第20話 新たな生活
目が覚め部屋を見渡すがミーシャの姿だけが無い。
昨日、のセリフは聞いているので無事な事はわかっている。
他は未だに寝ている、泣いてるのはホープだけかと思いきやイチゴもばっちり泣いていた。
ほんとにこの子はミーシャが好きなんだなと思う。そんな子達を起こさないように部屋を出ると不思議と良い香りがしてくる。
匂いにつられるように部屋に向かうと既に昼食の準備がされていた。
もしかしてミーシャが作ったのかな...
「きゅう~」(おはよう~)
「あっやっと起きたんだ。どう?頑張ってみんなの分作ってみたんだけど...どうかな?」
「きゅ~!!」(みんな喜ぶと思うよ!)
「ん~何言ってるかわかんないけど...喜んでくれてるよね?うん!」
流石に通訳が居ないと不便だがミーシャになんとなく伝わったようで良かった。
「きゅう!」(みんな起こしてくる!)
「ん?どこ行くの?」
伝わらないので仕方がない、行動で示すだけだ。
いまだに爆睡してる子達を前に思わず口が緩む。まるで家族が増えたみたいでたうれしかった。
「きゅう~」(ミーシャがごはん作ってくれてたよ~みんな起きて~)
「ん~」「起きた~」
まだ眠そうなミルクとシープも起き、無言で起きたホープとイチゴも部屋を出る。
2人とも思う所があったのかもしれない、ホープはミーシャにケガさせちゃった訳だし...イチゴは単に照れくさいだけな気もするけど...
「みんな起きたんだね、おはよう!昨日は色々と迷惑かけてごめんなさい!」
「ミーシャさんが謝る事ではありません!!もとはと言えば私がスピードを出し過ぎたから...」
「きゅう!!」
「そんな話は良いから早く食べよ?冷めちゃうし!!と言っています」
「そんな話...」
そんな話は言い過ぎたかもしれないけど、結果として、ミーシャは無事だったのでよしとする。
「じゃあ食べよっか」
「きゅぴ~!」
『頂きます』「きゅ~」
一斉にミーシャの作った料理を口に含む。
美味しい??ん...これ...肉じゃない...
私が感じた違和感と同じように他のみんなも思う所があったようだ。
「薄い~」「味が濃いです~」
「・・・」
ミルクとシープは真逆の事を言っている。
それに対し、ホープも思う所があるようだ。
「味はちょうどいいんですが...ちょっと固いような...」
「・・・」
ミーシャの表情が徐々に暗くなっていくのが目に見えてわかる。
「人参が柔らかすぎる...」
「・・・」
イチゴの馬鹿...ここで「上手い!」とか言えばミーシャと一気に仲良くなれるのに...
と、思う私も肉が入っていない事には不満がある...。
「きゅう...」(お肉がない...)
「肉がない。だそうです」
「・・・」
訳すな!!!
と思っても、イチゴに悪気があるわけじゃない...。
全員から批判を受け、さらに評価は千差万別、味が濃かったり、薄かったり、固かったり柔らかかったり、肉欲しかったり、ベジタリアンだったり...
初めて作った料理、それをこんな批判のされ方をしたら誰だって...
