393話 10/20 エミリー来店
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とりあえず、麻痺魔法を重ねてみる。これで良いと思うんだよ。失敗したら? その時はその時だ。実験に失敗は付き物。売れ筋の良い所を伸ばしていくのがベターだと思う訳だ。
ベスト? 解らんね。最良が何かは解らない。何処まで追い求めていくべきなのか。探求は他の人がやってくれるさ。私は私に出来ることをしよう。ベターで十分だ。
というかだね。他の魔法は威力的にも十分な気がしているんだよな。麻痺魔法もタイフーンウルフを目標にしなければ、今のままで十分なんだよ。それでもタイフーンウルフを想定して魔法の強化をしていくべきだろうと思っただけなんだ。まだ何も解っていないんだけど。
タイラーには黙っておくべきだな。威力至上主義者の彼だと、レッドベアの魔法を強化してくれと言いそうだからな。流石に過剰だろうと思うんだよ。あれはあれで完成品だ。
しかし、強化か。出来ないことは無い様な気がするが、何処まで出来るのか。何が出来るのか。全くわからない訳なんだがね? 出来ないと思わない所が凄いことだと思うんだよ。
何故か出来ると信じている。確信と言ってもいい。私の中の何かが、これは成功すると言っている。何の確証も無いわけなんだが、出来るのではないか、そう思っている。この感覚はなんなんだろうか。無駄にならないと思っている自信は何処から来ているんだろうか。
成功するかどうかわからないと言うのが普通なんだ。初めての事なんだから、成功するのかどうかは未知数。あり得ないと切り捨てるには早すぎるが、あると確信するのも早いだろう。なのに、私の中では、確定事項の様に思えてならない。これは、なんなんだろうか。
上手くいくはずだ。出来ないことは無いはずだ。そう思っている。根拠も何も無いのに、成功した気分になっている。何故なんだろうか。ここまで自信を持てるのも珍しいんだが、出来なければならないと思ってしまっている。何もしていないというのにだ。
根拠のない自信程怖いものはない。裏切られた時の反動が大きいからだな。普通なら失敗の可能性も考えるんだ。なのに、考えれば考える程、自信が湧いてくる。
絶対に成功すると思っている。何故だ? 思い当たる節がない。私の自信の元になっているのはなんだ? 何が私の中で起こっているというのか。ここまでの思い込みは、中々経験がない。
今までに根拠もなく成功すると思った事例は、無くはない。その一つが店の場所選びだな。ここでいいと思ってしまった。それは外れていた訳なんだが、あの時はここ以外に考えられなかったんだ。
それに似たような感じを受ける。体の奥底から成功すると思い込んでいる。脳が失敗することを想定しなくなってしまった。それは、危ない気がすると思うのは、私の防衛行動なのだろうか。
魔法の重ねがけ。魔法の強化。出来ると思ってしまっている。何がそうさせるんだろうか。経験ではない。そんな経験をした覚えがない。普通では無い感覚が動いている?
出来ると思い込んでいる理由はなんだ? まだ試したわけでもないのに、興奮を抑えきれなくなってきた。魔法は、初級魔法は重ねがけ出来る。初級魔法で出来たのであれば、中級魔法も上級魔法も出来て当然だろう。魔法の威力が、効果が、範囲が上がる。
何かの正解を見つけた感覚。何も成していないのに。この感覚は、危ない気がしている。何か気が付いてはいけない事に気が付いてしまったのではないか。そう思わずには居られない。
自分がおかしくなったわけではない、筈だ。成功するだろうと思う気持ちが充満しているが、片隅では危険だという自分もいる。意識しなければ、成功するだろうと言う何の根拠もない事を信じそうになっている自分が居ることに気が付かない。
何かを踏み抜いたのか? 禁忌の扉を開いたのか? 湧き上がる歓喜、これは狂喜の間違いでは無いだろうか。自分の中にある客観視する部分が押し潰されそうになる。
間違いなく成功するだろう。何故そう思う。何故そう思える。見えるのは、栄光。それを見る恐怖。思考の中に生まれた小さな火が、大火へとなっていく。思考がそこから動こうとしない。
何かが私を誘導しているのか? それは何故だ? 解らない。絶対的な万能感が頭の中を支配している。意識を戻さなければならない。踏みとどまらなければならない。
これ以上は危険だ。頭の隅でそれを叫んでいる。ただ、それが中心へとはやってこない。やってこれない。膨大な歓喜が支配している。駄目だ。思考をずらさなければ。違う思考の海へと旅立たねば。気が付いてはいけない場所に辿り着いてしまったと思考が狂喜する。
カランカラン
「……いらっしゃい。ゆっくりと見て行ってくれ」
「いらっしゃいませ!」
「あいよ、また来たよ。……どうしたんだい? そんな脂汗を掻いて。雨じゃないね。それは汗だろう? 服が塗れていないんだ。顔だけ外に出したのとは違う濡れ方だねえ?」
「ああ、気にしないでくれ。少し、そう少し良いと思われることを思い付いただけだ。ただ、その感情が暴走しかけたと言うか、良く解らないんだが、押さえ込むのに必死だったんだ」
「あん? 感情の暴走かい? 闇の神でも呼んだのかい? 6神教の中でも有名な話があるだろう? 感情を司る闇の神を呼べば、暴走し、狂喜に走る事もあるからねえ」
「闇の神? それは聞いたことが無いんだが、どのような話だ?」
「知らないのかい。闇の神を呼ぶというのは、よく自信の無い子供に聞かせる話さ。そうすれば、上手くいくように感じて、思い切った行動が出来るようになるって呪いみたいなものさね。失敗するかもしれないって感情を押さえてくれるんだよ。もっとも、暴走するかもしれないってのも込みの話だ。闇の神に頼り過ぎると、とんでもない事までやらかすってね」
そんな話があったのか。知らない話だ。と言うか、闇の神の事なんて考えても居なかったんだが、何がどうしてそんな事が起こったんだ? 精神干渉でも受けたか?
