第21話 大草原の主?
全員のレベルも程々に上昇しそろそろ頃合いかと思われる、師匠が言うにはエリアボスの平均ステータスは5万程だそうだ。
全員で協力すればなんとかなると思っている、私が戦力として役に立つかどうかは兎も角...。
大草原の丘を越えた先には平均ステータス5万のドラゴンが何匹もうろうろとしている、それに比べれば一体のモンスターとの闘い程度問題にもならない。
そう、私以外は...。
私とシリュウは若干きついかもしれないが、大金を出して買っただけのことはあるホープ様が居れば余裕だろう、私達が多少でも囮になればホープ様がワンパンで沈めてくれる事だろう。
大草原の丘までは私でも行くことが出来る。だが...その後は....大草原の丘を越えると私は一気に戦力外通告を貰う事になる。
丘の頂上でボスエリアに通じる門を探す。
「んー前に見たときは確かあの辺に...」
ホープが指し示す方向に目を凝らしてみると確かに遺跡らしき建造物が見えている。
ただ、あの辺りは完全に竜の巣状態で巨大な龍を筆頭にドラゴン達が犇めいていた。
以前一掃した時はリーエルさんがワンパンで倒してくれたが、改めてこの数を倒すとなると...気が遠くなる。
そもそも...倒せるのか...。
いや、ホープは余裕で相手できるだろうが、イチゴも苦戦は免れないだろう、現状私とシリュウでは相手にならない。
つまり...まずはレベルを上げる必要がある。
「じゃあ手っ取り早く、私が一匹連れてきます!」
「う、うん!どんと来い!」
私とシリュウそれからイチゴで相手をする。
短剣を取り出し逆手で構える。
どう考えたってドラゴンなんて倒せないと思う....。
流石にそんな気持ちで戦いに臨む訳にはいかないのでパッと気持ちを切り替える。
ドラゴンが近付くにつれ短剣を握る手にも力が入る。
「あの中では一番弱い個体だからいけると思うー!」
ホープがドラゴンを引き付けながら大声で叫ぶのでほっとする。一番弱い個体なら私でも大丈夫かな...。
「大体平均1万くらいー!」
「それ弱くないよッ!!」
迫るドラゴンに対し冷や汗が流れる、私なんてまだステータス3桁なのに...平均1万なんて無理だよ...。
逃げ出したい気持ちはあるが眼前に迫ってきている以上、戦闘は免れない。
「ふー...ふー...落ち着け...サポートはある...集中...集中...」
「まずは私が...」
最初に攻撃を仕掛けたのはイチゴだった。
私達には上空に対して攻撃できるのがシリュウ位だ、なのでまず最初に相手の利点を潰す。
イチゴは飛翔し居合にてドラゴンの両翼を切断してのける、それに合わせシリュウが氷結ブレスを吐きダメージを与える。氷結属性の攻撃をまともに喰らい大きくダメージを減らす
「きゅうー!!」
「ミーシャ今だよ!!」
「う、うん!!!」
キンッ!
響き渡る甲高い金属音。
脳天に突き刺したはずの短剣は残念ながらドラゴンの強靭な鱗を突破することは出来なかった...。
「せいっ!」
私の前を一瞬白い影が通り過ぎ、ドラゴンは倒れる。
影の正体はホープで、止めを刺してくれたみたいだ。
「やっぱ無理だよ~」
「やっぱり短剣じゃ突破力に欠けるのかなぁ...」
ホープが頭を悩ませる。
悩ませるほどの事じゃないのは明白だ。
「レベルだよ!レ・ベ・ル!!」
「ミーシャにはまだ。ドラゴンは早い」
「きゅう?」「相手変える?だそうです」
みんな私のステータスを知らないんじゃないかと思ってしまうほど、敵のチョイスが悪い。そ!も!そ!も!ドラゴンなんて少女が戦う相手じゃない!
いずれは物語の英雄みたいになりたいけど...それは今じゃない!
勇者とかそんなすごい人が冒険の果てに倒すような相手をこんな序盤で相手取ること自体おかしいんだ!
他のみんなからしたらドラゴンなんてと思うかもしれないけど!!私からしたらドラゴンは立派なボス!!!どう考えたってモブじゃない!!
「魔法とか...」
「!!???魔法?!」
「きゅう~」「たしか前に魔導書ドロップした気がする~だそうです」
「これとかどうです」
そういいイチゴが私に渡してきたのは【電撃派】と書かれている魔導書だ。
古ぼけた本を手に取る。
「とりあえず覚えてみようかな」
パラパラとページをめくると頭に勝手に魔法の情報が流れ込んでく様な感覚がした。
自然と効果範囲などが脳内に浮かぶ。
ふむふむ...