「みんなのバカ...もう作らないもん...」
武器を持って飛び出していくミーシャを追う事はせず各々反省する。
流石に言い過ぎたと...。
「♪♪♪~」
嬉しそうに食べるのは一人。
イチゴだ、ほんとは人参が柔らかいのが好きなイチゴはわざわざミーシャの前では不満気な顔をしつつも、裏ではこうして元気よく、ほんとに幸せそうに食べるのだ。
「食べないなら私が貰いますね♪」
「え、えぇ...」
これがミーシャの作る最初で最後の料理だった。
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「みんなのバカ...最初くらい、うまい...って言ってくれればよかったのに...」
愚痴を吐きつつも、なぜか私の口元は笑っていた。
素直に言ってくれたことが嬉しかった半面悲しい...もう料理は作らない。
そう心に誓った。
家を飛び出して外をふらふらと歩く。
ある程度の目安を付けるためだ。
やることはいっぱいある、まずは家畜小屋の建設と畑の拡張。
これからも家畜が増えることを考えると...それなりに広い方が良い。
「大体これ位かな...」
最初なので完璧にできるとも思ってないので、完全になんとなくで範囲を決める。
家畜小屋と言っても放し飼いに出来るスペースを作る程度だ、そもそも小屋なんて作れない、拠点みたいに家畜小屋を建てられるアイテムがあればいいが...。
残念ながら今は無い。
という事で、近くの森の木を伐採し柵を作る。予定。
あくまで予定だ。
もしかしたら普通にアイテムが出るかもしれないからだ。
ぶっちゃけ後回しで本命は畑だ。
畑は拡張するだけなので簡単に出来る、元々、育てている作物が少ないのでまだまだ余裕がある、拡張もそこまで大がかりなものではないと思われる。
じゃあ、何をするか...そう!!戦闘だ!
家畜小屋のアイテムがドロップするまで、敵を倒しまくるのだ。
幸いな事に、シリュウ、イチゴ、ホープは戦闘特化型なので戦闘に関しては問題ないだろう。
さて...問題は私だ。何をするか...あの3人ほど戦闘が得意なわけでは無い...とりあえずミルクとシープと一緒に辺りを探索するとしよう、そこそこのモンスターを討伐する、やばいモンスターは3人に任せる。
私でも、このあたりの敵なら大丈夫だ。
丘の方は無理だけど...。
それからしばらくの間、この生活が続く。
家畜小屋のアイテムが中々ドロップしないのだ。強い3人は毎日の様に戦闘に赴き私やミルクなどの非戦闘員は畑の手入れや柵の設置などをしていた。
2か月間程同じような生活が続き戦闘員のレベルもかなり高くなってきた頃シリュウウから吉報が届く、届いたタイミング的に悲報でもあったが...。
それは私達が畑の手入れをしていた時だ、この世界の作物はほぼすべて成長が早い。種を植えた次の日には実がなっていることが多いそのせいで、徐々に畑も大きくなり生産数が非常に増えた。種類も増えたお陰で料理にも幅ができ今では食卓がかなり色鮮やかになる程だ。
まぁ...作ってるの私じゃないけど...。
料理担当はミルクとシープに任せてある、この二人、戦闘はからっきしだが、非戦闘員としてはかなり優秀なのだ、生産系のスキルから調合系のスキルまで幅広く所持している、家事全般も出来るので、料理以外でもイチゴの手伝いなんかをしてもらっていたりする。
その日の夕食の際にもたらされたシリュウによる吉報はとあるアイテムの発見だ。
2か月間探してようやくゲットしたアイテム、それが【家畜小屋(中)】と【倉庫(大)】だった、もしかしたら序盤のモンスターならサイズが小さいアイテムが手に入れられたのかもしれないが、兎から家畜小屋がドロップする確率はかなり低いらしく、いまだに出る気配はない。
その結果、この大草原エリアの中盤以降の敵を狩って貰いこの2つのアイテムを探して貰ったのだ、サイズは別に小さくてよかったが、大きくて困る事は今の所ない。
明日はそれらの設置をする、これでようやく私も遠くへ旅に出れるようになったのだ。新たな仲間探しの冒険、家畜小屋が稼働する以上、ミルク達に家事などもろもろを任せる訳にはいかない、効率よくするにはもう少し人員が必要なのだ、料理人、倉庫の整理などをしてくれる人、後は戦闘職、今の所前衛ばかりのパーティーなので、できれば後衛、魔法職や、遠距離攻撃が出来る、アーチャーなどの職業クラスを持つ人員が欲しい、後は敵の攻撃をメインで防ぐ前衛のタンク、私の役割がないと思うかもしれないが...一応...盗賊系のスキルを持っているので、探索などが得意だ。
まぁ...必要ないかもだけど...。




