327話 10/12 水を作る魔道具
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工房の手前だろう所の部屋にやってきている。お世辞にも広いとは言えないな。当然と言えば、当然な訳なんだがね。広い訳がないんだよ。工房に割かれる広さを考えるとな。
4人で話し合おうってくらいの広さだな。それ以外には何もない。装飾なんかも何もなしだ。本当に話をするだけの部屋みたいだな。飾りっ気が全くないのも斬新だな。
「それで? 新しい魔道具ってのはなんなんだ?」
「新しい魔道具はね。水を作る魔道具なんだよ。遠征の時に使いたくてさ」
「お前……。前にも説明したと思うが、水は作ったら消える。それが常識だって言ったよな? 魔道具で作られた水は、時間が経つと消えてしまう。掃除なんかで使うのであれば、別だが、飲み水には向かねえって話をしただろ? 武器の手入れにはいいかもしれないけどよ」
「そう! そうなんだけどさ。なんか消えない水が出来るかもしれないって聞いてさ。聞いたからには、試してみないといけないじゃない? それで連れてきたわけ」
「魔法屋の兄ちゃん。いや、先に自己紹介をしておかないと面倒か。俺はオグマ。このヴェルナー魔道具店の店長をやっている。オグマって呼んでくれればいい」
「私はヴァルダン・ガブリエル。ガブリエル魔法店の店長をしている。私の事は、ガブリエルと呼んでくれると嬉しい」
「ガブリエルは、魔道具の事については、どのくらいの事を知っているんだ?」
「何も知らないというのが、本音だな。魔道具の使い方も詳しくは知らないし、作り方はもっと知らない。今日の会話から、魔道具を作るのには、魔力が必要だって初めて知ったレベルだ」
「はぁ……、そうか。素人の中でも素人の方なんだな。1から説明する気はねえ。とりあえず、概略を話すがよ。水を作るってのは、簡単なんだ。消える水ならって所なんだがな。水属性の魔石を使って、水を出す。これだけでいい。使い方は色々とあるが、掃除なんかに使われることが一般的だ。要は、濡れた後に、乾かすって事が必要ない訳なんだ。水が消えるまでは、30分程度って感じだな。それ以上になると、水の量が減ったりする。ここまでは良いか?」
「ああ、大丈夫だ。要するに、無いものを作り出すのであれば、時間経過で無くなってしまう。そういう事なんだろう? 有る状態でするのであれば、ともかく、無いんだから消えると」
「そういう事だな。だから、水を作る魔道具を作って使っても、喉の乾きは癒えねえ。30分もしたら、喉が乾いてくる。それどころか、一気に水が消えるからな。体の調子がおかしくなる」
「そうなんだよねえ。1度試したことがあるんだけど、あれは地獄だったよ。体調が悪くなるくらいなら、可愛い方だよ。病気に近い状態になるからさ。あれは、2度と経験したくないね」
「この馬鹿も言っている通りだ。水は消える。これが魔道具の普通だ。魔法もそうだろう? 水属性の魔法を使っても、後で片付けはいらねえ。消火を見て貰ったら、解るとは思うけどな」
「この都市の火事の消し方だよね。派手にぶっ放すでしょ? でも、水で濡れても、直ぐに乾くし、問題は無いじゃない。そういう使われ方もしているって事なんだよ」
「なるほどな。無い状態のものを作り出すから消えるんだな。では、有る状態からものを作った場合はどうなる? 例えば、水が有って、それを動かす魔道具を作った場合は、どうなるんだ?」
「そりゃあ……消える訳がないわな。動かした水はそのままだ。下から上へ水を運ぶ魔道具もある。貴族なら使っているが、井戸から水を汲み上げるのに使っているな」
「ならば、簡単だな。いや、断定は出来ないが、消えない水を作り出すことは不可能ではない。私の見立てでは可能であると思っている。実際には水を作り出すわけでは無いからな」
「……は? 何を言ってやがる。水を作り出すわけではない? じゃあ、どうやって水を出すんだよ。作らねえと無いだろう? 作り出すわけではないってどういうことだ?」
「単純な事だ。水は空気中にも含まれている。その空気中の目に見えない水を集めてくればいい。特に平原なんかだと、大量の水が空気中にあるはずだからな。集めるのも簡単だろう」
「ちょっと待て。水が空気中にある? 何の冗談を言っているんだ? どうしてそうなるんだよ。もうちょっと詳しく説明しろ」
「あたしも気になるな。空気中に水があるってのは、初めて聞いた話だよ?」
「では、何故洗濯ものが乾くのか。洗濯ものは、水で濡れている。それが乾くというのは、水が無くなってしまうからだな。そうだろう? では、その水は何処に消えてしまうのかという話になってくる。魔法ではないんだから、無くなる訳がない。そう。水は、目に見えない大きさになって、空気中に紛れ込んでしまうんだ。そうすることで、洗濯ものが乾くんだよ。空気には、水を貯め込む機能がある。だから、空気中から、目に見えない小さな水を魔道具で集めて来れば、消えない水が出来るはずだ。水を動かしても、元の位置には戻らないんだから、当然だろう?」
「空気中に水がある、ねえ。そんな事は、今まで聞いたことがないぞ。でもまあ、確かに、洗濯ものが乾くって事は、水が何処かに行ってしまうからだな。消えている訳じゃない」
「そういう事だ。消えている訳じゃないのであれば、空気中に水があるという事なんだよ。だから、空気中から、水を集めて来れば、消えない水を作り出すことも可能という訳だな」
「理論上は、そうなるのか。……出来ない訳じゃないとは思う。ちょっとばかし、魔石を多く使うが、この都市で入手出来る魔石だけで作れるとは思うな」
「魔石を使う分には、問題なさそうだよ? 1回でバケツ1つ分も貯まらないって事は無いんでしょ?ならいけるって。多少の費用は仕方が無いんじゃない?」
「魔法でやるよりかは、魔道具でやった方が簡単だろうな。そもそも、魔法を作るにしても、かなり特殊な魔法が必要になってくる。私しか作れないとなると、それはそれで問題だからな」
そう。水は空気中にあるんだから、集めて来ればいい。効率を求めるのであれば、沼地なんかで集めると、早そうだが、欲しいのは、草原や森でだろうからな。
魔石を多く使うのは、仕方が無い事なんじゃなかろうか。そういうものもあるよねって話でさ。便利だろうとは思うぞ。どの位の効率で集められるのかは知らないがね。




