18話 9/8 アリアナ視点 3回目の狩り、嫌らしい魔法
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今日でワイルドボア狩りも3回目。今年は稼ぐってクランリーダーが言ってたからペースを上げるんだってさ。あたしとしてはどっちでもいいけど、前衛は大丈夫なんだろうか。
負傷者が居るのはいつもの事。この時期が一番の稼ぎ時だから怪我してる人は置いて行くけど。怪我してる人は一時的に非戦闘員になるかたちになる。だから命令も絶対。
でも仕方ないとは思う。戦えないんだもの。魔法使いであるあたしには関係のないことだけど、9月の終わりごろになったらいつも通り負傷者が2割くらい出てるんだろうなあ。
骨が折れたら仕方がないんだよ。病院に行って、骨を強制的に動かして固めるんだけど、それがもの凄く痛いんだって。体が資本の冒険者。病院には色々とお世話になる。
切り傷擦り傷も放っておくとそこから体が腐っていく。だから何気ない傷でも病院には行かないといけない。お薬を貰わないと腐ってしまうからね。
聞いた話だと、薬師の人たちがゴブリンから薬を作っていると聞いたことがある。ゴブリンの薬を塗ったり飲んだりすると腐らなくなるんだってさ。詳しいことまでは知らないんだけど。
だから病院もいっぱいある。……魔法屋よりも病院の方が多いんだ。病院は魔力が必要ないからね。それに冒険者の数も多い。病院がいっぱいあっても誰も困らないからいい。
でも病院にも一杯種類がある。骨折を治すのが得意な所とか、お薬が安い所とかね。人気のある病院はかなりの待ち時間が必要。だから冒険者は少し高くても早い所を選ぶんだ。
次のお仕事に支障が出るからね。体を治さないと仕事が出来ないからさ。平民だって病院を使うんだ。それは仕方のないこと。病院ってだけで都市から補助が降りるんだって。
教会関係の病院が多いんだ。2割くらいかな。その位は教会の人たちが絡んでる。都市に貢献しないといけないんだって。よく解らないけど、そう言う事なんだってさ。
まあ魔法使いには縁遠い所なんだけどね。魔法使いが負傷してたら世話無いって話だよ。それだけ前衛がだらしがないって事だからね。しっかりとしてくれないと困るのさ。
まだ3回目だから抜けてる人員も少ないけどね。まだ5人くらいなものさ。1日目でやられた奴は運が無かったんだろうねえ。こういうのは運も絡むからね。
それに魔物の群れに逢うのも運が必要。まずは斥候のお仕事だ。頑張っておくれよ。何事も無いのが一番不味いのさ。今回も100台持ってきてるんだ。空で帰ったら示しが付かないよ。
さあいい感じの群れの足跡を見つけたようだね。さっさとそっちに移動して狩りの準備だ。当然だけど、乱入の可能性もある。まだまだ明け方。夜型のクランとかち合う事もあるのさ。
今回も付いてるねえ。乱入は無しだ。50はいるんじゃないかい? それだけの群れなら乱入なしに狩りたいところではあるねえ。さあ捕らえたよ。今回は誰だい?
「ロバート、アリアナ、ヘレン。頼んだぞ」
「了解。『オーリエンティール、ココイグル、ドラライト、イレ、キキーモラ、ヘルトレストルデリ、サリヘル』」
「……『大猪の兵隊は風切り音と共に突撃する』」
「はい。『愛は何があろうとも愛である。たとえそれが力無き者の囁きだとしても。愛は無償で貴方を包み込む。それは優しく羽衣の如く。母なる愛は大地の風よ。大空に漂う雲の形を変えんと吹きすさぶ。雲は愛と成れるだろうか』」
さあ魔法が飛んで行ったよ。風壁が突進を緩め、風刃が切り裂く。そしてワイルドボアの風塊が突撃する。……やっぱりもう少し範囲が欲しい所だね。まだまだ無駄が多い魔法だ。
前衛が突撃すると乱戦になる。さて、乱入者はどうだろうか。入ってこられると面倒なんだけどねえ。魔物にしても人にしても。面倒は少ない方が良いのさね。
「遠くにワイルドボアの群れがいるな。こちらは捕捉されていないようだが」
「戦ってもいないぞ。ささっと片付けて行くべきだな」
……何処か解らないが、斥候には見えているようだね。うーん。解らないけど、向こうだろうか。次の獲物もいるとなると、今日も大量の成果が見えてくるね。
さて、終わったようだ。クランリーダーがこちらにやってくる。この距離ならあの魔法の出番じゃないのかい? こういう時に使うものなんじゃ無いかと思うんだけどねえ。
「クランリーダー、次の獲物が向こうに見えます。まだ何処とも戦闘をしていなさそうです」
「そうか。積み込み次第そちらに向かう。マーク、アリアナ、サラは準備をしておいてくれ」
「……クランリーダー、提案。魔法でこちらに呼び寄せる」
「何? ……出来るのか?」
「……多分」
「失敗の恐れはあるという事か。まあ良かろう。試してみよう。積み込みは途中でも止められる。今すぐ使えるか?」
「……勿論」
さて、試し打ちをさせて貰おうかね。実績では徒歩20分の所でも連れてきたんだろう? この距離ならやれるだろうさ。……あたしには見えてないけどね。
「……『風狼は群れを追い立てる。風下に呼び寄せん』」
さあウルフの形をした魔法が走って行ったよ。あたしが認識してなくても走って行くんだね。方向は合ってるとはいえ、心配だねえ。まあ何とでもなるさね。
積み込みをしていて暫く、ワイルドボアが40ほどかな。こちらに向かって来る。やり口は確かにウルフの追い込み狩りに似ているね。そう言う魔法かい。
「来たぞ! マーク、サラ。魔法を」
「おう。『寒暖の無い日はない。冬の寒空の下、愛しいあの子を待ち望まん。白色吐息が風弾の如く襲い掛からん』」
「任せて。『七色の風よ。永久の風よ。降りしきる五月雨の様に』」
魔法が飛んでいくが、風のウルフが嫌らしい動きをしているねえ。先頭だけを風弾で狙いつつ、追い立てている。いい魔法だが、範囲が解らんところが難点だね。
最後にはワイルドボアに噛みつき、転倒させるまでが魔法かい。これは貰ったね。前衛が駆けていく。まだこっちの片付けも終わってないってのにね。
今日はこれで終わりだろうか。……いや、もう一群れ行くかもね。まだ台車は空の物もあるんだ。まだ8時間ほど時間もあるんだし、まだまだ行くだろう。今回も大漁かもしれないねえ。