が追いつかないって自分で言ったじゃないか。雇うにしても場所がない。解体だけを生業にしている連中も居ないことは無いが、それでも少ないしね。大規模な場所が必要だろう? それを準備しようと思うと、平民では動けないね。それこそ貴族が動いてくれないと」
「動く様に政策提言はしたんだがな。西と北と南にも冒険者ギルドが必要だって話はな。動きがあるかどうかは知らないか? 見に行けてないから、解らないんだよ」
「……もしかして、あれの事かい? 大規模に土地を収用していたから何事が始まるのかと思っていたんだが、冒険者ギルドが出来るのか。それならあの広さも納得だねえ」
「お? 動いてくれていたのか。有能で有情な貴族にでも当たったか? それは良い事だな。魔物の解体速度が4倍になるのも時間の問題だな。動いてくれている様で良かったよ」
「はあ、首を突っ込んでいたのかい。貴族様になんて怖くて言えないってのに。よくも言ったもんだねえ。否定されるのを嫌うだろう? 打ち首になったら嫌だからね。今日はこれだけ買ってくよ」
「まあ、打ち首にしたくても出来ない理由があるんだよ。これでも元貴族だからな。醜聞になる事は出来ないって訳だ。まあ、わざと敵対している派閥に提言したんだが。クライヴ君、会計だ」
「はい。中銀貨8枚になります。……丁度頂きました」
「毎度どうも。またどうぞ」
行ったか。そうかそうか。冒険者ギルドの建設計画は進んでいるのか。良い事だな。実家はさぞ悔しがっていることだろう。いいざまだ。通したくなかった奴からの提言を通してしまったんだからな。母はどんな顔をしているんだろうか。