「よし!【電撃波!!】」
魔法を使ったが反応はなし...むしろ...なに...この脱力感...ぐふ...。
「ちょっと!ミーシャ?!」
「あわわわ」
「きゅうーーー!!!」
薄れゆくおぼろげな視界から見えるのは皆が私を心配し駆け寄る姿。
あぁ...また私みんなに迷惑...かけちゃった...のかな...。
目が覚めると見慣れた天井が広がる。
いまだに脱力感が残っているがさっき程ではない、ステータスを見てみれば完全にMPが干上がっていた。
なるほど...【電撃波】の消費MPは750、それに対して私のMPは600どうやら上限を超える魔法を使うと戦闘不能に陥るらしい、これは管理が難しいかもしれない...。
ベットから起き上がりみんなと合流する。
「おはよう」
「大丈夫~」「びっくりした~」
「うん、私もビックリしたよ~」
どうやら拠点にはミルクとシープしか居ないようだ。
2人は料理を作っている様なのでそれをのんびりと待つ、MPは自然回復かアイテムを使うしかないので、現状はこうしてのんびりみんなの帰りを待つしかない、それにしても...どこに行ってるんだろうか...。
「どうぞ~」「詰まらせると大変だからおかゆにしたよ~」
「うん。ありがと」
出来立ての料理を口に運ぶ、美味しい。
文句のつけようがない...。
食べてる私をじっと見つめる二人。
「どうかしたの?」
「心配した~」「起きないかと思った~」
「そんな大げさだよ」
確かに意識は失ったが、そこまで心配するほどの事でもないはずだ、少々過剰すぎ気がする。
「だって~」「2日間も起きなかったんだよ~?」
「え?!2日も?!それほんとなの?」
「ほんとだよ~」「だから心配した~」
「そっか...なんかごめんね...」
「大丈夫だよ~」「気にしない気にしない~」
流石に2日間も寝込んでいたら誰だって心配する、さすがに最近張り切り過ぎたのか体への負荷が多かったようだ...。
食べれば食べる程、身体は軽くなっていくので、お代わりまで所望する。
「お代わり貰っても良い?」
「いいよ~」「いっぱい食べてね~MPの回復効果を付与してあるから元気になるよ~」
なるほど、それで徐々に身体が軽くなっていってるのか、2杯目を食べ終えるころにはMPは全回復し身体もすっかり元通りだ。
そういえばみんなはどこに行ってるのだろうか...。
「みんなはどこに行ってるの?」
「魔導書~」「あれだよ~」
「あれ?」
シープが指を刺すその先には山の様に積まれた魔導書。
これ全部魔導書なの?
「みんながね~」「ミーシャちゃんにも使える魔法をって~」
「みんな....」
「見てみてよ~」「好きなのをど~ぞ~」
試しに山から一冊取る。
【月灯り聖剣】なになに...月に祝福された聖剣を生み出し...聖属性の斬撃を放つ...
消費魔力...2500...カテゴリ...召喚魔法...位階...上級...扱えるか!!!!使えないけど...覚えておこう...かっこよさそうだし...
中級魔法で意識を失った私に上級は時期尚早だ。そっと魔導書を元の場所に戻す。
ほかほか...【黒炎球】なになに...消せない炎を生み出し相手へと投擲する、火炎系魔法の派生先で...消費魔力は2000...カテゴリが火炎魔法で...位階が上級...ってこれも上級かよ!!!
無理無理!!でも覚えとこ....
そっと山に戻し新たな魔導書を手に取る。
【剛体】なになに...自身の攻撃力と防御力を一時的に上昇させる。消費魔力は400...カテゴリは身体強化系...これだ!!!!
ようやくまともな魔導書に出会えたことに感動さえ覚える。
「これとか~」「これなんていいかも~」
「どれどれ...【火炎球】【水弾】【破滅の火】絶対最後のは違うでしょ!!!一応覚え解くけど...」
【火炎球】炎を生み出し相手へと投擲する。消費魔力は100、カテゴリが火炎系で位階が初級。これなら私でも扱えるだろう。
【水弾】水を生みだし相手へと射出する。消費魔力は150、カテゴリが水氷系で位階が初級。うん!これも扱える。それで...
【破滅の火】邪神が町を焼き払った火..広範囲を扇状に焼き払う、連続使用で威力上昇...消費魔力が...30000...位階が....超級....なんじゃこりゃ!!??!?!?!
どう考えたって、私が使う魔法じゃないのがある...。
流石に拠点の中に山積みだと扱いづらいので整理をした方がいいだろう。
「私これ、倉庫に移しちゃうね。全部に目を通しておきたいし」
「わかった~」「帰ってきたら伝えとく~」
せっかくみんなが私の為に取ってきてくれた魔導書...。
でも...みんな張り切りすぎだよ!!




