表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
補助魔法はお好きですか?〜研究成果を奪われ追放された天才が、ケモ耳少女とバフ無双  作者: 黄舞


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/52

第三十七話

 人工的に手の加わった道を、乗合馬車が大きな音を立てながら、走っている。

 乗っている者の多くは、冒険者で、その装備を見れば、みなそれなりの稼ぎを持った者達だと想像出来た。


 その中に混じって、まるで金の匂いのしない、一般市民のような格好をした白髪の青年と、その横に携わる目深にフードを被り性別も分からない子供がいた。

 子供の腰には不釣り合いと思えるような、質素だが見るものが見れば高級だと分かる鞘に収められた、一対の短剣が差してある。


「大丈夫かい? セレナ。具合が悪そうだね。振動に酔ったか?」


 周りからはその子供の顔を窺い知ることは出来ないが、間近に居る青年にはフードの中の顔が分かるのだろう。

 馬車で移動して間もないというのに、青ざめた顔付きを見せる旅の仲間に、青年は心配そうな声をかける。


「大丈夫、です。ハンス様。少し、昔のことを思い出して……」


 セレナと呼ばれた少女は、ハンスという青年の奴隷である。

 少女はハンスに買われ、引き取られるまでの間、幾度となくセレナを扱う商人を変え、その度に長期間の馬車での移動を余儀なくされた。


 もちろん奴隷が詰められるような馬車は、快適さでも衛生面でも、この乗合馬車とは雲泥の差だった。

 商人は少しでも速く目的地に着くようにと、乗り心地など二の次で、速度を上げ、馬車を走らせる。


 手が加えられているとは言え、でこぼことした道は、木に鉄を当てた車輪を容赦なく振動させる。

 脚を折り曲げ座るのがやっとな空間しか、占有を許されない荷台に詰められたセレナは、地獄のようなその時間が一秒でも早く終わるのを待ち、耐えるしか無かった。


 ハンスは何か呪文を、周りには分からないように唱える。

 同時に動かした指先の輝点が描く魔法陣から光線が放たれ、セレナの肩へと吸い込まれていった。


「昨日開発したばかりの補助魔法、精神安定(カーム)をかけた。これで、楽になっただろう?」

「え? あ、はい。なんだか、すごく落ち着いた気持ちになれました」


 補助魔法と言うのは、身体の強化や状態異常など、様々な効果を対象に付与することの出来る魔法だ。

 この魔法は、少し前までこの世界には存在せず、この青年ハンスが生み出した魔法だった。


 しかし、その成果はある事件によって、別の者のものだと、世間には広められてしまった。

 恩師であったはずのワードナーに研究内容を奪われたのだ。


 おまけに多額の借金を背負わされ、その返済をするため、ハンスは冒険者になることを決めた。

 ハンスは見た目によらず、白銅級の冒険者で、奴隷であるセレナもハンスの仲間のれっきとした冒険者だった。


 二人は元々拠点としていた王国の首都ガバナを追われ、安住の地と思われるカナンへ向け、旅をしている最中だ。

 この乗合馬車は、その途中にある、冒険都市ティルスへ向かうものだった。


 様々な有用な素材を多数産出する、この国有数のダンジョンにより栄えた、まさに冒険者のための街だ。

 その街でその名を知らしめようと、乗合馬車に乗り込んだ冒険者達は、ティルスを目指していた。


「おい。あんた。今、補助魔法ってのを使ったろ?」


 ハンスとセレナのやり取りを見ていた一人の男が、ハンスに声をかけてきた。


「俺の名はパック。情報屋なんだ。それよりあんた、先日王立研究所の魔術師ワードナーが開発した、今までに存在しなかった魔法、補助魔法を使ってたよな?」

「なんの事だ?」


 ハンスは問いの意図が分からなかったため、とぼけることにした。

 そもそも発表し賞賛を受けたのはワードナーで間違いないだろうが、補助魔法を開発したのは、紛れもなくこのハンスなのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作異世界恋愛書き始めましたヾ(●´∇`●)ノ

今世は立派な悪女(ワル)になる!〜良い子ではダメだと前世で悟ったので、強かに生きます

【良い子】でいようと頑張ったけれど、不幸な目に遭った女の子が、タイムリープして幸せを掴んでいくお話です。 良かったらこちらもよろしくお願いします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