……大分落ち着いてきたが、本当に神の仕業か? 闇の精霊の仕業だと言われた方がまだ納得がいく。神の存在は信じている訳ではないからな。精霊の方がまだ信憑性があると思っている。
はた迷惑な存在も居たものだな。恐らくだが、私の気付きに対して、行動しろと訴えてきたんだろうと思うんだが、どうだろうか。良く解らない思考のバグもそれなら何とか、納得は出来る。
「大分落ち着いてきたが、何が原因で感情の暴走が起こったんだ? 神頼みも何もしていないはずなんだがな。単純に物事を考えていただけなのに、万能感が増して来たってのが、本音だな。それに支配されそうになったのは確かではあるんだが」
「闇の神に唆されたんじゃないかい? 研究や開発をしている奴にそういう事が多いってのは聞いたことがあるけどねえ。大抵は大きな成功を納めるって言うからね。良い事ではあるんだよ」
「あれが良い事、だと? 良く解らない感情に押し潰されそうになるあれがか? 神が直接干渉してくるなんて事があっても良いのか? 6神教では、それが普通なのか?」
「普通じゃないが、ある話だと言う事さね。神が導いていると言われているけどねえ。何処まで本当なのかは解らずじまいだ。そんな例が沢山あっても困るからね。昔話と一緒さ」
神、ねえ。一個人の思考に干渉してくるものなのか? 精霊の悪戯だと思った方がまだ納得が出来る気がするんだが。精神干渉自体は、されていた様な、されていない様な。不思議な感覚ではあるんだが、あれは自分では無かったと言われたら、そうだとも思えるんだよな。
さて、精神に干渉されたとして、これが本当の事であれば、魔法の重ねがけは出来るんだろう。誘導されていたと言われたら、誘導されていた。気が付いてからの万能感が凄かったからな。
神であれば、お墨付きを貰ったことになるんだが、精霊だとすればどうだ? 自分を呼び出せる可能性のある物を作らせる為には必要な事だったのではないか?
精霊召喚。恐らくだが、上級魔法になるそれは、一体何をもたらすのだろうか。精霊が友好的であると誰が保証してくれるんだろうか。敵対的な可能性も十分にあるだろう?
討伐出来れば良いんだろうが、討伐できるモノなんだろうか。ああ、駄目だ。これも多分だが誘導されている。神ではなく、精霊の方が正しいのかもしれない。これ以上は考えない方が良い。
「まあ、神に導かれて行く先は、晴れやかだとは限らないんだがね。そうやって生み出されたもので、戦争をおっぱじめた事もあるんだ。碌でも無い事もあるんだよ。気を付けな」
「気を付ける。本気で気を付けよう。何かに誘導されていたとしてもおかしくはない思考をしていたからな。破滅へと向かっている気がした。実現することはするんだが」
「好きにしな。それも選択の1つさね。導かれた先が悪いものばかりだったかと言われたら、そうじゃないからねえ。自制はしないといけないがね。破滅へと落ちるのは御免さね」
「全くだ。恐らくだが、行く先は破滅だろうな。この都市が残れば良い方だろう。形にはするが、深追いは止めておいた方が良さそうだ。なんとなくだが、色々と解った気がする」
「おーおー怖いねえ。神の話は教会でするんじゃないよ? 聖人認定されるやもしれないからねえ。自分たちの神も解っているのかどうかという所なんだからね。良い様に使われて、最後は捨てられるのがおちだよ。精々気を付けな」




