グレイマルキン
タイトル落ちシリーズ第4弾です。
吾輩は悪魔である。名前は言えない。
真名を知られることは命を握られることと同じである。
いや、命ならばまだいい。死ねば自由になれる。
真名を知られるということは魂を握られることである。
死んだとしても自由になれない。
何度死のうと何度生まれ変わろうと、魂が縛られているから逃げられないのである。
吾輩は悪魔である。名前は言えない。
悪魔である吾輩は名前=本名=真名である。
契約を尊ぶ悪魔として偽名を名乗るという選択肢はない。
故に吾輩は名前を言えないのである。
名前を言えないから契約者は吾輩を好き勝手に呼ぶ。
好きに呼べばいい。
本契約ではないから吾輩も好きにさせて貰う。
吾輩は悪魔である。本来は地獄に住んでいる。
冷酷な悪魔が闊歩する地獄とは異なり、地上は自由でよろしい。
非常にのんびりした気分だ。
何百年も生きた悪魔である吾輩に取っても、こんなにのんびりできる生活は初めての経験である。
此度の契約は長く続くことを願っている。
吾輩は悪魔である。地獄が故郷である。
今は日本という島国にて気ままな生活を送っている。
はっきり言って食っちゃ寝の繰り返しである。
陥れる相手も呪い殺す敵も存在しないのに、よくも吾輩と契約したものだ。
ウワサに聞いたところによると平和ボケと言うらしい。
することがなくて暇すぎるが、くだらない仕事を強制されることもないので差し引きゼロとしておこう。
今ものんびりと微睡んでいたところだ。
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ふむ、契約者が吾輩を探しているようだ。
吾輩の契約者である小娘の気配が近づいてきた。
「クロー、ごはんだよー!」
吾輩は黒猫の悪魔である。
吾輩は何も言わない。黙って黒猫のフリをするだけだ。
かくして我輩は此家の求める役割を極めることにしたのである。
【あとがき】
はい、『グレイマルキン(黒猫の悪魔)』というタイトルと、『吾輩は猫である』出だしのパロということで、思いっきりネタバレ全開だったわけですがw
あ〜、猫いいですよね、猫!
作者も『みかん絵日記』みたいな、しゃべる猫とお友達になりたいです(切実)
じゃなければ、せめて『日常』の阪本さんとか?
でも、やっぱり『へべれけ』のおーちゃんが一番大好きっ!