第28話 ご褒美
「こんな所ですかね」
小一時間程戦闘を継続し、私たちは満身創痍、肩で呼吸をし体はボロボロだ、元気なのはゼルセラくらいだ。
戦闘を中断したゼルセラは武器を仕舞い私達の元へと歩み寄る。
不思議がる私達にゼルセラは笑みを返す。
「流石。ご主人様に期待されているだけありますね」
「あの...どうして...師匠ばかりを攻撃するのでしょうか...」
「それは試験不合格だったからです。なにか勘違いしているようですが、私がテストしていたのはシザースです。そしてこれは罰です」
なるほど...じゃない...。
師匠は言っていた。試験があると、でも、それは師匠だけだったようだ。
青い空の元、私達はゼルセラ様の元へと集まった。
体の傷は全てゼルセラ様が治療してくれた、ほんとにこの人はなんでもできるな...。
「さて、まずは肉体の成長を止めるとしましょう」
「最初に疑問に思ったんですけど、肉体の成長を止める意味ってなんですか?」
「それはご主人様の趣味というのが大きいですが、止める事の意味とするならば、普通に生きていては目標の年数まで生きれないからですね」
「覇王様って...今の私達位が好みなんです...か?」
「え...あぁ...まぁ...」
腑に落ちない表情のゼルセラは溜め息交じりの声で私の意見を肯定した。
だが、そうなると疑問が生じる。
「ゼルセラ様はどうして...大人な見た目なのですか?今の話が正しければ、覇王様の好みである、少女の姿になった方がよくないですか?」
「私の姿はご主人様が御創りになられたもの...勝手に変える事は許されません」
納得だ。
ゼルセラが手を翳すと私達の肉体は光を放ちやがて収まる。
特に変わった所は見られない、究極スキルに【不老】が追加されているがそれくらいだろう。
さて、待ちわびたご褒美タイムだ。
「今のパーティーに必要なのはなんですか?」
「えっと...」
それは私達の議題でもあった。
アタッカー2、シューター1、オールラウンダー1。
近接のホープとイチゴ、遠距離の私になんでもこなせるシリュウ。基本なんでもこなせるシリュウが居るので考えてこなかった。そのせいで、パッと思い付く事が何もない。
悩む私達をゼルセラは諭す様に語る。
「今の貴女達に必要なのはタンク、サポーター、魔法職、ヒーラーです。スキル構成的にサポーターと魔法職は必要順位が低いですが...タンクとヒーラーは必要不可欠です。そこのミルクとシープを加えればサポーターとヒーラーは問題ないでしょう」
「なるほど...」
全員が納得したように首を縦に振る。
その様子に満足したのかゼルセラはある水晶を取り出す。
「これはとあるイベントを進めると報酬として貰えるのですが、余っているので、貴女達へのプレゼントです」
「それは一体なんですか?」
「これは人造人間つまる所【ホムンクルス】です。最初は無表情で機械的な対応しかできませんが...自分の教育次第で如何様にもなれる優れものです」
なるほど。
つまりは、自分達で自分達に合ったメンバーを作ればいい訳だ。
それに...見た目なんかも自分達で弄れるらしいので私達にはピッタリなのかもしれない。
「最低限の教養は必要ですが、基本的に戦闘を任せるのなら、戦い方を教えるのが良いでしょう、まぁ元の世界で暮らす事も考えるのならば、常識も教えておいた方が良いです」
「ミーシャに常識...」
「ですが、システム上所有権の譲渡という形になりますので、私の知識が多少入る事になります」
ホムンクルスを生み出した時、無知の状態で始まる訳では無いらしい、最低限の知識、言語能力などを召喚主の記憶を元に再現するらしく、この場合、ゼルセラ様の記憶を元に構築されるらしい。
ならば何も問題はない。
私の記憶に大した教養はない。
孤児院という狭い世界の知識しかなく、あるのはこの大草原にポップするモンスターの知識などだ。それに比べればゼルセラ様の記憶を元に作られれば、そこまで教育しなくても役に立ちそうだ。
さて、さっそく生み出してみよう。




